読書記録②「不連続の世界」

恩田 陸著
不連続の世界

この本は、一言で言えばトラベルミステリー、というジャンルに当てはまる。
主人公の周りで起こる不思議な出来事がオムニバス形式で語られる。
そのどれもが、どこかすっきりしない、ふんわりとした結末になっている。
ひとつひとつの話には派手さがまったくないのだが、それが逆にリアリティを生み出し、不思議な不気味さが漂っている。
唯一、最後の話だけ、きっちりと「オチ」がついている。
一見なんのつながりもない小話により、主人公に対するイメージができあがってしまうのだが、それをあっさり崩すのが最終章。
というより、イメージを作らせて壊すところまでが「狙い」で、読者はその術中にまんまとハマってしまうようにできている。
この「なるほど、騙された!」という感覚が気持ちいい作品だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?