「no」をいうことが自分も相手も守る
人にものを頼むのが苦手である。だって、断られるのがいやだから。
断られたら、その理由がなんであれ、もう本当に落ち込んでしまうはずだ。人間性を全否定されたくらいに。悲しくて、みじめで、もう生きていられい気分になるはずだ。きっと。
なので、ひとにものを頼んだりしない。怖いから。
一方で、私は人から頼まれたことを絶対に断らない。「絶対に」というのが言い過ぎではないくらいに、ほぼ受け入れる。誰かに頼りにされたということを純粋に喜んで「やります!」と返事をする。対価が安かろうと、大きな苦労が予想されようと、なんでも引き受ける。だって、断るのは本当にいやだから。
人からの依頼を断るというのは、その人が私を頼ってくれた想いを踏み躙ることだ。相手はさぞかし傷つくことだろう。そして、私を嫌ったり、恨んだりすることだろう。ああ、なんと悲しくて惨めな…。
なので人から頼まれたことはみんなやる。嫌われたらいやだから。
この状況が誰も幸せにしていない、ということに気づくのにずいぶん時間がかかった。運んでねと頼まれたひとりで背負えるはずのない荷物を前にして、ただ座り込む、そんな図だ。荷物を運んでほしいと願う人も私自身もただ困るばかり。
あほらし。
両方が幸せになる最短の道は、「できません」「やりたくありません」がいえることだ。「no」といわれることを自分が恐れるあまりに、相手にもそれが言えない。
「no」と言ってみる。
それが自分を守り、他を幸せにする第一歩なのだと気付いたから。