正直いうと、やはり気になる
シュタイナー学校の親子教室が始まってしばらく経った頃、手仕事の時間(同じ部屋で子供達は自由遊び、親と先生は手仕事として縫い物やクラフトをします)に、あるお母さんが先生に質問しました。
「シュタイナー学校の卒業生の大学進学率はどれくらいですか?」
私は(きっと他のお母さんたちも)「おおお!なんてストレートな質問!」と思ったと思います。シュタイナー教育といえば、お勉強よりも芸術、受験より型にはまらない人生、みたいなイメージ(あくまでイメージです)があったりするので、2歳児の教室で大学進学率の話って、なんとなく「ないだろうな」と思っていたことです。でもそう言われたら私も正直気にはなります。だって大事な子供の将来に関わることですから。
ということで、皆あまり気にならないふりをしながらも、心はそわそわ、耳はダンボになって先生の返事を待っていました。(他の人がどうだったのか、本当のところは分かりませんが、きっと耳がダンボになっていたであろうと勝手に想像しています。)
先生の回答は、こうでした。
「そうね、正確な数は分からないわ、卒業して何年も経ってから大学に行く人もいるしね、高校出てすぐの進学率より、生涯の進学率で考えた方が正確だろうけど、そういう調査結果はまだないのよね。でも、高校からの進学率は平均的なものだと聞いていますよ。」
あ、なんか、普通。
そうだよね、そもそもカナダでは何歳でも行きたい時に大学に行ったりする人も多いので、日本の感覚で高校からそのまま進学するのが王道という訳ではないですし、数値にして比較するのは難しいかもしれません。
でも、ここで終わらないのがシュタイナーの先生の素敵なところ。ブランカ先生、そして違う機会の違う話の流れではありましたが、さゆり先生も同じようなことを仰いました。
「でもね、私たち教師の最終ゴールはそこではないんです。(きっぱり!)
大学進学はもちろん大事な人生の選択ですが、それは人生でたくさんある中の一つの要素です。
私たちのゴールは「幸せになる能力のある人間を育てる」ことです。自分で目標を見つけ、実現のために何をすれば良いか考え、実行し、困難や挫折にも立ち向かえる、そういう力を身につけてもらうための教育なんです。それが医者でも農家でもなんでもいいのよ、自分の夢を見つけ自分の力で叶えられたら、その人は幸せと言えるでしょう?」
よく考えたら、当たり前のことで、すごいことを言っている訳ではないですよね、人生の基本中の基本ですよね。でもとても素敵なお話でした、背筋がピンと伸びました。当たり前のことってなぜか簡単に見落とされがち、軽視されがちです。そこをぶれない毅然とした態度で見据えてくれている先生方の覚悟と深い愛情を受け取り、私たち親は、学校教育の期間を超えそれ以降のその子の長い人生を見据えた「人間育て」をしているのだという当たり前のことを気付かされたのです。
どんどん世界は変わっていきます。すごい速さで。そして、コロナの影響もありますますこの先がどうなるか分からなくなってきました。10年先、20年先、、、確実に今の子供たちは親の想像の全く及ばない時代を生きるのです。どんな時代になったとしてもに幸せに生きることができるように、今私たちができることは何なのかを意識し始めた瞬間でした。