映画「ラストマイル」感想 全ての働く日本人への問い-何を望んで生きていくのか-
※この記事は映画「ラストマイル」のネタバレを含みます。
すべての働く日本人に向けた映画
この世界で何を望んで生きていくのかという話
見応え充分
一つの引っかかりも感じない演技と配役。
その中でも特に光っていたのは、爆発物が仕掛けられた箱を開けてしまった時の舟渡のシーン。
自分自身と孔を落ち着かせようと最初は冷静に振る舞うけれど、手の震えは止まらなくて、警察が来た瞬間にパニックで震えと涙が溢れ出る流れが実にリアル。その後にソファで安堵する2人のシーンも含めて最高。本当に爆発物仕掛けて撮ったのでは?と思うほどの満島ひかりの演技力。
奔走する働くサラリーマンの阿部サダヲも良かったなあ。彼は現場で働く者たちのプライドも守った仕事のできる男、ですよ。電話のシーンはシリアスな展開が続く映画の中で唯一クスリと笑えた。
配送業者の親子やシングルマザーの母と娘たちの、言動は衝突していても深いところで繋がっている家族の描写も素敵。
息子が前職で作っていた洗濯機が役に立つという伏線回収にも震える…
こういう心温まる仕掛けが大好きです!
『アンナチュラル』『MIU404』ファンは歓喜
UDIラボに機動捜査隊、あの大好きな世界線が繋がりあっている!!最高!
というツイートを見たので慌てて復習してから観に行ったけど、確かに胸アツでした。
ドラマを観ていない人も「なんかそれぞれの部隊が豪華キャストやな」くらいの感覚で充分楽しめるかと!
全てを解決させては終わらせないところが野木脚本の良さ。
意識を取り戻さない山﨑、センター長として任命された孔、あの日の山﨑と同じ景色を見た五十嵐。
それぞれが何を思ってどういう選択していくのかは、この映画を観た我々が頭の中で描いていくしかない。
最近読んだ朝井リョウの「スター」という小説のなかに、好きな映画の理由を「答えではなく問いをくれるから」と登場人物が話す場面がある。この映画はまさにそれだと感じた。
What do you want?
強きものが弱きものを、その者がさらに弱い立場にいる者を(脅して)使い、成果だけが評価されていく世の中。時には"やめる"ことを選択しなければ心が持たないような社会。
「What do you want?」
その世界で私は何を望んで何を選択していくのか。そんな問いをくれる映画でした。