わーすた「Whats "standard"!?」アルバムレビュー
先週発売された上記作品の感想文です。
ベスト後の彼女達、最近の楽曲は非常に良曲が多い。
そして何より今作は自分の敬愛するバンド、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也の提供曲があり、そしてそれがリード曲ということである。
そして今作、バンドサウンドを中心とした作品という前情報、メンバーのツイート等を見ても過去作よりも手応えのある旨を語っていたので(個人の感想です)期待していた状態で視聴に至った。
以下、自分なりのレビュー。
M1. 清濁あわせていただくにゃー
(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆)
件の田淵智也提供曲。
新しいわーすたの代名詞になりそうなポップロックチューン。
「わーすた」という名前をこのアルバムのテーマでもある「Whats standard?」に掛ける詞がさらっと出てくる辺りも作詞家としてすごいよなあ。
自分がユニゾンファンということもあるけれど、詞曲ともに特に文句のつけどころなし。「わーすた×田淵智也といったらこうなるよね」という曲。
田淵がしっかりわーすたというグループを理解し、詞に落とし込み安定の田淵節のメロで仕上げ、アレンジャーの岸田勇気が味付けした楽曲。
ただ、この楽曲自体はめちゃくちゃ良いのを前提として、自分が双方のファンだからこそ、この座組ならもっととんでもない楽曲ができたのではないかという印象も受けた。
ここからは想像と妄想だが、恐らく運営側からの発注が「パブリックなイメージの田淵智也(ユニゾン)ぽい曲」かつ「バンドサウンド基調、わーすたの自己紹介になるような曲」だったのではないか、という予想。その期待に見事に応え、合致した楽曲を作り上げることができたのだろう。
なので、自分の中では「この路線なら100点」「ただ、双方の強みを知っているからこそ良い意味で想定内の楽曲」という感想。
ただ田淵提供一発目の楽曲、ということでこの方向性になるのは重々承知なので、もし次があるなら、もっとシリアス寄りになってもいいのでわーすたのツインボーカルをこれでもかと活かした楽曲に巡り合ってほしい。
完全プロデュースとまでは言わないので、次回のアルバムにもう一曲田淵曲が欲しい、それでファンをもっと驚かせて欲しい、そんな事を感じた。
M2.萌ってかエモ
(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆)
先日、別のわーすたについての記事で批判的に書いた「わんだふるYEAR」での収穫を挙げるなら、名曲キラホロの誕生ともう一つ、みきとPとのコネクション構築だったと思う。そのみきとP提供曲である。
「PLATONIC GIRL」のような強めのロックサウンド基調に「デデスパポン!」のような良い意味でのおちゃらけ要素を取り入れたロックチューン。こういうの意外と初めてだったかもね。Buono!とかが歌っててもすごいしっくりきそうなイメージ。
歌詞とメロの食い合わせが絶妙。歌ってて気持ちいいだろなあ。個人的に、初聴では他の曲のがインパクト強いけど何度も聞くとかなり好き度が上方修正されるタイプの曲。
ライブでコールレスポンスやってね、と言わんばかりの箇所も普段にあり、ライブで観客と盛り上がれるという点に比重を置いている曲を手に入れた感。一方で合いの手が可能な箇所以外の余白はほぼなく、この曲ではMIXとか謎コール絶対やんなよ、という意図を感じるのは考えすぎだろうか。
しかしみきとPのわーすた提供曲の振れ幅やばいね。基本自分の中での外れがほぼない安定したわーすたクリエイターの1人。
M3.TOXICATS
(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆)
未だ絶賛世間を風靡中のLiSA「紅蓮華」の作曲家、わーすたで言うと「四季ドロップス」カヨコ(草野華代子)曲。
個人的にこのアルバム最推し曲。スイングに跳ねるピアノサウンドが際立つジャズ調の楽曲。LiSAだったり、水樹奈々のアルバムにしれっと入ってそうなタイプの曲。
自分はこの曲こそ「わーすたの新境地」だと思った。わんだふるYEAR時にそこそこ賛否分かれる問題になった「アーティスト路線への移行」の是非についてこれ以上無い解だと個人的に感じた。
その解を言語化すると、『あくまで「わーすた」のままで、今までの路線の単なる踏襲ではない新たなステージに立ったクオリティの高い楽曲を出して行く』という事である。
「格好よさげなアーティスト風」ではなく、わーすたのアイコンである「猫」を壮大な振りに使いつつ、「猫」の持つ意味を単なる「可愛い」「ツンデレ」を始めとしたアイドル然としたものだけではなく、そこに「猫がもつ官能的なイメージ」を決して下品にならず乗っけているバランス感覚。メンバーが20歳越えた今だからこそ説得力を持たせている感もある。
そしてまず単純に楽曲のメロ自体が良い。それだけでも満点という位に。
わーすたのツインボーカルを最大限に活かしつつ、サビのメロのリフレインが非常に癖になるのと、ジャズとロックサウンドのアレンジがめちゃくちゃ良く噛み合っている。わーすたが今まで歩んできたバックボーンを踏まえ、この曲に至ったことに最大限の賛辞。3分半足らずでコンパクトに終わるのも潔くて素晴らしい。
次のアルバムクリエイター陣、岸田勇気、田淵智也、カヨコ、みきとP、鈴木まなかで固めてくれないかなあ。ギャラと製作費えぐそうだけど。あと個人的にこの曲を猫耳でライブ披露してくれるのはすごいグッとくる
(ただの性癖)。
M4.Never Ending The World
(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆)
わーすた・鈴木まなか共作詞。作曲は鈴木まなかと宮澤樹生氏(この方初見な気がする)が手掛ける良メロバラード。ライブの最後でやりそうな曲。個人的にはこのアルバムで一番大衆受けが良い楽曲だとも思った。
この手の曲は逆に聴きすぎることにより飽きが早いという欠点もあるが、
長くなりすぎす4分で潔く終わることでそのデメリットを軽減していると思う。
この曲の強みはわーすた自身が作詞に関わったということだと思う。普遍的な歌詞ではあるが、誠実な内容でもありメンバー自身の本意だからこそファンが素直に受け入れ、心に響く内容になっていると感じた。
この曲のサビの歌詞の「世界が変わったって 何度泣いたって 心の標準は変えないでいて」、この歌詞をメンバー5人が歌うことにこそ意味が付加される。
TOXICATSでも触れたが、この曲についても「これからのわーすた」という解を示していると感じた。1曲目の冒頭で「”スタンダード”は何?」という問いかけにこの曲で「心の標準は変えない」という詞で応えている。そして、この曲のタイトルが「Never Ending The World」。
「わーすた」であるその心、アイデンティティは変えることなく、「変わり続けていくが終わらない世界」へ進んでいく、という非常に誠実かつ前向きなメッセージだと思う。
また、新型コロナウィルスで変容する世界、そこから生まれる閉塞感に対しても決してネガティヴにならず進んでいくんだ、というサブ的なミーニングにも含む歌詞だと感じた。正直このアルバムここで大団円迎えちゃってるんじゃね、って思いつつの次曲へ。
M5.ハロー to the world
(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆)
信頼と実績の岸田勇気楽曲。作詞は園田健太郎氏。ここに来ての王道キャッチーポップロック。ラストというよりも、前曲でエンドロールを一旦締めてからのエピローグ的な読後感。微妙にアプローチは違うが2ndアルバム収録の「約束だから」に通ずるものを感じる。
歌詞の意味合いは全体的に前曲に通ずる未来への決意。前曲がそれこそ「清濁併せた過去~現在~未来」だとするとこの曲はポジティブに「未来」に全振りした曲だと感じた。
個人的にこの詞の中で刺さったのが『「はい」だけでいいんですか 「いいえ」もきっと大事なひとかけら』。
散々2年前の「わんだふるYEAR(に携わったクリエイター、運営)」を腐してFCを辞め、近々の楽曲の良さに惹かれ、改めて再度「わーすた」を好きになり直した自分からすると「なんかごめん」と思ってしまった。
舟にはまだ乗ることはせず、その行方を眺めているスタイルを続けているけど、まだ彼女達の作品に触れ続けていいでしょうか。
総合評価
(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆)
間違いなく「わーすた」の作品で最高傑作だと感じた。
個人的にバンドサウンドというジャンルが自分好みだったり、ユニゾン田淵という自分がこの世で一番好きなクリエイターが関わっているという贔屓目もあるのだが。
「アイドルのアルバム」としては1stフル、2ndを推す方が多そうだが、自分がわーすたの作品を誰かに勧めるならこの作品を選ぶだろう。
従来の「わーすたらしさ」とはまた違うアプローチなのでファン同士での好みの違いはあると思うが、賛否という形にはあまり分かれないんじゃなかろうか。このアルバム自体のクオリティは確かだと思う。
前ミニアルバムのような「一つの寄り道、ただ新しいわーすた(と自分は思っている)」と捉えるか「これからの進化したわーすた」と捉えるかの違いだと思う。自分は後者。
ただ、前置きとして「遮二無二生きる!」からの新たなステージ、ベストを発売して一旦今までの活動を振り返り新曲「グレープフルーツムーン」で更に新たな世界観を提示し、楽曲のクオリティを急激に上げてからのこの本作なので、わーすたにとっても非常に意義のある作品になったのではないだろうか。
ただ、100点満点にすると自分の中では85~90点くらいの心持ち。「もっとわーすたは行ける」という意味合いで。個人的にバンドサウンドを謳っているアルバムなのだから、「PLATONIC GIRL」のようなシリアス要素も取り入れたロック曲もあっても良かったんじゃないかなあ、思ったりもした。特に、この作品ではまだ「三品瑠香」という逸材のパフォーマンスを活かしきれていないとも感じた。
意味合いが違うのは承知だが、ラスト2曲の役割が微妙に被っていたりメロとしてもあくまでポップス寄りに感じたので、今回のコンセプトミニアルバムという体であれば、もっとロックに振っても良かったのではないかと。もし収録が5曲縛りという枠で決まっていたとしたらバランスを取る事が難しいのかも知れないが。
次に出るであろうアルバムが今回のようなバンドサウンドの追求という形を取るのかは分からないが(既発曲との兼ね合いもあるし)、このアルバム含めた既存曲を振り返る限り個人的には「新しいわーすた」としての最高傑作になると思う。(なって欲しい)
ライブについても「わんだふるこれくしょん」を最後に現場に行くのを辞めてしまったが、機会があれば次のライブ、このアルバムを機に久しぶりに行ってみようかなあと思った。ミニアルバムながらそれだけの熱量がある作品と感じた。
もしこのレビューを見てくれた方で、わーすたに触れたことがない方、また自分のように一度わーすたから距離を空けた方、もし少しでも琴線に触れるところがあったら、この作品「Whats "standard"!?」是非チェックしてみてはいかがだろうか。
次に彼女たちが見せてくれる世界、期待しかしないで待ってます。
それでは、また次の記事で。
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