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【カルデア猫食堂】素敵な素敵なパンケーキ
カルデアの食堂はスタッフもたくさん。
赤い弓兵は名チーフ。的確な指示で注文を捌く。
姉の女神はマイペース。猫と戯れにやってくる。
狂気の猫は時々スカウト。はてさて今日の新人は?
「ほうほう、細い体でよく食べるのだな」
タマモキャットは感心して通りすがりに声をかける。そこには料理を山盛りにして次々と平らげる少女がいた。美味しそうにたくさん食べる姿は料理人にとって何より嬉しいものだ。
「え、えへへ、食べるの大好きなので……。カルデアいいですね。美味しいものたくさん……たくさん……食べてしまって、あ、ああああ! すみませんすみません! ろくに働きもしないゴッホがこんなにたくさん食べて! 今のはそう言う意味の注意喚起! 警告! ジャパニーズ仕草ですね⁉︎」
だがゴッホだった。
「う、うう、うぇー……」
べそべそと泣きながら、それでもゴッホは食べるのをやめない。
「うーむ、立派な食いしん坊とみた。だが、どうせなら先ほどのように笑顔満点で食べるが良い。ほれ、鼻をかめ」
タマモキャットが差し出したレースのハンカチにブシーッと遠慮なく鼻水を出し、ゴッホは食事を再開する。
「ウフフ……無駄飯食らいの穀潰しのゴッホ! クビになってここの美味しいご飯も食べおさめですね! エヘヘヘヘへ!」
「いや、そういうどうかしちゃった笑顔ではなく。ふーむ、では仕事をやろう! 遠慮なく食べられるようにな! しばし待つが良い!」
ランチタイムが終わり、カフェタイムまで暫しの閑散。ゴッホはタマモキャットに案内されて食堂を歩く。
「エヘヘ、仕事嬉しいです。ありがとうキャットちゃん。でも食堂にゴッホにできる仕事があるでしょうか。ゴッホ、仕事続いた試しが……すぐクビになったり……絵も売れないし……‼︎」
「うむうむ、ゴッホは悪い思い出を芋蔓なのだな。芋蔓はちょん切って佃煮にするがよい」
「……エヘヘ〜、美味しいですよね、佃煮」
「さてここだ」
辿り着いた食堂の片隅、テーブルに置いたホットプレートの前には、銀の髪でエプロンをした美しい女性。
「待っていたぞ猫の人」
「うむ、アルテラは今日も素敵にパンケーキマスターだな。実にGOOD! さて、ゴッホよ。こちらは当食堂の誇る時々パンケーキ担当、アルテラだ」
パンケーキマスターと呼ばれたアルテラは胸を張る。
「パンケーキマスターだぞ。最近は、焦がす枚数も減ったし、この間はグルメで有名だという太っちょの所長も美味しいと言ってくれたぞ」
「エへへ、あの、ゴッホです。ということはゴッホもパンケーキを焼くのでしょうか……?」
自信なさげに俯くゴッホ。
「それも悪くはないが、ゴッホにはゴッホの得意なことを頼むとしよう。すなわちコレだ!」
そう言ってタマモキャット取り出したのは、色とりどりのチョコペン。
「わあ、綺麗ですねえ。なんですかこれ」
「そうだな、これは、言うなればゴッホ待望の食べられる絵の具?」
「エヘヘへ! やだなあ! いくらゴッホでも絵の具を食べたりしませんよ⁉︎ ……え? しませんよね……あれ? したかも……。いえ、それより絵の具! つまり、ゴッホが描くわけですね! 描いていいんですね!」
アルテラが頷く。
「そうだ。私がパンケーキを焼いて、ゴッホがそこに絵を描く。そういうことだなキャットよ」
「そういうことだガールズ。二人で素敵な素敵なパンケーキを作るがよい。みんな大喜び間違いなしだワン!」
「エヘ、エヘヘ……絵を描く仕事だ……。ゴッホがんばります。ウフフ……」
絵を描く仕事を任された。請われて絵を描き、誰かに喜んでもらえる仕事。ゴッホにとって、それはとても嬉しいこと。ずっと望んでいたことだった。
「エヘヘ、素敵な仕事をありがとう、キャットちゃん」
「どういたしまして。そうそう、自分たちの分もちゃんと食べるのだぞ。ここは賄い付きのホワイト職場なのでな」
「そうだぞ。ゴッホはたくさん食べると聞いた。大きな大きなパンケーキを焼いてやろう。大きいのは得意だ」
「え⁉︎ 絵を描いて仕事になる上に食べてもいいんですか⁉︎ ヤッター‼︎ キャットさま、もしや太陽⁉︎」
「おう……妙に本質を突いてくるのをやめるが良いフォーリナー」
こうしてカルデアの食堂に新メニューが加わった。お絵かきパンケーキコーナーは大繁盛。大人も子どもも集まって、結局みんなでお絵かきをすることに。もちろん、お絵かきの後は、みんな仲良く笑顔でパンケーキを食べるのだ。