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今年を振り返るマイベスト展2022!!ーArtとTalk㉓ー

皆さんこんにちは、宇佐江です。
今年の月曜はあと残り2回ありますが、美術についてゆるりと語る「ArtとTalk」コーナーは今回が2022年のラストです。

というわけで!

今回は、宇佐江が観た今年の展覧会で特に印象的だったものを振り返る「マイベスト展2022」と、「今年から展覧会レポを書き始めた理由」について、少しお話させていただければと思います。

飲みもの片手にごゆるりと。
それでは参りましょう~。

マイベスト展2022

「ベスト」とは言いつつ、ランキング形式にするのは(私の鑑賞範囲も全国規模ではなく不平等なため)気が引けるので、つらつらと個人的総評な感じでお話をします。
世の中の歩みと同じく、私も2020~21年は展覧会へ足を運ぶ回数が激減していましたが、今年はようやくそれ以前の数字近くまで戻った感じです。
皆さまはいかがでしたでしょうか?


年始に「メトロポリタン美術館展」と「コレクター福富太郎の眼」の記事からスタートした今年ですが、他にも「ミロ展」や、現代アートの巨匠ゲルハルト・リヒターに関する展示が各地で開催されるなど、たいへん魅力的な大型企画が沢山ありました。
ですが、
個人的に振り返ってみると、今年は「会場は小規模でも、意欲的な試みをしている企画」に心惹かれることが私は多かったです。
過去に記事化しているものも多いのですが、あらためて振り返ってご紹介。

まず「貝殻旅行ー三岸好太郎・節子展ー」(一宮市三岸節子記念美術館)。この展示は、作品の魅力はもとより「三岸好太郎・節子」というとてもドラマチックで力強いふたりの生き様を、わかりやすい文章で伝えることにより鑑賞者の感動を高めてくれた学芸員さんの想いが際立つ展示でした。こういう展覧会を観ると、やっぱり学芸員さんの役割ってすごく大きいな~と感じます。展示を通じて、時にはその作家の評価までも変えてしまう影響力があるのですから。

続いては「鴨居玲展 人間とは何か?」(中村屋サロン美術館)と、「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」(東京オペラシティアートギャラリー)。前者は「情感の凄さ」、後者は「新感覚の発見」を楽しませてくれた本当に見応えのある展示でした。

美術館通いも回数を重ねてくると、ときどき、
「内容は面白いけれどこの展示、この会場の空間にちょっと合ってないかも…」
と感じることがあるのですが、それは天井の高さだったり、展示構成だったり、さまざまな要因があって生じる違和感で、作家自体の力量とかその美術館の魅力とかとは、ぜんぜん別の問題なんです。
単にそれぞれが「マッチしていない」感じ。
ところが今回の鴨居玲展に関しては、他の人の感想を見ても「あのこじんまりした空間だからこそ、余計に痺れた」というものが多く、イメージが会場と一致した素晴らしい例だったのではないかなと思います。

ライアン・ガンダーは、今後の展示もぜひ見続けたい、好きな作家が増えてとても嬉しい出会いでした。

あと最後にもうひとつご紹介したいのが、「PUNK! 展」(「Punk! The Revolution of Everyday Life」)
昨年から倉敷、東京、長崎、福岡、大阪を巡回し、その後名古屋の港まちポットラックビルで開催された展示を観ました。

「パンク」とは、音楽の系譜で登場するあのパンクのこと。会場にはたくさんのモニターと、同時にいくつものヘッドホンが差し込めるプラグが用意され(ヘッドホンは1人1つずつ貸し出して貰えたので、衛生面も気にせず楽しめました。)世界各国のパンク文化を主に映像や資料で楽しむ展示でした。
今展は美術の展覧会としてどうかというよりも、「パンク」という一見派手な外見主義と捉えられがちなジャンルを掘り下げ、根底にある現代美術との親和性や、社会の中でパンクがどのように生まれ、必要とされてきたのかを知る学びの意味が大きい内容です。
特に私が感動したのは、社会への不満を持ちつつ政治への発言が難しい某国の若者たちに、「自分たちがどう思っているのかを表現する方法として、音楽があることを伝えたい」と、未経験の人に音楽の作り方や演奏の仕方を教えるパンクの人たちの姿でした。

たどたどしい歌声なのに、こちらの胸に食い込んでくるような彼らの演奏を聴いて、「表現」というものは美術や音楽ありきではなく、自分の気持ちをより強く相手に伝えるための「方法を模索することなんだ」と、はっとする思いがしました。

なかなか1本の記事にするには難しい展示だったのですが、最後にご紹介できてよかったです。


今年から展覧会レポを書き始めた理由

さて、2019年から様々な記事を書き公開してきたこの宇佐江noteですが、実は昨年末までは意識的に、展覧会レポートを書くのは控えていたんです。

というのも、第一に展覧会の感想は人ぞれぞれだから「私がどう感じたか」なんて興味持つ人いるかな?と思ったこと。また、私は情報を“シェアする”という感覚が元々乏しいため、展覧会の魅力をじゅうぶんに読む人に伝える記事が書けるだろうか?
むしろ、勝手な解釈で誰かの不快を招いたり、調子に乗って間違った美術の知識を披露し恥をかくことが増えるのではないか?とビクビクしていたのもありました。
(他のお仕事と違い、こちらのnoteでは携わるのが私ひとりで誰もチェックしないまま世に放たれるので、そういう点でも不安でした。)
展覧会へ行くことは、私にとって、ある種大切なホームグラウンドであったが故に、安易には踏み切れなかったのです。
そんな私が今年から展覧会レポを解禁した一番の理由は、

自分の恥 < 美術館に行きたいと思う人を増やしたい

の図式が頭の中で成り立ったからでした。
昨年末、梅田ラテラルさんでトークイベントをやらせていただいた際に、
「美術に関する情報って、美術が好きな人にしか届かないような現状なんだ」
ということに気づいたのも大きなきっかけでした。

また、一昨年から昨年にかけて、世の中がこのような状況になり「学芸員さんが数年かけて準備してきた企画展が延期や中止になってしまう」という予想だにしなかった現実を間近で見たり、逆に、巡回先が中止になったことで遠方からわざわざこちら(私の勤務先の美術館)の会場に来てくださる展覧会ファンの方も大勢みえて、

「ああ、こんなにも展覧会って儚くて、観られること自体が本来は奇跡なんだ」

と思ったこともすごく大きな出来事でした。
一旦中止や延期になってしまうと、会場の問題や作品の貸出期間などにも影響するため、安易にスライドできるものではないのですよね。

だからこそ、すばらしい展示は1人でも多くの方に観てほしい。知らずに開催期間が終わってしまうのは勿体なさすぎる!!
そう思い、誠に拙いレポではありますが、私は自分のおすすめ展のことを今年から書くようになりました。


来年は、どんな展覧会に巡り会えるかな。


行きたいと思ったら多少遠くても躊躇せず行けるよう、がんばって沢山仕事をしてお金貯めよう…としみじみ思う、2022年の師走なのでした。





今週もお読みいただきありがとうございました。今年オープンした、話題の大阪中之島美術館もまだ行けていないから来年はぜひ行きたいです~。
皆さまの、今年気になった展示、楽しかった展示はありますか?

まだ美術館に行くまでには至らない…というあなたも、もし私のレポートを読んで、行ったような気持ちになってくだされば、とっても嬉しいです。…そしていつか、本物が観たいと思ってもらえるような文章力を身に着けるため、来年も書き続けます!!

今回文中でご紹介した展覧会レポは、記事の最後にまとめてありますのでよろしければまた覗いてみてくださいね。

◆次回予告◆
『美大時代の日記帳⑪』クリスマスケーキの短期バイト

それではまた、次の月曜に。



◆今回のおやつ◆
デパ地下のショートケーキ


※今回ご紹介した展覧会の詳細記事はこちら↓


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