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バンク・オブ・アメリカ決算発表(2022年10~12月期、2022年):利上げ追い風で収益拡大、先行き懸念で貸倒引当金手厚く

2022年10~12月期の決算発表が始まりました。
アメリカ企業は12月決算企業が多いため、あわせて2022年の通期決算も発表されます。

今回も、その先陣を切って大手金融機関が決算を発表しました。
その一つ、バンク・オブ・アメリカの決算を見てみましょう。

10~12月期決算は増収増益

バンク・オブ・アメリカは、アメリカの3大銀行グループの一つで、「バンカメ」の愛称で知られています。

ノースカロライナ州を地盤としていたネーションズバンクが1998年にバンクアメリカを吸収合併して誕生しました。その後2009年に、リーマンショックで経営危機に陥ったメリルリンチを買収し、世界でも有数の金融グループに拡大しました。

まず、10~12月期の四半期決算をみてみましょう。

 (100万㌦)     営業収益   純利益  1株当たり利益
2021年10~12月期    22,060   7,013    0.82㌦
2022年  1~  3月期    23,228   7,067    0.80㌦
2022年  4~  6月期    22,688   6,247    0.73㌦
2022年  7~  9月期    24,502   7,082    0.81㌦
2022年10~12月期     24,532  7,132    0.85㌦

一般企業の売上高にあたる営業収益は245億3200万㌦で、前年の同じ時期と比べ11.2%増加しました。

内訳としては、金利収入が146億8100万㌦で前年同期比28.7%増えた一方、非金利収入は98億5100万㌦で同7.5%減少しました。
金利収入の増加は、FRBが相次いで利上げを実施したことが大きく影響しました。非金利収入の減少は、その大半を占める各種手数料収入(Fees and commissions)が23.7%減と大きく減ったことが響きました。マーケットメイク関連(Market making and similar activities)は昨年の10~12月期に大きく落ち込んだ反動もあり、前年同期比2.3倍と回復しましたが、全体の引き上げには至りませんでした。

支出面では、設備関連や取引関連の費用は抑えたものの、人件費のほか情報関連費用が増加したことから、全体では5.5%増加しました。
また、先行きの景気減速に備え、貸倒引当金を10.9億㌦積み増しています。

その結果、純利益は71億3200万㌦となり、前年同期比1.7%増と小幅な増加にとどまりました。
1株当たり利益(EPS)は、前年同期比3.7%増の0.85㌦となりました。

セグメント別の動向

バンク・オブ・アメリカは総合銀行として幅広い業務を行っています。
そのため、以下の4つのセグメントに分かれています。

・Consumer Banking(CB)
・Global Wealth and Investment Management(GWIM)
・Global Banking(GB)
・Global Markets(GM)

Consumer Banking

Consumer Banking は、預金と消費者金融から構成され、消費者や中小企業に対し、多様なクレジット、銀行、投資商品・サービスを提供しています。

預金残高やローン残高、クレジットカードの使用額が増加したことから、この部門の営業収益は107億8200万㌦、前年同期比21.0%増と大きく増加しました。
費用の増加や貸倒引当金を積み増ししましたが、部門純利益は前年同期比で14.5%増の35億7700万㌦となり、過去最高を更新しました。

Global Wealth and Investment Management

GWIM は、Merrill Wealth Management (MWM) と Bank of America Private Bank(BAPB)の2つの事業で構成されています。

MWM は、投資可能資産 25 万㌦以上の富裕層顧客を中心に、ファイナンシャル・アドバイザーのネットワークを通じて、投資管理、証券取引、銀行業務、リタイヤメント商品など、顧客ニーズに合わせたソリューションを提供しています。
BAPBは、富裕層および超富裕層顧客を対象とした包括的なウェルス・マネジメント・ソリューションを提供するとともに、特殊資産管理サービスを含む顧客の資産形成、投資管理、信託、銀行業務のニーズに対応するカスタマイズ・ソリューションを提供しています。

顧客預かり資産が減少し、関連する手数料などの収益は減りましたが、ローンや融資の金利収入が増えたことで相殺され、この部門の営業収益は前年同期比0.2%増と横ばいを維持しました。
一方で、額はそれほど大きくありませんが貸倒引当金を積んだことで、部門純利益は2.1%減とわずかに減益となりました。

Global Banking

Global Banking は、①商業ローン、リース、コミットメントファシリティ、貿易金融、商業用不動産融資、資産担保融資など幅広い融資関連商品・サービス、②統合運転資金管理と外国為替やマーチャント・サービスなどのトレジャリー・ソリューション、③債券や株式の引受・販売、合併関連およびその他のアドバイザリーサービスなど、投資銀行業務に関連する商品を提供しています。

この部門の営業収益は、トレジャリー・ソリューションや投資銀行の手数料が減少しましたが、ローン残高と金利上昇による金利収入が増えたことで、前年同期比9.0%増となりました。
専門人材の雇用増などによる支出増に加え、この部門でも貸倒引当金を積み増した影響で、部門純利益は4.8%減少しました。

Global Markets

Global Markets は、債券・クレジット・為替・コモディティ(FICC)と株式の各ビジネスにおいて、機関投資家向けにセールスやトレーディング、リサーチなどのサービスを提供しています。また、マーケット・メイキング、資金調達、証券決済、カストディ・サービスなども提供しています。

この部門の営業収益は、投資銀行関連の手数料の減収をセールス・トレーディング収益の増加でカバーし、前年同期比1.1%増となりました。なお、セールス・トレーディング収益は、株式関連はほぼ横ばいでしたが、FICCが大幅に伸びたことが寄与しました。
ただ、人員増や情報関連投資の拡大によるコスト増により、部門純利益は24.7%減となりました。

2022年通期決算は?

2022年通期決算についてもご紹介しておきましょう。

(100万㌦)  営業収益    純利益  1株当たり利益
 2018年    91,020   28,147    2.61㌦
 2019年    91,244   27,430    2.75㌦
 2020年    85,528   17,894    1.87㌦
 
2021年    89,113   31,978    3.57㌦
 2022年      94,950    27,528    3.19㌦

営業収益は、手数料収入の落ち込み(前年比15.5%減)が響き非金利収入は減収となりましたが、金利収入が大きく増えた(同22.2%増)ことで、全体では6.6%増加しました。
ただ、コスト増に加え、貸倒引当金を25.4億㌦積み増し(前年は45.9億㌦取り崩し)たことから、純利益は13.9%減少しました。

今後の見通し

会社からの公表された見通しはありません。
参考までに、Yahoo Financeのアナリストの予想を見てみると、以下のようになっています(1/20、18時時点)。

<23年1~3月期>
営業収益:平均255.3億㌦(266.3~248.9億㌦)、22年1~3月実績232.3億㌦
1株利益:平均0.85㌦(0.73~0.96㌦)、22年1~3月期実績0.80㌦
<23年通期>
営業収益:平均1,017.4億㌦(991.4~1,052.7億㌦)、22年実績949.5億㌦
1株利益:平均3.51㌦(3.00~3.95㌦)、22年実績3.19㌦

収益の拡大は見込める一方で、利益に関しては弱気から強気まで見方は異なっていることがわかります。

まとめ

・2009年にメリルリンチ買収し、世界有数の金融機関に
・2022年10~12月期の営業収益は前年同期比11.2%増加
・投資銀行など手数料収入減ったが、金利収入が大幅増
・貸倒引当金積み増した影響、純利益は1.7%増にとどまる
・23年通期予想は営業収益増加、EPSは強弱まちまち

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