【NASDAQ】レッドフィン、不動産取引のゲームチェンジャー
不動産取引のゲームチェンジャーと呼ばれているのが不動産サイト運営のレッドフィン【NASDAQ:RDFN】です。この会社の究極のゴールは「株の取引のように」と言えば大げさですが、家を売買しやすくすることだと思います。資産としての不動産の最大の弱点は流動性の低さ。ここに流動性を与えることが、レッドフィンの最大の付加価値だと思います。
流動性が構造変化を起こす
当たり前ですが、経済は取引の体系です。取引が活発になればもうかる人が出てきます。そして流動性が与えられたときに取引は活発になります。だから、流動性のない市場に流動性を与える企業というのは、構造変化を起こす企業として長期的な投資に耐えうる企業だと個人的に思っています。先に書いたマッチングアプリなんかも、恋愛市場をオフライン市場からオンライン市場にすることで流動性を与えた企業だと思います。
レッドフィンは日本で言うSUUMOのような不動産情報サイトですが、ブローカー(仲介)業務までカバーしています。事業展開エリアに人間のブローカー(仲介人)を抱えていて、売主はレッドフィンを使えばワンストップで物件を売却できるのです。これがライバルのジローと違うところです。
仲介業務を取り込むことによって、レッドフィンは仲介手数料を自ら決定することができます。レッドフィンは売主側が払う仲介手数料を売却価格の1.5%に設定していて、これは業界の伝統的な水準の半額。価格破壊と言えます。月間3000万人以上が訪れる不動産情報サイトに物件情報を掲載して売却時に1.5%払うだけでいいというのは、売主フレンドリーな会社ですね。2.5%払えば、うまくレコメンドしてくれ、成約しやすくなるそうです。
また、仲介業者に送客するのとちがい、例えば物件の内覧予約もレッドフィンのサイト内で完結します。自動で鍵が開くシステムなどの導入も進んでいて、ますます効率的になっているようです。
流動性の好循環
売主は物件の詳細なスペック情報を入力します。レッドフィンはスペックデータや過去の取引データをもとに不動産価格を推定してサイトに掲載します。AIによる推定だけではなく、人間のブローカーが価格を調整するためジローよりも推定価格が正確であるとも言われています。物件の詳細なスペック、正確な推定価格をインターネットで手軽に知ることができ、流動性の妨げとなる情報の非対称性が極限まで消え、それがさらに利用者を増やして流動性を供給するという好循環が生まれます。
レッドフィンによれば、レッドフィンのブローカーの稼ぎは、全ブローカーの中央値の2倍。また1年あたりの成約割合は平均の3倍だそうでうす。
2019年の売上高は7.8億ドルと前年同期から6割増。全米における不動産売却のシェアは0.93%まで上昇しました。とは言え、わずか0.93%。ブローカーを抱えているため展開地域も限られていて、まだまだ面取りは始まったばかりでしょう。
シティグループ証券の元副会長の藤田勉氏は月刊『資本市場』2019年9月号のコラム「フィンテックに続き注目される不動産テック」にて「不動産業界は中小企業が多く、かつデジタル化が遅れているので、長期的にテクノロジーやビジネスモデルの革新などによって、今後大きく成長する可能性が高い」と述べ、取引を効率化する企業の代表としてジローとレッドフィンを挙げています。
現金流出続きリスクは高い
気になるのは1株当たり純利益は赤字が続いていること。まだ事業としてブレイクしていません。2019年10月~12月までの四半期決算は9四半期連続で市場予想を上回りましたが、昨今のコロナウイルス騒動で、財務基盤の弱い同社は売り倒されています。2019年末時点の現預金残高は2億3000万ドルちょっと。2019年1年間に流出したお金は2億2000万ドルちょっと(フリーキャッシュフローの赤字)であることを考えると、やはり少し心配ですね。
時価総額は20億ドル、すなわち2000億円くらいなので、10倍くらいになる潜在力を秘めて入ると思いますが、やっぱりリスクは高いですね。
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