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加入者増など背景に収益拡大:ユナイテッドヘルス・グループ決算発表(2021年4~6月期)

日本とは異なり、国民皆保険制度のないアメリカ。
そのため医療費は概して高額であり、2019年度の国民1人当たりの医療費は1万1582㌦(約127万4000円)にも達しています。

公的医療保険制度は、高齢者や障害のある人を対象とした「メディケア」と低所得者層を対象とする「メディケイド」がありますが、それらの対象とならない人は民間の医療保険に入るしかありません。

そんなアメリカの医療保険最大手企業が、ダウ30種平均株価の構成メンバーでもあるユナイテッドヘルス・グループです。

ユナイテッドヘルス・グループってどんな会社

ユナイテッドヘルス・グループは、

・ユナイテッド・ヘルスケア(UnitedHealthcare)
・オプタム(Optum)

という大きな2つのビジネスの柱から成っています。

ユナイテッド・ヘルスケア(UnitedHealthcare)

ユナイテッドヘルスケアは、企業の雇用者や中小企業向けに医療保険・サービスを提供するほか、上記のメディケアやメディケイドの受益者サービスも提供しています。

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具体的には、以下の4つの事業に分かれています。

①UnitedHealthcare Employer&Individual
国内企業や公共部門の雇用者、中小企業、個人消費者向けに、包括的な健康保険プランとサービスを提供しています。
さまざまなプランの医療保険サービスがあり、医療費のほか、薬局処方サービス、提携するネットワークでのケアや予防・健康管理サービスなどが受けられるプログラムなども用意されています。

②UnitedHealthcare Medicare&Retirement
50歳以上の個人に健康と福祉のサービスを提供しています。
メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS:Center for Medicare & Medicaid Services)が運営するメディケア・アドバンテージ・プログラムを通じて、メディケア受益者に医療保険を提供しています。

また、ニーズに合わせて予防ケアプラン、遠隔診療、処方薬給付などのサービスも提供しています。

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③UnitedHealthcare Community&State
州のメディケイドおよびコミュニティプログラムとその参加者に代わって、医療給付プログラムを管理しています。
慢性疾患や障害の有無、子供、妊婦、施設への入所など、さまざまなニーズに対応した医療給付を行っています。

④UnitedHealthcare Global
南米(ブラジル、チリ、コロンビア、ペルー)を中心に、雇用者グループや個人、およびその他の多様なグローバルヘルスビジネスに、医療と歯科の給付、臨床サービス、ケア・福利厚生プランなどを提供しています。

オプタム(Optum)

オプタムは、ITを活用した医療情報サービス、データ分析、ケアサポートなどを提供しているほか、薬剤給付管理(PBM)を含む薬局のネットワークサービスを行っています。

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オプタムの事業は、以下の3つに分かれています。

①Optum Health
個人向けに、さまざまなニーズに対応した医療情報や健康関連情報のほか、ヘルスケアのプラットフォームを提供しています。
また医療提供者向けに、医療専門情報のほか、ITを用いた遠隔医療・モニタリングなどの高度な医療技術サービス、医療費決済のデジタルプラットフォームなども提供しています。

②Optum Insight
病院・医師、ヘルスプラン、州政府、ライフサイエンス企業などに、新しいテクノロジー、情報分析サービス、統合ソリューションなどを提供しています。ライフサイエンス企業向けにソフトウェアや情報製品などの提供も行っています。

③Optum Rx
67,000 以上の小売薬局、複数の宅配薬局、専門薬局、コミュニティ・ヘルス・ファーマシーのネットワークを通じて、薬剤の管理、薬剤師によるケア・サービスを提供しています。

最新の決算動向

7月15日、ユナイテッドヘルス・グループは、2021年4~6月期の四半期決算を発表しました。

(100万㌦)   営業収益  営業利益 純利益 1株当たり利益
2020年4~6月期   62,138   9,241  6,696    7.12㌦
2021年1~3月期   70,196   6,739  4,978    5.31㌦
2021年4~6月期   71,321   5,978  4,372    4.70㌦

営業収益は713億2100万㌦で、前年の同じ時期と比べ14.8%増加しました。

内訳は、保険料収入(Premiums)が8割を占めています。
医療保険からの保険料のほか、Optum Health の一部契約からの収入も含まれるようです。この保険料収入は、前年同期比13.9%増加しました。

プロダクト収入は、Optum Rx の提携薬局や、地域医療機関などのネットワークを通じて販売される医薬品や調剤費用から成っています。プロダクト収入は前年同期比2.3%増にとどまりました。

サービス収入は、医療サービスやケアプログラムなどの有料サービスからの収入です。サービス収入は前年同期比46.8%増加しました。

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支出面では、販売費用や一般管理費などは前年並みだったものの、新型コロナの影響で減少した前年同期の反動で医療費コストが増加しました。

その結果、純利益は43億7200万㌦で、前年同期比34.7%減少しました。
1株当たり利益も4.70㌦で、同34.0%の減少となりました。

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セグメントの状況

前述の通り、ユナイテッドヘルス・グループは、

・ユナイテッド・ヘルスケア(UnitedHealthcare)
・オプタム(Optum)

という2つのビジネスの柱から成っています。

それぞれの収益状況はどうだったのでしょうか。
まず、ユナイテッド・ヘルスケア部門を見てみましょう。

ユナイテッド・ヘルスケア部門の収益は554億7400万㌦で、前年同期比13.0%増加しました。

個人向けのメディケアプランの会員数が増加したことから「Employer & Individual」事業の収益が15.3%増、ハワイ州とオハイオ州でメディケイド契約を獲得したことにより「Community & State」事業の収益が13.8%増となったことなどが要因として挙げられています。

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オプタム部門はどうだったでしょうか。

オプタム部門の収益は、383億300万㌦で前年同期比17.2%の増加となりました。

部門収益の約6割を占めるPBM事業(OptumRx)の収益は前年同期比5.4%増と安定した増加を示しました。これに対し「Optum Health」事業は、サービス提供者数が大幅に増え、提携医師も増加したことなどを背景に、収益は45.5%増と大幅な増加を見せています。

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今後の見通し

21年7~9月期、あるいは2021年通期の業績に関する見通しに関しては、公表されていません。

Yahoo Financeのアナリストの予想を見てみると(7/22、20時時点)、以下のようになっています。

<21年7~9月期>
営業収益:平均707.3億㌦(697.8~720.0億㌦)、20年実績651.1億㌦
1株利益:平均4.46㌦(4.18~476㌦)、20年実績3.51㌦
<21年通期>
営業収益:平均2812.8億㌦(2775.0~2837.3億㌦)、20年実績2571.4億㌦
1株利益:平均18.57㌦(18.30~19.22㌦)、20年実績16.88㌦

7~9月期、そして下期も引き続き、順調な収益の拡大が予想されています。

ペロトンと提携発表

7月20日にオンラインフィットネスのペロトン・インタラクティブとの提携を発表しました。

ユナイテッド・ヘルスケアの保険に加入している人、あるいは新規に加入する人は、9月1日以降、ペロトンのサブスクリプションプログラムに1年間(オール・アクセスメンバーは4か月間)追加費用なしで登録・参加することができるという内容です。

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まとめ

・ダウ30種平均株価の構成企業でもある医療保険最大手
・医療保険・サービスと、PBMなど医療情報提供の2本柱
・2021年4~6月期の営業収益は前年同期比14.8%増加
・医療コスト増で1株当たり利益は4.70ドル、34%減少
・21年下半期も順調な見通し、通期で増収増益予想


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