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知らないと損をする!?アメリカでの個人事業主 vs 法人
アメリカでもビジネスをするには、会社設立(法人化)するか、個人事業主として活動するかの選択になります。
法人化と個人事業主の大きな違いは税制面と責任の範囲です。
アメリカにおける法人と個人事業主の違いについて、損をしないよう事前に確認をしておくことが重要です!
1. 個人事業主としてビジネスを始める
アメリカで個人事業主としてビジネスを始めるには、事業を行う(事務所のある)場所の市に対して、ビジネスライセンスの登録が必要になります。
最近では、各市のホームページにビジネスライセンス登録のページがあるのでオンラインで行うことが可能です。
事務所を自宅にして、ホームオフィスとして行う場合もその市に対してビジネスライセンス登録を行います。
個人事業主の場合、基本は個人名での登録になりますが、ビジネス名(屋号)を登録する場合は、勝手にビジネス名を使ってはいけないので、事業所があるカウンティ(郡)の書記官事務所(County Clerk)にて、事前にDBA登録を済ませておく必要があります。
先に同じカウンティ内で、同じDBAは使えませんし、勝手に登録なしでそのビジネスネームで活動していると、先に取得されている方から訴えられる可能性があります(損害賠償)。
逆にDBAを取得していれば、同じカウンティ内では他の人が同じビジネスネームでビジネスができないという抑止力になります。ブランディングを考えているのであれば、事前にDBAを取得する必要があります。
このDBAを持って、ビジネスライセンス登録やビジネスのための銀行口座(Business Account)を作ることができます。
もちろん、アメリカで個人事業主としてビジネスができるのは、アメリカ市民権・永住権保持者と、E-2ビザ、L-1ビザの配偶者だけになります。
その他の就労ビザの場合は、副業は禁止されているので(そのビザをスポンサーしている企業に就労することで発給が許可されているので)、個人事業主、フリーランスとして活動することはできません。
2. 個人事業主のデメリット
個人事業主は、会社組織でないため、何かお客様や取引先との間に起きたトラブル(損害賠償や訴訟など)に関しての責任範囲が全て個人に及ぶため(無限責任)、何かあった時のリスクは、訴訟大国アメリカでは日本の比ではありません。
また、税制面において、個人事業主としての事業利益全てが個人の所得になり、そこに個人の所得税がかかりますが、それに加えて、自営業税(Self-Employment Tax)がかかります。
自営業税は、通常の会社員であれば、給与の際に社会保険料(ソーシャルセキュリティ・メディケアタックス)が源泉徴収されるのですが、個人事業主は給与が取れないので、タックスリターンの際に、この社会保険料と法人が支払う給与税(Payroll Tax)を合わせた自営業税を、事業利益の15.3%徴収されます。
先にこまめに払うか、後で一気に払うかの差ですが、個人事業主としての事業規模で考えると、納税できない・遅れるとなった時に余計な税金を払うことになってしまうので、キャッシュフロー(残高)を気をつけなければいけません。
さらに、個人事業主で儲けが出ている場合、同じく所得税の源泉徴収がされないので、タックスリターン後に昨年の所得税と同等額の予定納税(Estimate Tax)をしなければいけません。この点でもキャッシュフローを意識した経営をしなければいけないことになります。
3. 法人化への分岐点
個人事業主としての活動は、ビジネスが順調に成長し売上、利益が上がってきたのであれば、税制面での個人事業主としてのデメリットが大きくなってくるので、ある段階に来たら法人化を検討するのが必要です(本来はビジネスをするなら最初から法人化した方がメリットは大きい)。
例えば、所得税だけなく、自営業税を納めるのですが、こちらは社会保険料金なので、将来の受給する年金に関わるものになります。
所得税や自営業税を納めたくないから、経費を使って、赤字決算にしていく、黒字でも最小限にする、なんてことをしていると、もちろん納税額は減りますが、納める社会保険料が納める額の条件に満たない場合、将来、年金も受給できない、受給額が少なくなってしまいます。
また、個人事業主で赤字決算が続くと、所得税を減らしたいためではないか、ビジネスではなく趣味でやっているのではないかと疑われ、税務調査の対象になりやすく、ビジネスではないと判断されると経費控除が認められず、売上そのものが所得になり、追徴課税+遅延ペナルティなど余計な税金を払うことになってしまいます。
こうした面を避けるためにも、法人化して自分に給与を出して、源泉徴収で所得税、社会保険料を納めていく、ことでキャッシュフローの健全化や将来への備えにもなります。
また、法人化してきちんと貸借対照表(Balance Sheet)を付けていくことで会社の価値が明確化し、将来、ビジネスを売却することも可能になります。
4. 法人化のメリット
法人化のメリットは言うまでもなく、責任の範囲が有限であることになります。責任がオーナー個人には及ばない点が非常に大きいです。
とは言え、何か起こった場合、会社の資産に手を付けたくないものです。そのために多くの企業、特にお客様と直接対応するビジネス(飲食店や美容系など)の場合は、損賠賠償保険(Liability Insurance)に加入するのが一般的です。その場合も個人より法人の方が入りやすいのがポイントです。
また、法人化(C-Corp)にすると仮に赤字決算になっても、それを翌年以降に繰越となり、翌年黒字決算となっても過去の赤字分で相殺し、法人税を避けることも可能です。
それと法人化することで、自分に給与を出すことができるので、そこで所得税と社会保険料の源泉徴収がされる、プラス、各種社会補償(失業保険や災害補償など)を受けることができるようになります。
給与の面で法人化にするメリットは、個人事業主の場合は給与が取れないので、売上が入っている銀行口座から生活費を引き出していると思いますが、この生活費は経費にはならないので、事業利益は減らない、所得税も減らないのに、残高がないと言う状況になってしまいます。
これが、法人にして給与を出せば、給与は経費になるので、事業利益の圧縮、節税になります。
また給与から社会保険料も源泉徴収されるので、将来の年金受給の備えにもなります。
まとめ
アメリカで個人事業主・フリーランスとして活動するのは、アメリカ市民権・永住権、E-2、L-1ビザの配偶者である必要があります。
また個人事業主は信用度が法人に比べて低いので、融資や契約などのハードルも高く、また何かお客様との間のトラブルに関しては、全責任がオーナー個人に無限にかかります。
節税を優先し過ぎると、ソーシャルセキュリティ・メディケアへの拠出が行われなくなるため、将来年金や医療保険を受けられなくなります。
配偶者(パートナー)の収入があり、自分は副業程度に行う分には良いのですが、本格的に、また売上・利益が上がってくれば、早い段階で法人化することで、税制面だけなく、様々なメリットを享受することができます。
いくら利益が出たら法人化したらいいのか?
個人事業主の法人化分岐点計算
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