偽りから 私
「好きだよ」そういって彼は私に笑いかけてくれる。彼の笑顔が好きだ、その優しい声も好き。私と彼が付き合い始めたのは1月前、私から告白した。ずっと好きだったけど、言えなかった。クラスメイトだけど殆ど接点はなかったし彼は私とのことなんて覚えていないだろうし。学校で姿が見れるだけで、声が聞けるだけでいいとおもっていた。
あの日、友達との恋バナが花が咲いたとき話を振られた私は素直に彼の話をしたらトントン拍子で告白の流れになってしまった。呼び出しの場所に彼が待っていて勢いのままに告白した、正直その時のことはあまり覚えていない緊張で真っ白になった頭と笑顔の彼、「いいよ」という彼の声、断片的な記憶しかない。本当にもったいないせっかくの告白だったのに…。
付き合ってから特に距離が縮まることはなかったが、彼はずっと優しかった。それで満足だ、本当の彼を私は知っている。ずっと昔から。幼稚園にいじめっ子から助けてくれた日からずっとずっと大好き。彼の目に入ることはなかったけど大好き。お金を貯めては彼を知る努力をした、彼の使っていたものとそっくりな形の盗聴器のペン、彼の家にあるお土産のカメラ、日常のささいな会話。彼が私のことをどうとも思ってないことも知ってた、彼が好きな人がいないことも、どこか恋愛に対して消極的なことも。
でも、これからだよ。いまから逃してなんてあげないどろどろに溶かして私に依存して欲しい。バレないように、バレないようにゆっくりと。
全ての初めてを私としよう。
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