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需要は順調に回復もコスト増で赤字に。デルタ航空決算発表(2023年1~3月期)

アメリカ企業の2023年1~3月期決算発表がスタートしました。

新型コロナのパンデミックから3年が過ぎ、ウィズコロナのライフスタイル、ビジネススタイルも定着しつつあります。経済活動は多くの分野でパンデミック前の水準を回復してきました。

アメリカでは、インフレの急進を抑えるため、FRB(準備制度理事会)が利上げを繰り返してきました。ただ、多少鈍化傾向がみられるものの、依然として物価の上昇は続いています。肝心の労働需給もタイトなままで、企業にとってはコストアップ要因となっています。

急激な利上げによって景気への影響が顕在化してきました。
シリコンバレー銀行の破綻によって、金融システム不安も高まりました。

こうした複雑な経済環境の23年1~3月期、それぞれの企業がどのような活動を行い、どのような結果となったのか。そして、今後の事業環境や収益の見通しをどのように考えているのか、非常に注目される決算になると思います。

そんな1~3月期決算の先陣を切ったのはデルタ航空です。


売上高は1~3月期の過去最高を更新

4月13日に発表したデルタ航空の四半期決算の概要は以下の通りです。

(100万ドル)    売上高  営業利益  純利益  1株当たり利益
 2022年 1~ 3月期   9,348    ▲783  ▲940    ▲1.23㌦
 2022年 4~ 6月期  13,824   1,519   735    1.44㌦
 
2022年 7~ 9月期  13,975   1,456   695    1.51㌦ 
2022年10~12月期    13,435   1,470   828    1.48㌦
 2023年 1~ 3月期    12,759    ▲277  ▲363    0.25㌦

売上高は127億5900万㌦で、前年の同じ期と比べ36.5%増と大きく増加しました。コロナ前の2019年1~3月期(104億7200万㌦)比で14~17%増としていたガイダンスの上限(約122億5000万㌦)を上回り、1~3月期として過去最高の売上高を記録しました。これで昨年の4~6月期以降、4四半期連続で売上高は当該四半期ベースでの過去最高を更新していることになります。

主軸の旅客収入はコロナ前回復

内訳をみてみましょう。

この1年間は需要が順調に回復し、メインの旅客収入はコロナ前の水準を取り戻しています。旅客収入は104億1100万㌦で前年同期比50.7%増加しています。チケット収入ではメインキャビンが51%増、プレミアムが58%増と、より価格の高いプレミアムの伸びが高くなっています。

その他収入では、コロナを機に本格展開し、規模を拡大してきた石油精製事業やロイヤリティ事業からの収入が含まれています。ロイヤリティからの収入は増加しましたが、石油精製の収入が減少した結果、前年同期比で横ばいとなりました。

旅客収入を路線別にみると、全体の4分の3を占める国内線が前年同期比36.5%増加しました。
国際線では、欧州向けの大西洋路線が2.3倍、中南米路線が66.5%増加し、四半期ベースで初めて10億㌦を突破しています。中国のゼロコロナ政策などの影響で回復が遅れている太平洋路線は、まだコロナ前の水準を取り戻してはいないものの、3.5倍と大きく増加しました。

燃料高、コスト増が重荷

コストも増えています。

まず燃料費、前年同期比28%増加しました。航空機の運航数が増えたことで当然使用量が増えています。価格は、このところ落ち着きを見せていますが、平均燃料価格は1ガロン当たり3.01㌦で、前年同期(2.79㌦)と比べ約8%上昇しました。

人件費も前年同期比20%増と膨らんでいます。加えてパイロットとの新契約に関連する費用なども計上しています。
このほか、整備や修理といったメンテナンス費用、委託費用、乗客サービスなど各種のコストも、それぞれ大幅に上昇しています。

その結果、営業利益は2億7700万㌦の赤字となっています。22年1~3月期も赤字(7億8300万㌦)でしたが、赤字額は減少しました。

純利益は3億6300万㌦の赤字で、特殊要因を除いた調整ベース(Non-GAAP)の1株当たり利益は0.25㌦となりました。

TRASM と CASM

航空会社の決算において、TRASM(Total revenue per available seat mile:有効座席マイル当たりの収益合計)という指標が示されます。
航空会社の輸送能力を示す指標に、ASM(Available Seat Mile:有効座席数)というものがあります。期間中の利用可能座席数に総飛行マイル数を乗じたものです。このASM当たりの営業収益を表したものがTRASMとなります。

新型コロナで事業の大幅な縮小を余儀なくされた20年は、売り上げが激減しTRASMも急低下しましたが、2021年1~3月期を底に急改善を見せてきました。

下のグラフでは20年以降、TRASM(青)と調整済みTRASM(赤)が乖離しています。調整済みTRASMは、TRASMから製油所の売り上げなどを差し引いた純粋な航空事業からの収益で計算したものです。両者の乖離は、コロナによる航空事業の減少を補うために石油精製事業を拡大するなど収益の多様化を進めてきたことを物語っています。

23年1~3月期のTRASMは20.80㌣で前年同期比15.3%増、調整ベースは19.30㌣で同22.5%増加しました。

コストに関しても同じような指標があります。それがCASM(Cost per available seat mile:有効座席マイル当たりの費用合計)です。

CASMはコロナのパンデミックが世界的に急拡大した20年4~6月期に急上昇しています。ASMが急減した一方で、リストラ費用や減損などを計上したことで急増しました。

下のグラフでは、CASM(青)とCASM-ex(赤)の推移を示しています。CASM-exは、CASMから燃料費と石油精製事業の支出、一時的な費用を除外したベースで、直近での両者の乖離は燃料費の急増が主因です。

23年1~3月期のCASMは21.25㌣で前年同期比8.6%増、CASM-exは13.86㌣で同4.7%の増加でした。

今後の見通し

4~6月期の見通しについて、以下の通り発表しています。

決算資料より

売上高は、本格回復となった前年同期をさらに上回る見通しとなっています。国際線のキャパシティは20%以上の増加となるようですが、その75%はすでに予約で埋まっているとのことです。

原油価格は3月に急落し直近では上昇を見せていますが、1~3月期よりも安い水準を設定しています。

営業利益率は前年同期(11.7%)よりも大幅にアップするとみています。
EPSも4年ぶりの2㌦台復帰を見込んでいます。

まとめ

・2023年1~3月期の売上高は前年比36%増、予想上回る好調
・旅客収入の増加顕著、回復遅れている太平洋路線も急拡大
・燃料費上昇続き、コスト増え純利益は3.6億㌦の赤字
・調整ベースのTRASMは22.5%増、CASM-exは4.7%増加
・4~6月期は売上高一段拡大、利益率上昇し、EPSは2㌦回復へ


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