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アメリカにおける賭博と法律

*本ページはアメリカで勤務している駐在員に向けた投稿です。もちろんアメリカや法律に興味がある方もぜひご覧ください。

アメリカ合衆国における賭博に関する法律は、連邦法と州法の両方によって規制されています。連邦法では、賭博に関わる特定の行為を禁止している一方で、多くの賭博に関する規制は州に委ねられています。これは、アメリカの連邦制の下で、各州が自州の法律を定める権利を有しているためです。

連邦法

連邦法では、以下のような賭博に関連する法律が存在します:

  • The Wire Act(1961年):州を越える通信設備を使ったスポーツ賭博を禁止しています。

  • The Professional and Amateur Sports Protection Act(PASPA)(1992年):スポーツ賭博をほとんどの州で禁止していましたが、2018年に米国最高裁判所によって無効とされました。

  • The Unlawful Internet Gambling Enforcement Act(UIGEA)(2006年):オンライン賭博サイトへの資金の送金を制限しています。

州法

当然各州では、賭博の合法性、形態、規制が大きく異なります。以下は一例です。

  • ネバダ州:ラスベガスやリノといった都市で有名な、広範囲にわたるカジノ賭博が合法です。

  • ニュージャージー州:アトランティックシティにおけるカジノ賭博のほか、オンライン賭博も合法化しています。

  • ユタ州:賭博は一切合法ではありません。

さらに、一部の州では宝くじや競馬などの特定の形態の賭博は合法である一方、カジノ賭博は禁止されています。また、近年ではオンライン賭博やスポーツベッティングの合法化が進んでいる州もあります。

ジョージア州

ジョージア州における賭博法はアメリカ合衆国内で最も厳しい部類に属しており、ほとんどの賭博行為が非合法です。
ジョージア州の賭博の定義は広範にわたり、事実上あらゆるイベントやゲームへの賭けを含んでいます。これにはボール、カード、またはサイコロを使用して行われるゲームも含まれます。このため、友人や家族間で行われるホームポーカーゲームであっても違法となります。賭博を行うこと自体が軽犯罪にあたり、賭博のビジネスを行うことは重罪として扱われます​​​​。

州の法律では、賭博の広範な定義の下、特定の条件を満たすビンゴや抽選が合法化されています。ただし、ビンゴについてはレクリエーショナルビンゴ(参加費用が無料で、各ゲームの賞品が15ドル以下の非現金賞品の場合)のみが許可されており、それ以外の形態のビンゴは非営利団体によってライセンスが与えられた場合に限り合法です。また、ジョージア州では州運営の宝くじが存在していますが、これは特別な法律によって設立されたものです​​。

オンライン賭博に関しては、ジョージア州法は海外に拠点を置く合法的にライセンスされたオンライン賭博サイトの利用を禁じていないため、州民や訪問者はこれらのサイトを利用することができます。ただし、これらのサイトはアメリカ合衆国外の規制地域内にあり、厳しい規制の監督下にあることが条件です​​。カジノに関しては、ジョージア州内に陸上のカジノは存在しませんが、国際水域でカジノゲームを提供する2隻のクルーズ船が合法的に運営されています。これらの船は、海岸から3マイル離れた場所でカジノゲームを合法的に提供することができます​​。

歴史的な最高裁の判例

2018年、アメリカ合衆国最高裁判所は、PASPA(プロとアマチュアのスポーツ保護法)という、ほぼ全ての州でスポーツ賭博を禁じていた1992年の連邦法を無効とする歴史的判断を下しました。この法律は、ネバダ州、オレゴン州、モンタナ州、デラウェア州を除く全ての州でスポーツ賭博を非合法にしていましたが、この判決により、各州は自らの判断でスポーツ賭博を合法化することが可能となりました。

最高裁は、PASPAが州に対してスポーツ賭博を認可することを禁じる条項は、州の立法府に直接命令を出すことを連邦政府に許さない「反徴用理論」に違反すると判断しました。この原則は、憲法に基づいて州の主権を保護するものです。結果として、PASPAのこの部分は憲法に違反していると裁定され、これに基づいて、法律全体が無効とされました。最高裁は、スポーツ賭博に関する法律は、連邦政府ではなく各州が決定すべき事項であると明言しました​​​​​​。

6年に及ぶ法廷闘争の後に、最高裁判所は下級審の判決を破棄し、PASPAは反徴用理論(州及び州の法律制定の能力に対する連邦議会の権限の限界を認める理論)の侵害であり違憲であるというニュージャージー州の主張を支持した。最高裁は、「連邦議会が憲法上ある行為を要求したり、禁止する法律を制定することができる場合であっても、州に対してその行為を直接強制する権限は有していない」と結論付けた。「憲法は連邦議会に対して、州ではなく、個人を規制する権限を与えた」と述べた後、最高裁は「連邦議会はスポーツ賭博を直接規制することはできるが、もしそうしないことを選択したときは、各州が自らの判断で自由に行動できる」と締めくくった。

https://www.quinnjapan.com/news/pickout/181025.html

この判決は、アメリカでのスポーツ賭博の合法化に向けた道を開いたもので、ニュージャージー州をはじめとする多くの州で、合法的なスポーツ賭博市場の設立へと繋がっています。最高裁の決定は、スポーツ賭博を巡る長年の議論に終止符を打ち、今後、多くの州でスポーツ賭博が合法化される可能性を高めました。

PASPAの違憲判決への流れ

PASPA(プロとアマチュアのスポーツ保護法)の違憲判決への流れは、数年にわたる法的闘争といくつかの重要な段階を経ています。ここでは、そのプロセスを簡潔に説明します:

  1. PASPAの制定(1992年):アメリカ合衆国では、1992年にPASPAが制定され、スポーツ賭博をほぼ全面的に禁止しました。ただし、一部の州(ネバダ州、オレゴン州、モンタナ州、デラウェア州)は例外とされました。

  2. ニュージャージー州の挑戦(2011年以降):ニュージャージー州は2011年にスポーツ賭博を合法化するための住民投票を行い、続いて2012年にスポーツ賭博を合法化する法律を制定しました。しかし、この動きはPASPAに違反するとして、主要なスポーツリーグによって訴訟が起こされました。

  3. 連邦裁判所の判断(2012年-2017年):ニュージャージー州の法律は、下級裁判所と上訴裁判所によってPASPAに違反していると判断され、スポーツ賭博の合法化の試みは阻止されました。

  4. 最高裁判所の審理(2017年-2018年):ニュージャージー州は、PASPAが州の権限を侵害すると主張して最高裁判所に上訴しました。最高裁はこの案件を受理し、「Murphy v. National Collegiate Athletic Association」として知られるようになりました。

  5. 最高裁判所の判決(2018年5月14日):最高裁判所は、PASPAが「反指揮取締原則」に違反していると判断し、PASPAを違憲としました。この原則は、連邦政府が州に対して直接命令を出すことを禁じる憲法上の原則です。最高裁は、PASPAが州にスポーツ賭博を「認可しないように」命じることは、この原則に反すると裁定しました​​。

  6. 影響:この判決により、各州は自らの裁量でスポーツ賭博を合法化することが可能となり、アメリカ合衆国内でスポーツ賭博市場が拡大し始めました。

この判決は、スポーツ賭博に関するアメリカの法律における大きな転換点となり、多くの州で合法化の動きが加速しました。

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