カカオポッドの輸入について
カカオポッドの輸入に成功したので、その忘備録として書く。
今回は通関を自分で通した。同じ手法で他の果物も輸入ができるので、果物を個人輸入したい人は参考にどうぞ。
業者の選定
ここが一番大事。植物検疫証明書をいい加減に書く業者だと、金をドブに捨てることになる。といっても、どの業者なら書類をしっかり書いてくれるかは運次第。個人輸入なんてそんなもん。
某国の果物商社に「サンプルとしてカカオポッドの輸入をしたいんだけど、サンプルを売ってくれ」と連絡をしたら、日本行きの定期便の貨物の枠にカカオポッドをねじ込んでくれた。
日本とのやり取りがある業者だと、毎週何曜日に日本行の定期便で貨物の枠を確保している。そこに分乗する形でサンプルを送ってもらった。
この形だと、到着がものすごい早い。入金をして3日で貨物が日本に到着した。
海外通販に時間がかかるのは
荷送人がFedExやDHLなど運送会社に集荷を依頼
↓
運送会社の物流拠点に荷物を送る
↓
物流拠点から現地の空港へ送る
↓
現地の空港から日本の空港へ飛行機を飛ばす
↓
日本に着いたら、その荷物を通関手続きする
↓
通関を終えた荷物を日本国内の物流拠点に送る
↓
物流拠点から各個人の家にヤマトや佐川が送る
この形を取るからである。
定期便の枠を確保している業者なら、手続きをショートカットできる。
なお、海外の業者は返事が早い傾向にある。
金さえ払えばお客様。個人の裁量が大きいのか、最小限のやり取りで取引が成立する。交渉次第でどうにかなる部分が大きい。
海外送金について
今回は米国の銀行口座を持っている業者だったので、ACH送金で送金した。
ACH送金だと、大手メガバンクの海外送金より手数料が安い。
SWIFTや電信送金より手数料が1,200円くらい安い。ランチ一回分。
ACH送金だと、国内の指定された銀行口座に振り込めば後はWiseが差金決済で送金してくれる。
InvoiceとAWBについて
業者が荷物を発送するとInvoice、AWB(Air way bill)、植物検疫証明書をPDFで送ってくれる。
これを税関へ行く時に印刷して持っていく。
大事なのは印刷して紙媒体で持っていくということ。税関と上屋は紙媒体でやり取りすることが多い。
個々の書類について詳しくわかっていなくても、税関や上屋で手続きをする時に印刷した書類を一式渡せば職員の方が「次の手順はこうしてください」と教えてくれる。流れに身を任せろ。
AWBのトラッキングナンバーを見れば、今荷物がどうなっているかがわかる。
https://www.jal.co.jp/jalcargo/inter/awb/
JALだとこんな感じ。AWBにどこの航空会社が荷物を請け負ったのかが書いてあるので、該当の航空会社のページを探す。
「〇〇(航空会社名) tracking」とググると各航空会社のトラッキングページが出てくる。
今回は追跡で荷物が空港に到着した翌日の夜に上屋からメールで連絡が来た。
「どのように通関されますか?」と聞かれたので「自分で通関します」と答える。「初めての輸入で至らない点もありますが、よろしくお願いいたします」と一言添えて返信しよう。
通関業者は物量の少ない個人を相手にすることはほとんどないため、十中八九自分で通関することになる。
いざ貨物地区へ
成田の貨物地区へ向かう。
今回は個人輸入でミカン箱一つ分くらいの分量だったので、電車で空港第2ビル駅まで向かう。
貨物地区はわかりにくい位置にあるので、成田空港の案内カウンターで「貨物地区はどちらですか?」と聞く。
貨物地区への看板は随所にあるので、看板に沿って進む。
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ゲートで身分証を求められるので、免許証を提示する。
ここで入場記録の紙とビジターの首からさげる許可証を受け取る。
係員に「〇〇の上屋へ行きます」と言えば、上屋の事務所の場所を教えてくれるのでそれに沿って進む。
なお、航空会社によってどこの上屋に荷物が入るかはだいたいわかるので事前に上屋の位置を調べておくとスムーズに動ける。
上屋で手続き
上屋に到着。受付で「荷物を取りに来ました」と言って、AWBとInvoiceを渡す。
色々と手続きした後に封筒を渡される。
この封筒を持って税関へ行く。
相手の指示に従っていれば、事は進んでいくので身構えなくても大丈夫。
感覚としては役所の手続きに近い。
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税関へ
税関の建物に入る。成田の税関は土日、年末年始もやっているので荷物がいつ到着しても大丈夫。
税関の受付窓口で「カカオポッドの受け取りに来ました」と上屋で貰った封筒を渡して伝えた。
食品届については「サンプルで輸入したので、食品届は不要だと植物防疫所から回答を貰っている」と答えたらよしになった。
販売を行う場合、食品届の申請が必要であるが個人使用の範疇である場合は食品届の申請は不要。
食品届の管轄は厚生労働省であるため、書類の申請をする部署が変わる。
いわゆる縦割り行政。
カカオポッドは植物検疫を検疫所で受ける必要がある。
行った時は土日で職員が比較的暇だったのか、職員の方に植物検疫所まで案内してもらう。
税関は財務省の管轄であるが、植物検疫所は農水省の管轄であるため書類の手続きが発生する度に階を往復する必要がある。通関手続きをする時は運動靴で来よう。
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検疫所へ
植物検疫所でInvoice、AWB、植物検疫証明書を一式渡す。
コピーの控えを取ってもらう。この時に植物検疫証明書が有効なものであるかの確認が行われる。
書類を何枚か書くので、職員の指示に従う。
荷物を植物検疫の検査室に動かすように言われたので、上屋に伝えるため上屋へ行く。
職員がどこの検査室に動かすかを教えてくれるので、その番号をメモする。
上屋で荷物を検疫所へ動かしてもらう
上屋に戻って「植物検疫のために荷物を動かしてほしい」と伝える。
上屋からどこか場所に動かすたびに料金が発生する。たとえそれが徒歩で動かせる距離でもである。
輸入貨物は全て、税関が許可したものでないと輸入ができないのだ。
貨物地区(保税地域)に荷物がある間は個人の所有物ではない。
荷物を動かしてもらったら、税関の建物に戻って検疫所の受付に向かう。
検査立ち合い
検疫所の受付に行ったら「荷物を検査室に運んだ」と職員に伝える。
職員について行って、検査の立ち合いをする。
この時に「荷物を開封してください」と職員に言われるので、開封する。
開封するためのハサミを必ず持っていくこと。
植物検疫所は農水省の管轄であるため、貨物を開封する権利はない。
税関は財務省の管轄であり、税関の許可がないと貨物の輸入はできないため貨物を開封する権利がある。
管轄する省の違いによって貨物に対する対応が変わる。
職員がカカオポッドに虫が湧いていないか目視で確認する。
検査が終わって、検疫所に戻ったら検査終了証明書が渡される。
この書類を持って税関へ向かう。
再度税関へ
税関で「植物検疫が終わりました」と伝える。
税関に輸入申告書を書くように伝えられる。パソコンで輸入申告書を記入する。「輸入するの初めてです」と言えば、職員の方が付きっきりで教えてくれる。わからないものはわからないと正直に言うのだ。
書類の記入が終わってしばらく待つ。
税関が検査をしたいと言ってきたので、荷物を税関の検査場に移すために再び上屋へ行く。
初めての輸入だと十中八九、税関の検査が入る。密輸防止である。
税関の検査場に荷物を動かしてほしいと上屋へ伝える
上屋へ戻って「税関の検査場へ荷物を動かしてほしい」と伝える。
受け取った書類を全部出せば、上屋の社員さんが必要な書類だけ受け取って税関に連絡してくれる。
どの書類を出すかわからなかったら、全部の書類を出せばよい。
「お昼休憩終わってから税関の検査を立ち会いしてほしい」と伝えられたので、お昼ご飯を食べに行く。
三久楽食堂
一回、貨物地区の外に出るのも嫌なので上屋の社員さんに「この辺りでごはんを食べられるところありますか?」と聞いたら教えてもらった。
三久楽食堂は関係者以外は入れない場所でレアな食堂。
ごはんも美味しかった。
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腹ごしらえも済んで上屋へ戻った。
税関の検査
上屋の社員さんがちょうど税関の検査所に荷物を運んでいた。
社員さんについていく。
税関職員も来ており、荷物をX線検査で受ける。
この時に職員から「なんでこれを輸入したのか」を聞かれるので、正直に答える。ここでしどろもどろになると怪しまれる。
聞かれたことに答えればよい。
検査も無事合格。
税関へ戻る。
納税
税関へ戻ったら、関税と地方消費税の支払いを行う。
税関職員に「なんでこの品目番号(その他果実にしていた)?」と聞かれたので、「言われた通りにやった」と答えた。
どうやらカカオポッドが珍しくて、カカオ豆(品目番号1801.00)なのかその他果実(品目番号0810.90 )なのかで議論が生じた。
検査に立ち会った職員が「果実だった。中身を割っていない丸い果実だった」と証言したことで、その他果実で落ち着いた。
どの品目番号が割り振られるのかは税関職員のさじ加減によるとわかった。
カカオポッドを輸入する物好きはほとんどいないのだ。
法律の前例主義っぽさも感じた。
関税と地方消費税の支払いを行う。
税金の支払いと上屋の代金の支払いは現金であるため、現金は多めに持っていく。
関税は輸入した総額(運賃込み)にかかるので、結構な支払額になった。
税金を支払ったら、税関から「荷物を受け取ってもいいですよ」の許可証が発行される。これを持って上屋へ行く。
税関が許可を出した貨物しか輸入できず、許可を出していない貨物は全て密輸になるというのを覚えておこう。
いざ、受け取り
上屋へ戻って「税関から許可が下りたので荷物の受け取りに来ました」と伝える。
一緒に書類を渡すと、社員さんが貨物の保管料と各検査所への移動代を計算してくれる。
保管料と移動代を支払う。
事務所の外に出て「この書類を担当者に見せてください」と言われるので、言われた通りにする。
担当者が既に外にいたので書類を見せる。
台車に荷物を載せて運んできてもらう。書類と荷物の番号が一致しているのを確認したら受け取り完了。
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受け取りが完了した時には感動した。
荷物をエコバッグに入れて、貨物地区を出る。
貨物地区から成田空港に戻ってきた時は別世界のように感じた。
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感想
カカオポッドの輸入でここまで一大行事になるとは思わなかった。
上屋の社員さんも税関や検疫所の職員も皆優しい人ばかりで安心した。
初心者っぽい雰囲気を醸し出しながら、申し出すれば丁寧に対応してくれる(普段出入りしている業者ではないのは雰囲気でわかる)。
日本の物流がいかに優秀かがわかった。
物流の最前線を見られて面白かった。ちょっとした社会科見学。
初めての人は土日に行った方が職員や社員の方々が丁寧に教えてくれる。
卸と小売りの偉大さを知った。中間業者がいるからこそ、消費者はめんどくさい書類のやり取りをせずにお金を払うだけで商品が購入できるのだ。
「輸入は初めてです」と言うのと、書類を求められてどれを出せばいいのかわからない時は書類を全部出せば、相手が必要な書類だけ抜粋して手続きしてくれるのを覚えておけばよい。
通関は面倒であるが、やる気があればどうにかなるレベル。
上屋と税関の往復がキツかった。正直、二度とやりたくないがまたやると思う。
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