”技能伝承” ベテランの気持ちはいかに?
お疲れ様です。工場などで働いている若い方であれば少しは聞いたことがあるかもしれませんが、技能伝承っていう言葉がありますよね。今回は、そのリアルな現状について書いていきたいと思います。
大体なんでしょうか?技能伝承って?簡単にまとめると、
「ベテランの技術者の方のノウハウを若手に伝える」
ということなんですよね。ただあまりその具体的な内容とか、どのようにして実現しているのか、あまり聞いたことがないですよね?
全国津々浦々お客様を訪問してお話を伺ったりしてわかってきたことをまとめていきます。今回はベテランについて書きたいと思います。
特徴その①
「ベテランの人は無意識に仕事をしている」
まず第一に、ベテランの人は無意識に仕事をしているということです。工場ならまわりから一目置かれるようなベテランの人、職場に一人くらいいますよね?実はその人たちは、もうすでに毎回毎回考えながら、一つ一つ仕事をしていないんです。もう彼らにしてみれば多少のトラブルだってもう日常業務の一つといってもよいかもしれません。反射的にいろいろ動いて解決してしまうわけです。
特徴その②
「何を伝えればよいかわからない」
なので、実はベテランの人は技能伝承と言われても、何を伝えればよいのかがわからないみたいです。
たとえば自動車の運転免許を取るときは、教官に教えられて、「はい、左折するときは、まずウインカーを出して~、目視で死角のところにバイクとかいないか確認して~、問題なければ速やかに左に寄せてから~」なんてことしますよね。要するに作業する順番を言葉にするわけです。
免許を手に入れて1年もたってしまえば、自分で車を運転するときにいちいちそんな手順を口に出さないですよね?
設備を担当して20年たったような人はもう完全に手順をわかりやすく口にすることを忘れています。
特徴その③
非言語コミュニケーション
いわば自動車の運転と一緒でベテランの人は、もう無意識に仕事ができてしまっているんです。イマイチかみ合わないことはありませんか?
私は話を聞いていても、いわゆるベテランの方と話すときは、初対面だと「…何をおっしゃっているのでしょうか?」と思うことはあります。これがその人との付き合いが長くなってくると「なんとなくこういうことをおっしゃっているんだろうな」とわかるようになります。
家族の間でなんとなく思いが伝わるという状況に似ています。例えば「洗物してよ!」とは言われないけどしてほしそうにしている時はありませんか?(これが非言語コミュニケーション)
ベテランの人が悪いのではなく、ずっと無意識に自動車を運転することに慣れていて、「いざ運転の仕方教えて」と言われても何から教えてあげれば良いかわからないですよね。だれかに自分のやっている仕事について、伝えたりするチャンスがこれまであまりなかったのかもしれません。
特徴その④
たたき上げで、厳しめです
また、ベテランの人はたたき上げみたいな人が多いです。誰かに丁寧に教えてもらったり、学校で勉強したりという感じで身に着けたものではなさそうです。どちらかといえば、実践によってさまざまな現場経験、トラブルを乗り越えて、その過程で自分の地となり肉となりというプロセスで物事を吸収しているようです。
保全業務でいえば、日常点検、定期検査の計画、準備、実施、トラブルの対応などといった仕事を通じて身につけているようです。まさに点検報告書、定期検査の記録、トラブル報告書などは、ベテランのノウハウが書き写されたものと言っても良いかもしれません。なので過去の資料はノウハウなわけです。詳しくはこちらを読んでください。
経験から身につける事に自信を持っているので、業務はすべて自分が経験したことをもとに進めなくてはならないという思いが強いです。
なので当然ながら教えるための教材というかノウハウをまとめたものを資料にしたり、講義をしたりということができない人が多いようですね。あまり体系的に若手に何かを説明したりしていないようです。
特徴その⑤
イノベーターである
そもそもイノベーターの定義があいまいなのですが、ここでは「自分自身で試行錯誤を繰り返し、従来になかった知識を習得し、それによって価値を創出する人」という定義で考えています。
本当のベテランさんは、考えが柔軟で、手を動かし、独創的に考え、行動力がある人が多いです。今の時代を生きていたら、起業家など全く別の立場にいたかもしれません。
特徴その⑥
若手を見て”ふがいない”と思っている
自分が苦労してスキルを身に着けてきたということもあり、若手に対して厳しいことを言ったりもします。「若手は図面もみないし、過去の履歴も調べないし、現場でモノもみないし、そもそもやる気がない!」とか言っていたりして、けっこう厳しめのコメントもあります。リゲインのCMでおなじみ、24時間働けますか状態で苦労してきた方々ですからついつい若い世代にそんな風に思ってしまっているのかも知れませんね。
以上が、ベテランの人の気持ちでした。
若手のみなさん、なかなかつらいですよね。すごい人たちですよね。ほんと。こんな人たちを相手に、技能伝承うまくいくでしょうか?
個人的には世代によって優劣があるわけがないと思っています。たとえば1960年代生まれの人がすごく優秀で、1990年生まれの人がそうじゃないのか?そんなことないですよね!
きっと何かがうまくかみ合っていないだけです。一緒に考えましょう!次回は若手の気持ちでも書こうと思います。