飼い犬は多ければ多いほど良いと言う話、ソシオニクスから見る幸せの形④、SLI(ISTp)
はじめに
ソシオニクスから見る幸せの形のシリーズも4回目となったが、そろそろ感覚型のタイプについても触れてみたいと思う。
しかし、直観型である私から見て、感覚型の人の幸せというものは、その詳細が認識し難いという問題がある。
その感覚型の人々の中で、私から見て特に存在感を放っているのがSLI(ISTp)と呼ばれる人々である。
SLI(ISTp)は、ソシオニクスで「職人」とも呼ばれる、そんな彼らの幸せについて今回は考えてみたい。
⒈SLI(ISTp)の特徴
まずはSLI(ISTp)のソシオニクスにおける情報要素を簡単に並べて説明しよう。
Si(内向的感覚):身体感覚を司る。SLI(ISTp)においては最も支配的な機能で、彼らの気分とパフォーマンスはその健康状態に左右される。また、彼らは基本的に手先が器用である。
Se(外向的感覚):外的世界との関わり方に関係する。SLI(ISTp)にとっては無視される機能であり、物事の詳細情報が入ってくるものの、自ら外に対して表現することは少ない。
Ti(内向的思考):内的な論理性を示す。SLI(ISTp)は理論や抽象的な情報は世間一般の標準的な方法で処理する。基本的に、そのような抽象概念についての関心は薄い。
Te(外向的思考):外的世界の論理性に対する姿勢を指す。SLI(ISTp)はこの機能を創造的に使用する。そのため、世の中の仕組みや物事の順序には敏感で、それらの実用的な問題に合理的かつ応用的に対応する。
Fi(内向的感情):内面での感情的機能を言う。SLI(ISTp)はこの機能の使用を苦手とする。結果、人間関係や人の内面への理解に疎くなる。また、人を理想化してシンプルに捉える傾向がある。
Fe(外向的感情):外的世界との倫理的関係に関わる。SLI(ISTp)は広いパーソナルスペースを必要としていて、人間関係に問題を感じると人と距離を取ることで対応しようとする。また、フォーマルなコミュニケーション手段を尊重する傾向がある。
Ni(内向的直観):内的世界の整合性と関わる。SLI(ISTp)はこの領域の使用と理解をあえて避けようとする傾向がある。
Ne(外向的直観):外的世界の調和を示す。SLI(ISTp)はこの機能の使用が不得手であるが、内心でこの機能に憧れがあり、関連情報に興味を示す。
少しまとめてみると、SLI(ISTp)は身体感覚と論理的理解に優れ、外界との直接的かつシンプルな接し方を好む。
強く複雑な感情や関係への対応を苦手としており、実は面白いことが好きである。
基本的に合理的で、かつ、素直で実直な性格タイプと言える。
⒉SLI(ISTp)の幸せの形
SLI(ISTp)にとっての幸福を考えると、まずSi(内向的感覚)が支配的となる。
彼らの生活や仕事における感覚的な快適さは彼らの幸福感に直結する。
現代の先進国においては、貧富の格差の問題はあったとしても、物質的な豊かさを享受できることが多いため、SLI(ISTp)は比較的幸福感を得やすいタイプと言える。
また、Fi(内向的感情)の弱さゆえに、人間関係の問題が大きなストレスとなる。
それらの問題については、SLI(ISTp)は人を遠ざけることで対応する傾向があるが、そのストレスの背景には人間存在についての理想化があるので、心の奥底では他人との良好な関係を求めている。
この点について、SLI(ISTp)が問題を簡単に解決する方法は存在しないので、長い時間をかけて人間と向き合い精神を成熟させるとともに、コミュニケーションスキルを育てることが幸福への近道となる。
情報との接し方については、SLI(ISTp)は内面世界を意識することは少ないが、自分の外側の世界には興味を持っている。
ただし、彼らはそれら外的情報への接し方に疎いので、それら情報を合理的かつ簡潔にまとめられた形で提供されることを好む。
そのような、密度の高い情報は彼らの脳を緩やかに刺激して、彼らの幸福感を高める。
まとめると、日々快適な生活を送りつつ、人間関係のトラブルに悩まされることなく親しい人々に囲まれて、適度に興味深い情報や真理に触れつつ、好きな仕事に取り組めれば、問題なくSLI(ISTp)の幸福感は保証される。
この上で、将来への不安がなくなれば、完璧である。
⒊双対関係のススメ
ソシオニクスは人間関係についての理論であるが、そこで最も相性の良い関係性を双対関係と言う。
SLI(ISTp)と双対関係となるのはIEE(ENFp)であるが、実際、彼らは色々な意味で相性が良い。
SLI(ISTp)は人間関係に問題が生じることがあり、それが幸福感の妨げになることもあるが、IEE(ENFp)は人間関係についてはスペシャリストである。
IEE(ENFp)は距離感の天才なので、SLI(ISTp)の望むパーソナルスペースの境界線を犯すことは少ない。
さらに、SLI(ISTp)のシンプルかつストイックな感情表現は、他の性格タイプにはその背景心理を大きく誤解されることもあるが、IEE(ENFp)はその対人洞察力によりさほど問題なく読み取ることができ、またIEE(ENFp)は本能的に相手の期待に適応するため、つまり、SLI(ISTp)はIEE(ENFp)とのコミュニケーションにおいては無理をする必要がなくなる。
この場合において、たとえば、話題がSLI(ISTp)の興味を外れれば自然と方向性を変えて無理なく会話を持続したり、お互いの地雷を掠めそうになったらさりげなく回避を試みたり、他の参加者がいればお互いの興味が結びつくように会話を調整しつつSLI(ISTp)のクッションになったり、基本的にIEE(ENFp)はSLI(ISTp)が喜ぶように展開を演出するなど、両者の間におけるコミュニケーション上の問題はIEE(ENFp)が自動的に解決するため、そもそも問題として浮上しない。
このように、IEE(ENFp)がコミュニケーションの調整を担当するのに対して、SLI(ISTp)は身の回りの実務の実装を行う。
IEE(ENFp)の実務能力は基本的に低く、そもそもがダラシのない性格タイプである。
そして、IEE(ENFp)は自分を楽させてくれる相手に特に弱いのと同時に、SLI(ISTp)は実はなかなかに世話好きである。
結果、SLI(ISTp)が自然とIEE(ENFp)の身の回りを処理するだけで、IEE(ENFp)はSLI(ISTp)に懐く。
また、両者の第一機能は自然と相手の急所に突き刺さるので、お互いの距離が近くなるとお互いの存在が双方の脳髄に刺激を与える。
特に、SLI(ISTp)は普段ドーパミンのような脳内麻薬があまり出ない体質であるが、IEE(ENFp)のNe(外向的直観)は彼らにそれら脳内ホルモンの分泌を促す。
つまり、IEE(ENFp)はSLI(ISTp)にとって緩やかな麻薬のような存在となる。
⒋IEE(ENFp)の手懐け方
このように、SLI(ISTp)にとってIEE(ENFp)は実に都合の良い相手となる。
そして、IEE(ENFp)の方もまんざらではない、どころか、IEE(ENFp)の取り止めのない会話に心から付き合ってくれる相手は彼らとしても貴重なため、両者はWIN-WINの関係になり得る。
SLI(ISTp)の幸福を考えるなら、できれば手の届く範囲にIEE(ENFp)を複数人飼っておきたいところである。
そこで、SLI(ISTp)の視点からIEE(ENFp)の手懐け方を考えてみる。
まず、SLI(ISTp)としてはIEE(ENFp)と出会わなければ話にならない。
SLI(ISTp)としてはハードルが高いかもしれないが、何らかのイベントやコンパなど、複数人が物理空間を共有するような場を探して回れば、IEE(ENFp)と出会うこと自体はそう難しくはないだろう。
しかし、IEE(ENFp)は独特なオーラを放っていることが多いが、SLI(ISTp)が相手をIEE(ENFp)だと判別する、そのことがもしかしたらSLI(ISTp)にとっては最大の難関になるかもしれない。
ここでは、首尾よくIEE(ENFp)を発見したとして話をすすめるが、実のところ、両者が場を共有しているのであれば、IEE(ENFp)と仲良くなる上でSLI(ISTp)としては特別しなければいけないことはない。
部屋の隅からでもどこでも、場所や位置取りは問わないが、じっとIEE(ENFp)を観察しているだけでよい。
じっと見つめていたら相手に失礼だとか、そういう配慮はIEE(ENFp)相手には不要である。
IEE(ENFp)は基本的に常に場の全員の顔色と空気を読んでいる。
SLI(ISTp)が無遠慮に見つめていれば、IEE(ENFp)が気付かないということはない。
もしIEE(ENFp)が気付かなかったとしたら、それは彼らが他の何かに集中して没頭してるか、あるいは病んでいるかのどちらかである。
表面的には気にしていないフリをしていても、内心では「見てる!メッチャ見てる!」とIEE(ENFp)は確実に意識する。
ここでSLI(ISTp)が変に遠慮した姿勢を見せると、IEE(ENFp)の方も「あれ?これは話しかけてはダメなやつかも?」と無駄に気を効かせるので、素直に興味を示すのが正解である。
IEE(ENFp)の行動は、彼らの心理状態に大きく左右される。
IEE(ENFp)の調子が悪ければ「何あの人、怖い」となるかもしれないが、調子が良ければ「何あの人、面白そう!」となる。
そして、IEE(ENFp)をそのまま放置しておけば、手が空いた時にでもIEE(ENFp)の方から近づいてくる。
なお、IEE(ENFp)は外向的な人間よりも、内向的な人間との付き合いを好む傾向がある。
IEE(ENFp)は、コミュニケーション相手の期待を読んでそれに適応する傾向があるが、外向的な人間は概して他人に興味があり、結果的に適応のハードルが引き上げられて、長時間付き合いをするとIEE(ENFp)はたとえ楽しかったとしても、確かに疲弊する。
その点、内向的な人間を相手とした時は、逆にIEE(ENFp)はエネルギーを得るので、つまるところ彼らとしては楽なのである。
そして、SLI(ISTp)はそのような場において、積極的に他の人々と距離を縮めることはしないだろうから、その時点で内向的であることはバレバレであり、熱い視線を送っていたこともあって、IEE(ENFp)が近寄ってくる条件を満たすことになる。
そして、会話が始まった後は、細かいことはIEE(ENFp)に任せておけばよい。
SLI(ISTp)としては、IEE(ENFp)の話に対して素直に意見することと、疑問を思ったらそれも素直に発言するなど、自分の見解を伝えるだけでよい。
それだけで、IEE(ENFp)の好感度は上昇する。
その後は成り行きに任せておいても問題は生じにくいが、SLI(ISTp)としては、IEE(ENFp)との付き合いにおいては、関係性の維持だけは注意しておいた方がよい。
IEE(ENFp)は何事にも無軌道な面がある上、相手の思惑を勝手に憶測するので、SLI(ISTp)から何もしていないでいるとSLI(ISTp)は何も期待していないと思い込んで、IEE(ENFp)はどこかへ消えてしまい関係性が消滅する可能性がある。
そこで、定期的にIEE(ENFp)の鼻先にニンジンをぶら下げる必要が生じるが、これがIEE(ENFp)を飼い慣らす上での最低限のコストとなる。
なお、特定のIEE(ENFp)に対して、別のIEE(ENFp)との関係性をチラつかせることは、彼らにとって刺激となる。
食い付きもよいので、ニンジンとしての機能は上々である。
おわりに
SLI(ISTp)の幸福についての記事のはずが、IEE(ENFp)の飼い方の話になってしまったわけだが、両者は相関があるので読者の方にはあまり気にしないでいただきたい。
同じようなスタイルで記事を書き続けていると、読んでいる方だけでなく書いている方も飽きてくるので、たまにはこういう記事があってもよいのだろう。
いずれにせよ、SLI(ISTp)は幸せとはそれほど遠いところにいるわけではないと思うので、あまり心配しなくてもよさそうである、と感想を述べて終わりとさせていただく。