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ひとりで美術館ハシゴ旅/10.広島県ーArtとTalk 57.ー


皆さんこんにちは、宇佐江です。
今週は、1つの都道府県に的を絞って美術・博物館を複数めぐる「ひとりで美術館ハシゴ旅」広島編です!
ちなみに前回はこちら↓

広島県は以前旅行で訪れた際、市内観光がまわりやすいなあ~という印象があったのですが、美術館巡りもとてもしやすい街でした。
それでは早速、出発!


☆「ひとりで美術館ハシゴ旅」について☆

・記事の内容は宇佐江個人の主観や感想に基づくもので、公式とは一切関係ありません。
・タイムスケジュール優先の旅ですので、各展の最適な鑑賞時間より短い場合があります。(※記載は観覧時間でなく、その施設での滞在時間です)
・施設に関する情報は、各施設のHPや広報等を一部参考にしております。
・館内写真はスタッフさんに確認の上、写真撮影しております。
・情報は当時のものです。実際に行かれる際は各公共交通機関や施設の最新情報を必ずご確認ください。


(本文はエッセイ形式でお送りします)


①9:40~10:40/下瀬美術館

◆開催していた主な展示『マイセン磁器ー恋する表情』

合成したかのような完璧なロゴ

訪れた日:2025年1月の平日
※広島の大竹市内で宿泊した翌日
移動①…こいこいバス/JR大竹駅9:20発→ゆめタウン9:32着。下車後徒歩5分

冒頭でお話したように広島の主な美術館は市内に固まっているのだが、美術館好きな友人から「良かった!」と評判だった下瀬美術館も気になって、中心地から離れているそこから広島の旅をスタートさせた。

2023年にできたばかりの下瀬美術館。美しい設計を手掛けたのは建築家の坂 茂氏。昨年出来た愛知の豊田市博物館(『ArtとTalk 52.』参照)を手掛けた人でもある。最寄のゆめタウンでバスを降りると、乗客は皆巨大ショッピングモールに吸い込まれて私ひとり、美術館に向けて歩き出した。

緑豊かな庭を抜け、鏡張りになっている円形の建物の中に入る。下瀬美術館最大の特徴は、何と言っても「水に浮かぶ展示室」!
パンフレットには、広島の造船技術を活用して水の浮力で動かせる仕組みにしたとある。その構造を知ってはいたが、メインフロントを抜けて展示室へと向かう導入があまりに自然で、「どこのあたりから水面なんだろう?」と思っている時にはすでに、水上だった。よくよく足元に集中するとすこーしだけ、ふわふわするような。

外観はカラフルなんだけれど、中は真っ白。展示室から展示室への移動もすーっと音も無く開く自動ドアで、自分が今どこにいるのか一瞬わからなくなる。まるで、SFアニメに出てくるラスボスの部屋へと続く謎の異空間のよう。

同美術館は、ヴィラとレストランとが一体となった「SIMOSE」という施設の中にある。雰囲気がとってもラグジュアリー。いつかこのような場所でバカンスしてみたいものだ……と思いながら美術館エリアだけを楽しんで、帰りのバス時刻を気にしつつ急いでショップを見て退館した。


②12:35~13:30/広島県立美術館

◆開催していた主な展示『もしも猫展』

外観は渋いけれど、中は広くてきれい。

移動②…こいこいバス/ゆめタウン10:52発→大竹駅11:05着/JR山陽本線11:32発→広島駅12:14着。駅から徒歩約15分

県立美術館は市内循環バス「ひろしま めいぷる~ぷ」や路面電車でも行けるのだが、ちょうどいい便がなかったので駅から歩くことに。「縮景園」という大きな庭園の隣が美術館だった。

1968年、中国地方初の公立美術館として開館したという広島県立美術館。ちょうど所蔵品展示室が工事中で観られなかったけれど、広々した建物とすっきりした印象に、どんな展示でも対応できそうな、県立ならではの懐深さを感じた。レストランにティールームにカフェと、館内に3つも飲食できる場所があるのも羨ましい。
いつかゆっくり所蔵品展も観に来たいなあ。


③13:45~15:00/ひろしま美術館

◆開催していた主な展示『オディロン・ルドン展』

待望の初来館!

移動③…徒歩約12分

県美から大通りを歩き、広島城を右にみて左折すると、ひろしま美術館が現れる。敷地が広いので、遠い場所から近づいてしまい正面玄関までぐるりと一周した。

充実のコレクションで知られるひろしま美術館。公式HPによると、「創業100周年を迎えた広島銀行が、地域とともに歩んだ歴史の記念事業として設立」し、1978年に開館とある。
美術館のテーマは、“愛とやすらぎのために”。
その想いの通り、原爆ドームをイメージしたというドーム型の本館では、豪華な名画たちがびっくりするほど気さくな感じで展示されていた。

ひろしま美術館には個人的にもずっと思い入れがあった。

昔、私の描いた『ミュージアムの女』を読んで「どうしても岐阜県美術館に行きたくてお母さんに連れてきてもらった」とわざわざ広島から来てくれた小学生がいた。残念ながらその日私は非番で、彼女が残してくれたポストカードのメッセージで後日それを知った。その時使われていたのが、彼女が好きだというオディロン・ルドン作《ペガサス、岩上の馬》の絵が刷られた、ひろしま美術館の所蔵品ポストカードだった。
あれ以来、色んな美術館で《ペガサス、岩上の馬》と再会した。去年開かれたルドン展で、岐阜県美にも再びペガサスは来てくれた。けれど、1度でいいからホームであるひろしま美術館でこの絵と対面してみたかった。そして今回、ルドン展の巡回先がひろしま美術館だと知り、「今行かねばいつ行く」という気持ちで広島まで来たのだ。
展示を観ながらずっと「どこにいるかな」と探していたペガサスは、順路の最後の1枚、展覧会の大トリとして堂々たる佇まいで飾られていた。

あの子はもう大学生になる年頃だなあ。
学芸員になりたいと当時言ってくれていたけれど、今現在、どんな夢に向かっているのだろう。
どうか元気で、楽しく過ごしていますように。

遅めの昼食
(館内カフェ「ジャルダン」)


➃15:40~16:55/広島市現代美術館

◆開催していた主な展示『原田裕規:ホーム・ポート』

空と交信しているかのよう。

移動➃…ひろしま めいぷる~ぷ/ひろしま美術館前15:08発→現代美術館前15:32着(実際は時刻表より少し遅く発着)。徒歩すぐ。

市内循環バスに乗り、山の上にある現代美術館に到着。

1989年、公立館では国内初の現代美術を専門とする美術館としてオープンしたという同館(公式HP参照)。建築家・黒川紀章による設計だけあって、建物がまずかっこいい。ロッカーもポップで可愛かった。ピクトサインや、館内のちょっとした案内文も独特で面白い。企画展やコレクションも面白かったが、中でも「ヒロシマ・アピールズ」のポスター展が無料ながら、とても見応えがあった。現代美術館に向かう道中、バスの車窓から見えた原爆ドームを思い出した。

ひとりで全国の美術・博物館をハシゴする旅も、今回で10ヶ所目。美術館はその土地の文化や風土、歴史とは切り離せない存在だと毎回大なり小なり感じるけれど、これまでで特にそれを強く感じたのは、兵庫と、今回の広島だったと思う。

現代美術館の閉館が17時で、広島駅までの最終バスが来るのが17時32分。
めちゃくちゃ寒かったが、美術館の受付スタッフさんがくれたマップを頼りに、野外彫刻を探しながら広島の暮れゆく景色を山の上から眺めた。

展望台から見えた広島の夕暮れ


広島ハシゴ旅の感想

市内にあった広島県美・ひろしま美・広島現美(全部名前が似ているので注意)の3つは「めいぷる~ぷ」で全部回ることも可能(広島駅も含む!)だし、何なら時間と体力があれば徒歩でも充分移動可能です。
路面電車も慣れれば便利そうだけれど、乗り継ぎとかが不安で今回は利用しませんでした。広島現美からはバス以外にも、徒歩で下山(約500m)して路面電車に乗る手もあったのですが、薄暗さと初めての道が心配で断念。
暖かい時期の昼なら、今度は歩いて行ってみたいなあ。

下瀬美術館も少し離れているけれど本当に行って良かった。平日のためか空いていましたが、ふだんあまり美術館で写真を撮らない私でもバシャバシャ撮ってしまうほど景色の全てが美しかったので、今後さらに人気が出て混む前に、興味のある方は是非!





今週もお読みいただきありがとうございました。
ハシゴ旅、来週も続きます!

◆次回予告◆
ついに11ヶ所目!広島のお隣の……さてどこへ?

それではまた、次の月曜に。


*ハシゴ旅シリーズ。過去回はこちら↓


*今回訪れた施設↓


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