(短編エッセイ)なぜか節分/生まれた順の性格
なぜか節分
日本には1年を通じ、さまざまな季節行事がある。とはいえ、おそらくその全てをきちんと遂行している人はごく一部で、「毎年これだけはやらないとしっくりこない」ものだけを、各自または各家庭で行っていることだろう。
私の場合、その「やらないとしっくりこないもの」の筆頭はなぜか節分である。
きっかけは大学1年。初めてひとり暮らしで迎えた節分の日、私はスーパーにいた。じわじわと世に浸透しだし、だが実家ではまだ取り入れられていなかった「丸かぶり」というやつをやってみたくて、恵方巻を買いに来たのである。
普通の巻き寿司じゃなく、どうせ1本食べるならネギトロ巻きがいいなあ~。
そう思いながら総菜コーナーを徘徊したが、運悪く品切れのタイミング。高校の頃バイトしていたスーパーの総菜部では、節分の日なんて大わらわで、ほいほい出来たてを追加していたのにな~そんなことを思い出していたら、
「そっか、自分で作ればいいんじゃん!」
と思いついた。
パックのネギトロを買い、「巻きす」も買った。アパートに帰ってから大判の焼き海苔がないのに気づき最寄のスーパーへ慌てて走った。
いざ!
巻きすに海苔を置き、その上にご飯を薄めに敷く(多分わざわざ酢飯にはせずふつうのご飯だった)。バイト時代の記憶を辿る。主に閉店前の洗い物アンド掃除要員だった私は、総菜をつくったり寿司を握ったりする作業はやったことがなかったが、たまに、ネギトロや鉄火の細巻きだけはやらせてもらった。慣れないうちはつい、初動でご飯を乗せすぎてうまく巻けずに失敗した。そうそう。ご飯は海苔が下から薄っすら透けるくらい、控えめに敷くのがコツなのだ。あと、のりしろとして、海苔部分を上に1センチくらい残すこと。
豪華なオリジナル・ネギトロ太巻きが完成。
通常は存在しない太巻きネギトロを食べてみたかった夢が果たせて満足したが、やはりふつうに、「細巻にしたら良かった」と食べ始めて思った。ケチではなく、ネギトロは細巻の方がおいしいのである。
定番には意味があるのだと学んだ節分だった。
この後、しばらくは自分で作る恵方巻にはまり、毎年具材を選んで買い込んでいたが、だんだん飽きて、現在はデパ地下の総菜売り場で目新しいものを物色することが楽しみになっている。去年か一昨年に買った「エビフライの恵方巻」が、見た目だけじゃなく意外とおいしかった。
今年は何を買おうかなー。
恵方巻ばかりに気をとられ、肝心の豆を買うのを忘れて当日焦り、どこも手頃な小パックが売りきれでべっこう飴とか鬼のお面付きとかの豪華な、しかし独り者にとっては不要なセットを不経済に買ってしまうのも近頃の定番になりつつある。
生まれた順の性格
最近の地味なマイブーム。それは、知人が何番目生まれかを尋ねること。きっかけは美容師さんとの会話だった。
年末年始どうしてました?の流れから、お互いの兄弟の話になった。私には2つ下の弟がいて、つまりは長子。美容師さんは3姉妹の末っ子らしい。
「私の知る限りですけど、美容師って末っ子が多いんですよ。逆に長子は少ないんです。ていうか、ほぼいない」
「へえ~。何でですかね?」
「末っ子は負けん気が強いからだと思います。我が強いというか。この業界ってけっこう、今より昔はもっとですけど、競争社会なんで。長子は優しすぎてそういうのに向いてないんじゃないかな?」
でも、末っ子が多いデメリットもあるそうで、「人の面倒をみるのが皆苦手だから新人教育を誰もやろうとしない」という。自分以外の人間の、細かい部分に気づけないのだそうだ。
たしかに長子は世話焼きなところがある。
自分でも時々、気を回しすぎてうざいなと客観的に感じることがある。「我が弱い」わけじゃないけれど、損得に関しては他の人に譲りがちかも…。
たとえば以前、職場で仕事量に対して人数が足らず、自分が社歴が一番上だったのと、その人手不足を未然に防げなかった皆への申し訳なさもあり、一番しんどいポジションをめちゃくちゃ自分に偏らせて作ったシフトを配布した。するとすぐ、同僚たちが険しい顔でやってきて、
「宇佐江さん、これはやりすぎです。絶対長女ですよね?」
と、言われた。(はい、長女です……)
血液型とか占いとかはまったく信じていない私だけれど、こと、この「生まれた順の性格」に関しては中々信憑性があると感じている。
たった1つ年齢が違うだけで先輩だ後輩だと扱いを大袈裟に変えていた学生時代が嘘みたいに、社会に出れば、年齢なんてあってないようなもの。経験だったり、社歴だったりが優先で、相手の実年齢などふだんはあまり意識しないし、むしろ意識してしまったら、自分の親ほどの世代の人に指示など出せまい。
けれど、それだけじゃ、たまにぎくしゃくする。
そんな時うまいこと作用してくれるのが「生まれた順の性格」なのではないか?面倒をつい見ちゃう長子がいて、自分の意見をシンプルに言える末っ子がいて、状況を客観的に見定める中間子がいて。
ちなみに、「マイペース」と言われがちなひとりっこ。私のまわりにも多いが、知る限り、皆マイペースというよりはすごく頑張り屋さんなイメージが強いです。
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今週もお読みいただきありがとうございました。
さて、あなたは、何番目生まれですか?
◆次回予告◆
『ArtとTalk㊲』最近行った展覧会の話。
それではまた、次の月曜に。
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