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シナモンロールラッシュ&ナイト【北欧へ、シナモンロール食べに行く⑥】※6日間連続配信※

5日目の朝10時、満タンのスーツケースを持ってホテルを出た。最終日に行くはずだったフィンランドの有名コーヒーチェーン「ロバーツコーヒー」が見当たらない。これまで街歩きの時はなんども見かけていたはずなのに。
夏至祭の今日、国旗が街のあちこちで揺れていた。

あきらめてヘルシンキ中央駅へ。
同じくフィンランドの人気チェーン「ヘスバーガー」で遅めの朝食をとる。

外国のバーガーってすごいサイズなのではと思ったが、意外に小ぶりで味もクセがなくおいしい。どことなく、店の雰囲気とシンプルなバーガーに幼い頃食べた「ドムドム」を思い出した。
駅構内で念願のロバーツコーヒーを発見したので、シナモンロールをテイクアウト。
ここから、怒涛のシナモンロール・ラッシュが始まる。


電車に乗り、空港に到着後アルパ(スーパー)、キオスク、ベーカリー2店舗、とにかく目についた店で片っ端からシナモンロールを買い求め、合計5つゲット。ぜんぶ半分に割り空港ロビーでRと食べ納める。飛行機から降りてきた人たちが家族と感動の再会ハグをする隣で、袋から次々シナモンロールを取り出したいらげる謎の日本人女2人組。

フィンランドで私とRが食べたシナモンロールは、半分に割ったものも含めてこれで合計14個。ふたりの好みはそれぞれ分かれたが、共通して「もう一度食べたい」と名を挙げたのは初日に食べたエロマンガだった。

ちなみに、この後トランジットで寄ったスウェーデンのカフェでもシナモンロールを注文したが、フィンランドで食べたものとはぜんぜん違うものでびっくりした。


ああ、素敵な旅だった。ありがとう。

さよならフィンランド。



とは、行かなかった。

羽田を出る際トラブった、手荷物代。このあと乗り継ぐコペンハーゲンから羽田までの料金はRがネットで支払いを済ませてくれていたが、ヘルシンンキからコペンハーゲンの分は、出国前に支払わないといけないはず。
なのに、ヘルシンキ・ヴァンター国際空港のS航空の荷物預けカウンターは無人だった。

ええええーーーっ。

吉田鋼太郎がいないのはもちろん分かっているけれど(北欧旅①の記事参照)、他の航空会社のカウンターはどこも職員が待機しているのになんで私たちの予約している会社のカウンターだけ無人なの?!どうやら手荷物の手続き自体完全にセルフで操作する方式らしく、しかし英語でまったくちんぷんかんぷん。私たちだけじゃなく、他の客も操作がわからず頭を振ってどこかへ去って行く。Rが電話でサポートセンターにかけているが今日は土曜なので、繋がらない様子。どうしよう、キャリーが日本に持って帰れないってことは、私たちもフィンランドから出られないかもしれない!!!大ピンチ!!!

こうなったら、日本語が通じるであろうJALかANAのカウンターを探して事情を話して相談に乗ってもらうしか…とまで追いつめられた時、奇跡的に一瞬だけ、S航空のカウンターに職員が立ち寄ったので急いで捕まえた。ツンケンした表情のクールなお姉さんは、カタコトで説明する私たちの荷物をあっさりと受け取り、サクサクと手続きしてくれた。しかし、料金を払えとはひとことも言われない。なんども、「This bag go to Tokyo?」と確認したが、このキャリーと、本当に日本で再会できるのだろうか…。
ああAIよ、
漫画の背景とか作文とか誰かの音声真似るとか、そんなのは後回しでいいから一瞬で言語を選んで案内できる機械を今すぐ全世界の空港に置いてくれ……。

空港で買ったラスト・マリメッコ



なんとか無事、ヘルシンキを発ち1時間後ストックホルムにて1度目のトランジット。約3時間カフェで過ごしたりブラブラ。さっきまで、あちこちにマリメッコを持った人々がいたのに一気にいないのが淋しい…。シナモンロールがあったので注文したけれど、フィンランドのと全然違う。スパイスは控えめで生地もふわふわの三つ編み型。ずっしりと重たい、あのスパイシーなフィンランドのシナモンロールがすでに恋しい。

15個目のシナモンロール
@スウェーデン


再び飛行機でコペンハーゲンへ。初日に嗅いだ、木の匂いのする空港に戻ってきた。ああ。いつかフィンランドまで直行できる夢の飛行機、フィンエアーに乗れるくらいの稼ぎが欲しいなあ…。北欧は物価が高いから、現地で使うお金のことを考えてフライトは体力と資金力のバランスでRと選んだ。その結果、現在22時30分から明日の昼12時までをこのコペンハーゲン空港内で夜を明かすのである。

真夜中なので、店も1軒の土産屋を残し、全て閉まっている。

人も少なく、皆、其処此処のベンチで寝ていた。私とRは端の方にある二人掛けのベンチで身を寄せ合った。寝落ちしている間に何か盗まれることを恐れて、眠らないように小声で会話をして過ごす。
フィンランドしりとりをする。フィンランドっぽいもの、鳥とか、水色とか、アアルトとかを、思い出しながら口にする。

当たり前だけれど、北欧ってひとくくりに言ってもそれぞれ全然違う国だった。
今回、フィンランド以外はスウェーデンもデンマークも空港しか訪れていないが、ちょっとだけ目にした景色や雰囲気でも印象が全然違った。スウェーデンの色使いはおしゃれだけど少しばらついた印象で、デンマークは木製品のしっとりした感じと、おもちゃ箱のような可愛らしいデザインがミックスしている。

私はけっしてデザインセンスのある方ではなく、そういうタイプに陥りがちな価値観として一点主義の「かわいい」や「おしゃれ」に目が行ってしまうのが常だったけれど、フィンランドで目にした景色は、どれも均整のとれた美しさ、一瞬輝くよりもずっと、長く生活に寄り添うほのかなあたたかい光のような心地よさがあった。
ビビットな色使いでも形のデザインがうまく作用することで、決して尖らない。

5日間過ごした部屋


眠気がピークを迎えた午前4時―。

目の前のカフェがオープンし、早々に出来ている列の後ろに並んだ。コーヒーとクロワッサンサンドで1800円と驚くほど高かったが、おいしかった。
空港内が一気に人で溢れる。

あたりが賑やかになったと同時にほっとして、極限まで眠気のつまった頭を寄せ合い、私とRはひとつのストールを頭から被り、フライトまでの残りあと3時間を目を閉じて過ごした。




お土産のミニシナモンロール。
冷凍してちょっとずつお家で楽しんだ。


(表紙イラスト&写真/©宇佐江みつこ)





最後までお読みいただきありがとうございました。

帰国後も冷めてくれなかったマリメッコ熱、結局セールやオンラインで色々追加で買っちゃいました。
お店ではおしゃれなものでも買って帰ると、途端にまわりとのバランスでダサくなっていた私の部屋においてもマリメッコは、その可愛さを失わないのが素晴らしいです。

ヘルシンキ。

あの街でいつかまたシナモンロールを食べるために、今日も生きていこうと思います。


ちなみにキャリーは無事、羽田に一緒に届きました。


(おしまい)




*過去の回はこちら↓

*以前訪れたパリの旅行記はこちら↓

*旅の参考図書


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