シスコシステムズ:予想上回る安定成長、通期見通しも上方修正(2022年8~10月期決算発表)
11月16日にシスコシステムズの2022年8~10月期の四半期決算が発表されました。その内容は市場に好感され、直後に株価は急上昇し、その後も好調に推移しています。
その決算内容を見る前に、シスコシステムズとはどういう会社か、みてみましょう。
シスコシステムズってどんな会社
シスコシステムズは、グローバルにビジネス展開する通信機器メーカーです。ネット接続用のルーターやスイッチなどネットワーク機器が主軸ですが、5Gなどワイヤレス機器やクラウド・サーバー関連、セキュリティにも注力しています。また、関連するソフトウェアや各種サービスも提供しています。
シスコシステムズは、M&Aを積極的に行うことで成長・拡大してきました。
その経緯は、研究論文にもなっています(ちょっと古いですが)。
四半期売上高は過去最高を更新
それでは、決算な内容を見ていきましょう。概要は以下の通りです。
四半期の業績を並べてみると、ハイテク企業でありながら、なんと安定しているのか、ということに気がつきます。
売上高は136億3200万㌦で、前年の同じ期と比べ5.7%増加しました。この数字は、2019年5~7月期(134億2800万㌦)を上回り、四半期ベースの売上高としては過去最高を更新しました。
また、8月に公表していた8~10月期の売上高の成長見通し(+2~4%)や市場予想平均(133.1億㌦)も上回りました。
売上高の約4分の3を占める製品売上高が7.5%増加したことが牽引しました。残りの4分の1であるサービスの売上高は0.5%の伸びにとどまりました。
内訳をみてみましょう。
シスコシステムズの製品・サービスカテゴリーは以下のようになっています。
○製品
・Secure, Agile Networks
・Internet for the Future
・Collaboration
・End-to-End Security
・Optimized Application Experiences
○サービス
Secure, Agile Networks
この部門は、スイッチング、エンタープライズ・ルーティング、 ワイヤレス、コンピュートに関連する中核ネットワーク製品の部門です。売上高も製品の約65%を占めています。
この部門の売上高は、Catalyst 9000シリーズといったスイッチング製品やワイヤレス製品が好調だったことから、前年同期比12.0%増加しました。
Internet for the Future
この部門は、ルーティング光ネットワーキング、5G、シリコン、オプティクス製品の部門です。
部門売上高は、ケーブルやオプティクス製品が減少したため、前年同期比4.7%の減少となりました。
Collaboration
この部門の製品は、コラボレーション・デバイス、ミーティング、コーリング、コンタクトセンター製品、CPaaS(Communication Platform as a Service)製品で構成されています。ここには、永久ライセンスやサブスクリプション契約などのソフトウェアも含まれます。
この部門の売上高は、オーディオ・ビデオ・コミュニケーションを統合したミーティング製品の減少が響き、前年同期比2.1%減少しました。
End-to-End Security
この部門は、ネットワークセキュリティ、クラウドセキュリティ、セキュリティエンドポイント、統合脅威管理(Unified Threat Management)、ゼロトラスト(Zero Trust)などセキュリティ関連製品の部門です。
主に統合脅威管理とゼロ・トラスト製品の成長により、部門売上高は前年同期比8.5%増加しました。
Optimized Application Experiences
この部門は、フルスタック観測サービスとクラウドネイティブプラットフォームの提供で構成されています。
ネットワークサービス「ThousandEyes」が好調で、規模はまだ小さいものの、売上高は前年同期比6.6%増加しました。
サービス
ここには、サポート・保守サービス、コンサルティングに重点を置いたアドバイザリー・サービスなど、各種のサービスが含まれます。
ソリューションサポート製品や保守事業は増えたものの、アドバイザリー・サービスやソフトウェアサポート製品が減ったことで、サービス全体の売上高は前年同期比0.5%増にとどまりました。
純利益は減益に
支出面では、物流費などコスト上昇で、製品の売上原価が増加しました。そのため、一部値上げで対応したようですが追い付かず、利益率は若干低下しました。
販売・マーケティング費用が5.7%増、研究開発費が3.9%増など、費用も増加していますが、売上高の伸び以下に収まりました。
この結果、営業利益は35億4000万㌦で前年同期比3.0%増となりました。
ただ、昨年は2億㌦超あった投資収益が、今年は1億㌦超の損失となったことから、純利益は26億7000万㌦で前年同期比10.4%の減益となっています。
調整後(Non-GAAP)の1株当たり利益(EPS)は0.86㌦、前年同期比4.9%の増加となりました。こちらも、8月公表の見通し(0.82~0.84㌦)や市場予想平均(0.85㌦)を上回っています。
今後の見通し
決算発表とあわせて、22年11月~23年1月期と23年7月通期の見通しも発表されています。
23年7月通期見通しについては、前回8月の5~7月期決算発表時に公表していた見通し(上表参照)から上方修正しています。
スコット・ヘレン(Scott Herren)CFOは、「ビジネスモデルの転換で膨大な受注残や残存契約高(RPO)が積みあがっていること、供給制約が緩和されてきていることを反映している」とコメントしています。
まとめ
・2022年8~10月期の売上高は前年比5.7%増
・見通しと市場予想を上回り、四半期ベースの過去最高を更新
・主軸のスイッチング製品やワイヤレス商品が好調
・コスト増でも営業増益維持、投資損失計上で純利益は減益
・売上高、EPSともに23年7月通期見通しを上方修正