8月もおわりの、ある夏の日。 今日はわたしの住むまちの、花火大会の日。 小さいころあの子とお別れした、お祭りの夜。 わたしがずっと大切にしていたうさぎのおにんぎょう。 たっぷりとした大きな白いリボンと、星柄の銀の包み紙につつまれて、わたしのところにやってきた日のことは、いつまでも忘れる事ができない。 いつでも一緒だったから、わたしはあの子なのか、あの子がわたしなのか、あの子のわたしなのか、わからなくなるくらいの分身。 あの日わたしは、うさぎのあの子をなくしてしまっ
昔々あるところに、てんてこマート天国店という商店があった。 月に一度だけ開くというその店は大変な人気で、オープンするや否や客は商品をカートに入れ決済を無事遂行するためマンボを踊り、買い終わったらサンバを踊り、それはそれは大変なお祭り騒ぎなのであった。 人気商品、「頭に宝石をのせた成金しゅうまいのしんせき」の敷き物は、創業当時からハートのふ菓子と決まっていた。 ところが、てんてこマートの商品生産地であるおにんぎょう村でハートふ菓子の不作が続いた。 村のクィーン、ボロボロ
私は宮崎花子。広い空の下には、広い海が広がっていて、そのさらに深いところには楽園があるという噂、聞いたことはありませんか?それは本当の話。海底にある秘密のサロン、オクトパスカフェへようこそ。 お花と服が好きな私、宮崎花子。何を隠そうオクトパスカフェの中堅コンカフェ嬢です。私の見た目?うさぎど真ん中ってよく言われます。出勤時は小花柄のワンピースに同じ柄のリボンが多いかな。好きなブランドはHAMSTAR HOUSE。服はほとんどラブリーブティックで買ってます。 同僚には、風呂好
感謝を伝えるにはどうすれば良いのでしょう。この、デカBIGBIGBIG感謝を伝えたいのです。 どうしたら伝わるのでしょう。 たぶん、ありがとうと言ってしまえば良いのでしょう。 でも、簡単すぎる気がします。伝えたいのは、デカBIGBIGBIG感謝なのです。 さんぽしながら、考えます。歩きながらのほうが、よいアイデアが浮かぶからです。 さんぽのついでに、サンリオに行きました。 いちご新聞2月号を買って、いちごの王さまからのメッセージを読みました。 2月はバレンタインデー、チョコ
いつのまにか眠っていて、朝がやってきている。朝のきぶんはすごい。レモンスカッシュ。兄弟たちはまだ今日と、きのうの夜との間にいて、くっついたり寝言をいったりしている。 聖なる川「San Rio」の聖母たちがあしらわれたうす紫いろのカーテンが開かれ、夏の空がみえる。まぶしい青とたっぷりのわたがし。空のことは、まだことばにはできない感じ。せいちょうの過程で、このすてきさを伝える事もできるのかな。できなくても、空は空でべつにと思っていそう。空はおおきい。わたし。自由な気持ち。 きの
「96秒とは、いいすうじだね。」 わたしは、話しかけられた。水いろのリボンでむすんだツインテールのそのひとは、しろくて小さいからだのそこらじゅう縫い目だらけで、ボロボロ。わたしはすこしひるんだ。 たくさんいた兄弟たちも、どうぶつもいなくなって、たったふたり、ここにいるような感覚。これは、未知のかんかく。からだがふるえている。 ボロボロのリボンのひとは、フリルがたっぷりついたデスクライトの、ピンクいろのひかりの下にすっと入って、話しはじめた。 「すうじはふしぎだから好きだよ。6
2022年の初夏にわたしはうまれた。 わたしの母は、ベージュいろの、うさぎのナース。その母から、うまれた。いのちを分けてもらった。目をあけた時、まぶしかった。蛍光灯のひかりがわたしの最初のひかりだった。 まだ生まれたばかりなのだけれど、わたしは思った。こんなふうに人びとのせいかつをすてきに照らしたいと。まだ0歳なのに思った。わたしはかがやき。高級なものではない。ひかりのもと。これからどこに行くのかもわからないし、自分がなんなのかもわかっていない。生きているのか、いつか消滅する