コントローラー
ある日、俺の手からゲーム機が生えてきた。
それはbluetooth対応でちょうど新しいコントローラーが欲しい俺にはぴったりだった。
手から生えただけあって、コントローラーは俺によく馴染んだ。これのおかげで、マスターランクに上り詰めたと言っても過言ではない。
しかし、問題はきちんとあった。
大学三年生の俺は、就活しなければいけなかった。
ゲームコントローラの手で就活の場に行くわけにもいかず、俺はとりあえずは病院に行った。
しかし、ゲームコントローラを手放すことはできなかった。コントローラーのコードにあたる部分は腕の血管と骨と完全に同化している、もしとるのならば、手がなくなると言われた。
仕方なく、俺は着の身着のまま面接会場へと向かった。
今では手を切り離さなくてよかったと思っている。俺は晴れてデバッカーとしてゲーム会社に雇われたからだ。プロゲーマーに劣らない精緻なゲーム捌きだと評判だ。当たり前だ。自分の体くらい思い通りに動かせるに決まってる。
手がコントローラーで埋まってるせいで壁ドンや顎クイはできないが、俺にそんな機会が巡ってくるわけないので別に困ることはない。
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