石油開発についての本
石油や天然ガス開発についての本を多く読んだので、このあたりで一度まとめる。
石油開発の本は日本だとそんなに多く発行されていない。日本には採算が取れる油田がないのが原因であろう。
昨今のロシア産原油締め出しで原油と天然ガスの先物価格は高騰中、電気代値上がり待ったなしの状態だ。
ここで指を咥えて相場の値上がりを見ているのは相場師としていただけない。混乱に乗じて儲けるのが相場師だ(含み損を抱えたポートフォリオを持ちながら)。
以前、「小型の石油株で遊ぼう!」の記事を書いた。小型の石油株を選ぶ際は企業がどの油田を持っているかが重要になる。
各企業のホームページで持っている鉱区を調べて、当たりそうかどうか考えながら銘柄選びをしていた。
ここで問題が発生した。各企業の出しているレポートの読み方がわからない。なんかどれもすごそうに見える。原油がジャブジャブ出てきそうに見える。石油株で一発当てて大富豪になっている姿も見える!回らないお寿司を食べている自分が見える!
最後の方は願望で幻覚が見えてしまった。話を元に戻そう。
各企業が出しているレポートの見方を習得するには、まず石油開発について勉強する必要があると思ったので本を何冊か読んだ。最初から英語で勉強するよりは、日本語で習得できる知識を習得してから英語を読んだ方がいい。
専門書が多いだけあって、買い揃えるのは大変である。
まあ石油株が当たればこれくらいの投資はたいしたことないので安い投資だ。読む速度が早いなら図書館で借りてくればいい。
鉱区……資源開発をする時は「ここで掘ってもいいですよ」の許可を国から貰って、その範囲内で採掘を行う。例外はアメリカ。アメリカは採掘者と土地所有者間で合意が取れれば採掘ができる。
石油・天然ガス開発のしくみ
石油開発の基礎について一通り網羅されている。技術面の話も財務面の話もバランスよく書いてあり、入門書としては読みやすい。
この本を読んでから他の本を読むと知識の飲み込みが早いと思う。
石油および天然ガスの開発システム
この本も一通り網羅している入門書。こちらは技術よりの本。掘削リグについての話は物理や化学の基礎がわかっていないとキツい(私はよくわからなかった)。
石油工学は物理、化学、地学の知識が幅広く求められる学問。
トコトンやさしい非在来型化石燃料の本
非在来型化石燃料(シェールガスやオイルサンドなど技術やコスト面で昔は採掘できなかった化石燃料のこと)についての本。
水平掘削やフラッキングなどシェール開発についてわかりやすく解説している。イラストがたくさんあるのも読みやすい。
アメリカの独立系石油会社の紹介もしているので、気になる企業名があれば株式を買おう。
シェールガスの開発と化学プロセス
シェールガスとガスから精製される石油製品についての専門書。書いている人が大学教授や企業の研究者なので、専門色がかなり強い。石油製品の話についてはほとんど理解できなかった。有機化学の基礎知識が必要。
石油製品の話はバリバリの有機化学だなと思った。
エネルギー・資源投資の会計実務
鉱山会計学についての本。鉱山会計学とは資源開発に関わる会計のこと。資源開発は開発期間が10年以上かかる、一度に動く金額が桁違いに大きいなど通常の会計とは異なる点がある。
中身はガチガチの専門書なので、軽く読み流して後から「あれはそういうことだったのか」とわかるくらいでちょうどいい。
特別目的会社を設立して本社の財務と分離させる方法は何かに使えそう。
プロジェクト・ファイナンスの実務
インフラ整備、発電所設立、資源開発などの大規模な金額が一度に動くプロジェクトの財務についての本。
プロジェクトの期間が長くなればなるほどリスク(ここでは変動制を指す。危険性ではない)を軽減してプロジェクト完遂まで持っていくようにするのが大切になる。
今まで保険の大切さが理解できていなかったが、この本を読んで保険の大切さが理解できるようになった。手持ちの現金で対処しきれない災害については保険をかけた方がいい。
この考え方は子どもの教育資金にも使える考え方である。子育ては「子どもが大学卒業まで手持ちの現金がショートしないように大学卒業まで持っていくプロジェクト」だと考えれば、株式の運用額や保険をどの程度かければ良いかが判断できる。
将来の大幅な利益を捨ててでも、損失をカバーできる資産運用の方が強い。保険はプットの買いと同じ。
設問式 定期傭船契約の解説
「石油開発の話でなぜ船の本?」と思った方も多いだろう。
判決事例の中で石油タンカーやLNGタンカーについての話があったので紹介する。
傭船契約(船舶を借りて海運事業を行うこと)は動くお金の金額が大きい、資金の回収に時間がかかるなど資源開発と共通する点も多い。考え方や法律については参考になる部分が多い。
海事の法律は英法(イギリスの法律)をベースにしてある。英法は過去の判例を重視する法体系なので、いかに過去の判例を持って自分に有利な論理をするかが重要になる。
似たような判例でも解釈が分かれるのはそういうことだったのかと納得した。
石油の帝国
エクソンモービルはいかにしてオイルメジャーになったかのノンフィクション。世界各地の油田、環境保護活動家との衝突、鉱区の開発、現地政府との交渉など石油産業全般について語っている。
ノンフィクションなので「専門書は難しくてちょっと……」という方にもおすすめ。理系や会計の知識がなくても幾分読みやすい。600ページ以上あるので、途中でダレてくるが600ページの価値はある。
シェール革命
アメリカでシェール開発を行った山師たちのノンフィクション。
アメリカがリーマンショック後に経済の立ち直りが早かったのは、シェール開発でエネルギーのコストが安くなり、製造業がアメリカに回帰して雇用が生まれたからである。シェール開発でも雇用が多く生まれた。
数年赤字を垂れ流し続けても、最後に一発当てれば大金持ちになれるのはアメリカンドリームを感じる。
こういうのを読むと油田を自分で掘ってみたくなるが、途中で飽きて観光だけして帰ってくるのが目に見えるのでやめた。株式を買って誰かに掘らせた方が良い。飽きても大丈夫だし、現金にするのも簡単。
まとめ
専門書が多い。専門書は無理して理解するよりは軽く流し読みして、後から戻ってくる方式の方が苦にならずに読める。どうせ試験勉強でも何でもないので、期日までに覚えておく必要はない。適当に読んでもいい。
専門書に抵抗がある人は「石油の帝国」や「シェール革命」のようなノンフィクションを入口にして勉強すると面白い。別に勉強だと思って読む必要もない。ただの娯楽だ。
石油開発に関する知識が役に立たなくても、独学で知識を身につける作法は生きていく上で腐らない技術である。
皆も石油株を買って石油王になろう!