「画像生成AI✕転移学習の最先端技術で次世代材料をデザイン」研究室紹介 Vol.3
名古屋大学大学院2年生の弟子丸君に研究についてインタビューをしました。
「次世代材料のデザインに向けて、材料特性とミクロ構造の関係性解明に挑みます」
<研究テーマ>
「材料デザインへ向けた画像生成AIを活用した擬似的な結晶組織の生成」
太陽電池の半導体デバイスに使用される材料としてSi(シリコン)が良く知られています。
現在、最も普及している太陽電池は「結晶Si」で、結晶Siは結晶粒一つから成る「単結晶Si」と、複数の結晶粒から成る「多結晶Si」の大きく二つに分類されます。私の研究では多結晶Siを対象とした研究をしています。
Siなど材料の特性や振る舞いは、結晶方位・粒界・弾性係数といった物理的情報(ミクロ構造)に大きく依存すると言われています。
またミクロ構造は、温度・圧力・ガス流量をはじめとした製造プロセスに依存します。
ミクロ構造と材料の特性の関係が明らかになることで、新たな機能や特性を持つ、次世代の材料のデザインへと繋げることが期待されます。
「画像生成AIを用いて多結晶Si組織を生成します」
研究の対象となる多結晶Siも結晶粒の分布や大きさによって示す特性が大きく異なります。
そこで、高い特性を示す多結晶Si組織がどういったものなのかを探索するために画像生成AIを活用して研究をしています。
研究ステップとして、[1.疑似的な多結晶Si組織の生成]⇒[2.解析・特性予測]を繰り返し行い「組織と特性の関連性の解明」と「理想的な多結晶組織デザイン」を目指します。
今は[1.疑似的な多結晶Si組織の生成]に取り組んでおり、AIが実際の多結晶Si組織を学習することで、ランダムな多結晶Si組織を生成することができるようになりました。
「アメリカ留学の経験が研究方針見直しのきっかけに」
私は大学院1年の時にイリノイ大学アーバナシャンペーン校へ留学をしました。
留学先では材料学に加えてコンピュータサイエンスや統計学を学び、課外活動では太陽電池で走行する「ソーラーカークラブ」へ参加して多くの知識習得を心掛けました。
留学経験を通して幅広い学問に触れることができ、研究方針を見直す良いきっかけとなりました。
今後の展望として、ランダムな多結晶Si組織の生成と生成組織の特性予測を繰り返し、私達が望む特性を示す多結晶組織をデザインしたいと考えています。
<研究実績>
2022年8月 APAC-Silicide 2022(Online)/「Young scientist award」表彰
2022年9月 応用物理学会(宮城)
2022年11月 Journal of Applied Physics(論文)