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「日本語教育能力検定試験合格」は必要?
私は昨年「日本語教育能力検定試験」に合格した。受験した理由は自分が応募したい案件があり、そのために資格が必要だったから。だから私にとっては必要なものだったのだが、日本語を教える仕事をしたいだけなら必ずしも必要ではない。しかも去年と今年ではもう日本語講師の資格制度の状況が違っているので、もうすでに「日本語教育能力検定試験に合格した」というだけでは、'qualified Japanese teacher' (有資格の日本語講師) を名乗ることは制度的にはできないのかもしれない。
ここでは、私という一個人が、「日本語教育能力検定試験を合格して良かったと思うか」という視点で思うことを書いてみようと思う。
0.資格はあってよかった? or なくてもよかった?
まず合格して良かったか、必要なかったかと言えば、私は受験して、合格して、良かったと思う。
1.日本語教育能力検定試験の勉強が日本語講師として日本語を教えるための学びになる。
一つ目の理由は、
日本語教育能力検定試験の勉強が、日本語教育や教育学に関する学びになり、日本語について、日本語を教えることについて考えるきっかけになったからだ。
大学で日本語専攻でもなく教育学を学んだわけでもないので、こういったことに関して学んでみるということ自体が新しく、とても興味深かった。日本語教育の成り立ち、人が言語を習得するメカニズム、言語教育に関する様々なメソッドについて等々、こういったことはすぐにレッスンに落とし込めるようなことではないけれど、言語を教える者として、知っておく必要があると思った。言語だけでなく音楽や他の分野でも、何かものを教えるために有用だと思うし、教えるだけでなく言語を習得する上でも知っておくと役に立つ。
日本語の語彙や文法、使い方、音声学的な部分に関して、学習者にとってどんなことが難しいのか、日本語の難しさや特徴、教える上での注意等々に関しても、テスト問題に正しく答えられるように勉強を進めていく中で、自然と学ぶことができて良かったと思う。
2.「日本語教育能力検定試験合格」とプロフィールに書ける。
二つ目は、
「日本語教育能力検定試験合格」とプロフィールに書けること。
日本語教育能力検定試験にほ実際に教える試験はないから、この資格があってもきちんと教えられることの証明にはならない。でも、日本語の先生を探している学習者の方からすれば、日本語教育に関する資格の種類やそれぞれの違いは分からない。何か資格がある先生であれば、この人は日本語教育について専門的に学んだことがあるんだろうといった、信頼や安心の材料にはなると思う。実際、トライアルレッスンである生徒さんに「日本語教育の勉強やトレーニングはしましたか?」と聞かれ、「日本語教育能力検定試験に合格しました。」と答えたら、生徒さんはそれだけで少し安心されたような表情をされたことがあった。
試験に合格しなくても、そのために勉強をしていればその人の知識にはなっている。しかしその知識の量は他人からは見えない。合格していれば、合格と書くことができ、その試験について知らない人からもある程度学んだことがあり、知識がある人と見なしてもらえる。生徒を獲得し、信用を置いてもらうためには「資格あり」はやはり有利だと思う。
3.自分の意識やモチベーションを保つための良いプレッシャーになる。
三つ目は、
自分の意識やモチベーションを保つために、あってよかったと思う。
プロフィールに「日本語教育能力検定試験合格」と書いてあるのに、いい加減なレッスンはできない。二つ目の理由に書いたように、実際はこの試験を合格していても教えられることの証明にはならないけれど、生徒さんは試験について知らないのだから、資格があれば教えるのが上手いと思うだろう。教えるのが上手くなるには、数をこなしたり教えるための勉強をしたり、自分で工夫したりしながら時間がかかるものだが、少なくとも、「今日の自分としてできる限りのことをしよう」、今日できる100%のことをして満足していただけなかったら仕方ないけれど、「毎日毎回最善を尽くそう」と、気持ちを高く持って仕事ができたと思う。もちろん、こんなことはどんな仕事でも当たり前のことなのだけれど、「日本語教育能力検定試験合格」が日本語講師としての私にとっていい意味でのプレッシャーになり、いつも向上心を持ってがんばれたと思う。
4.まとめ
まとめとしては、
私は、「日本語教育能力検定試験」を受験して、合格して、本当に良かったと思う。学ぶきっかけになり、生徒さんを獲得し関係性を築く助けになり、気持ちを高く保つよいプレッシャーになった。
一年半この仕事を続けられたのは、この試験のお陰だったと思う。
日本語を教えることを仕事にしたいけれど、何から始めればいいか分からない人、専門的な教育を受けた経験や知識がなく自信が持てない人、何か生徒さんから信じてもらえる肩書のようなものが欲しい人などは、
まず取っ掛かりとして「日本語教育能力検定試験」等の資格試験を目指すのも一つのいい方法ではないかと思う。
そして昨日の試験を受けた方々、本当におつかれさまでした。
結果が出るまで結構長いと思いますが、(去年はクリスマスイヴでした。)
素敵なクリスマスになりますようにお祈りしています!