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好みの問題かもしれないけれど
薬局で買い物をしているとき、店内の調剤薬局の前で、「もう、できた?(怒)」と声を荒げるお婆さんがいた。買い物カゴを乗せたカートを歩行の助けにしながら、待合スペースに入っていったが、まだ、薬の用意が出来ていないようだった。
何か理由があって余計に待たされている、とか怒りに変わる経緯があるのかもしれないし、もしもお耳が遠いのであれば自然と大きな声になるのかもしれない。だけど、とにかく「そんな言い方をしなくても.…..」という言い方だった。
そして、何はともあれ、当たり前のように発せられたタメ語が気になった。
自分がお客の立場であれ、相手が年下であれ、仕事上のやりとりや、相手が仕事上の立場である場合にタメ語を使うのが、私はあんまり好きじゃない。
とはいえ、ケースバイケースではあって、「わー、美味しそう。では、そちらをいただきます」とか、親しみを込めたり、打ち解けた証としてのタメ語&敬語ミックスはありと思うけれど。あとは、よほど親しい常連であるとか。
とかいいながら、一度、ふと差し込まれたタメ語にグッときた経験がある。
社会人1年目、姉と一緒に暮らす部屋を探していたときのこと。
東京都内の人気エリアを相場より低予算で探していた。予算を伝えた段階で、門前払いのところが多かったけれど、唯一とりあってくれた不動産屋があった。20代後半から30代前半と思われる担当の男性は、数ヶ月前まで、学生だった私にも敬語で話し、大人扱いをしてくれた。
その人はいくつもの物件を根気よく案内してくれ、休みの度に内見に通った。にもかかわらず、なかなかいい物件に出会えなかった。やはり、相場より低い予算で、女性2人で暮らすのに適した物件はなかなか見つけにくい。
ついに、候補がなくなって、あきらめざるをえなくなった。帰り道、駅のエスカレーターを登っていた時に携帯が鳴った。もう1件、条件に合うところが出てきた、と。
戻って、さっそく、見に行った。古さは気になったが、広さと間取りの使い勝手はよさそうだった。駅からのアクセスもいい。
そのときに、担当の彼が「ここにしたら?」と言った。初めてその人から私に向けて発せられたタメ語。
優しい兄が、妹に向かって諭すような口調だった。
そこで私は確信した。この人がそう言うなら、ここがベストなのだと。もう他には出てきそうもないのだと。
結果、その物件には、8年住んだ。その街がすっかり気に入って、2年間は別の街に住んだが、また戻って5年住んだのだった。
やっぱり、関係性が出来ていない間柄のタメ語って、うまく機能しないと思うんだよなあ。