自作チーズを作ろう~ロックフォール編~
自作チーズを作る怪電波を受信したので、チーズのスターターの輸入をすることにした。正直、個人輸入をしたいだけでチーズ作りは二の次だったのだが、チーズ作りは予想以上に面白いので記事にする。
いつも通り海外サイトを巡回、チーズのスターターを輸出してくれる業者を探して商品を買った。
チーズのスターター(ヨーグルトの種みたいなもの)、カビ菌(青カビと白カビ)、レンネット(牛乳を凝固させるのに使う)を購入。
チーズのスターターもレンネットも動物検疫の対象外なので無許可で輸入が可能。よって今回の輸入は簡単だった。書類の発行を何も考えなくてもよい。送料が少し割高なだけである。
カビ菌はPenicillium roqueforti(ロックフォールチーズに使うカビ菌。青カビ)とPenicillium camemberti(カマンベールチーズに使うカビ菌。白カビ)を購入。今回は青カビチーズを作りたいのでPenicillium roquefortiを使う。
まずはスターター
低温殺菌牛乳を近所のスーパーで買ってくる。
ここで重要なのは"低温殺菌"牛乳でないと牛乳が凝固しない点である。
高温殺菌だとリン酸とカルシウムイオンが非常に力強い結合をしてしまい、牛乳が凝固しなくなる。安値で売っている牛乳は高温殺菌牛乳なので注意。
低温殺菌牛乳は成城石井などの少し高級スーパーならだいたい売っている。値段も他の牛乳より高いのですぐわかる。
パッケージに「65℃で殺菌」と書いてあれば低温殺菌牛乳なのでそれを買う。
鍋に低温殺菌牛乳を全部投入し、35~40℃の温度で温める。
温度は爬虫類用のサーモガンで適当に測る。37℃くらいになったら機器の精度の悪さを加味して火を止めた。機器が37℃を表示したら恐らく40℃にはなっていると判断。
スターターの封を開けた瞬間、チーズの匂いがしたのでチーズ作りができるのを確信。
スターターを耳かき1杯分牛乳に入れる。真面目に計量はせずに百均の耳かきですくう。この時に薬包紙代わりにキッチンペーパーを使う。
Penicillium roquefortiを耳かき0.5杯分牛乳に入れる。
"青"カビと言っている割に色が真っ黒で驚いた。予想以上に黒かった。
鍋を37℃付近を維持できるように時々加熱して一時間放置。
この時に乳酸菌に仕事をしてもらう。乳酸発酵の過程である。
凝固させよう
一時間経ったらレンネットの錠剤を入れる。
買った錠剤は1/4等分しやすいように切れ込みが入っている。
購入サイト曰く、1錠で13ガロン、1/4錠で4ガロンの牛乳を凝固できるとのこと。
1/4にカットしてそれを更に割る。当然、綺麗に割れないので適当に割って水に溶かす。体感だと1/12錠くらいは入れたと思う。
牛乳1リットルに対して1ガロン(3.7リットル)相当を固めるのはオーバーキルだが、レンネットの量が足りなくて凝固しなかった場合が悲惨なので少し多めに入れる。
ここで凝固しないとカビ菌入りの牛乳を1リットル飲むはめになる。
牛乳が37℃くらいになったのを確認して、水に溶かしたレンネットを牛乳に入れる。素早く二回かき混ぜたら放置する。この時に振動を与えると凝固しなくなるので注意。
コンロの周りに近づく人間を威嚇なしで射撃するくらいの気概は欲しい。
ホエーを排出させる
一時間後、牛乳が凝固してカードになった。ここまで来れば一安心である。
レンネットを使うとプリンくらいの固さに固まるのに驚いた。レモン汁で固めた時は「カード……?」くらいだったのが、レンネットだと「カード!!!」くらいの固さになる。やっぱり"本物"のレンネットにはかなわんのじゃけぇ。所詮レモン汁は"まがい物"じゃけぇ。
カードをさいの目に切ってホエーを排出させる。15分くらい放置する。
水切りをしよう
15分後、適当にカードをかき混ぜる。かき混ぜることでホエーの排出を促す。かき混ぜる→放置→かき混ぜるの工程を繰り返す。この辺は適当。
めんどくさいならさっさと水切りしてもよい。
ザルとボウルに布を敷いてカードとホエーを投入。
ボウルに溜まったホエーも飲むのがSDGs。
チーズのスターターを使うとホエーが甘いとわかった。
乳酸菌をヨーグルト由来にするとヨーグルトの酸っぱさがホエーに残る。
チーズのスターターだとヨーグルトの酸味がない。
ホエーは牛乳の90%を占めるので、1L固めたらホエーは900mLも出る。
全部ホエーを飲んでいたのでお腹がちゃぽちゃぽになった。
マメにボウルに溜まったホエーを飲んで、できる限り水切りを行う。
加塩処理
適当に水切りをしたら塩を添加する。塩を加えてカードの脱水を促す。
腐敗するのが最悪なので、塩をこれでもかというくらい入れる。
なお乳酸菌は耐塩性が高いので馬鹿みたいに塩を加えてもよい。
塩漬けで死ぬような乳酸菌はどうせどこかで死ぬのでとどめを早く刺してやろう。
レモン汁で固めた時よりレンネットで固めた時の方が綺麗に布から剥せたのでチーズの歩留まりが良くなると判明。
包んだ布で形を整えたら、洗濯ネットとサイザル麻の縄で作った「自重脱水マシーン」にチーズを入れる。
これを風呂場に吊るす(外が雨だったので風呂場にした。夜間の気温が10~15℃程度なら外でもよい)。夜寝る前に布を取り替えて一晩放置。
一晩放置した
いい感じに水分が抜けてきた。
ポロポロ崩れる紙粘土くらいの固さ。
ここで塩水に浸す。加塩処理は塩を塗りたくる乾塩法と、塩水に浸すブライン法の二つがある。今回はブライン法を試すことにした。
ボウルに塩水を張ってチーズを投入。
しかし、ここで事件が発生。
チーズがポロポロ崩れてきた。
なんてこった!
すぐにチーズを救出、ザルに布を敷いてボウルの中身をぶちまける。
折角脱水したのにまた水分を吸ってしまったが、どうせ塩は追加で加えるのでよしとしよう。
ブライン法は諦めて乾塩法を採用することにした。
布越しに水分を絞って形を整えたら、表面に塩を振る。
タッパーにキッチンペーパーを敷いて冷蔵庫の上段で熟成させる。
我が家の冷蔵庫は上段の温度が7~9℃くらいだったので熟成がギリギリできると判断。正直、ワインクーラーを使った方が温度管理は正確(ワインクーラーなら15℃を維持できるので熟成にちょうどいい)。
そこまでの熱意はないのでこの辺で妥協。
毎日のお世話
朝晩毎日キッチンペーパーを取り替えて上下反転させる。
上下反転させないと水分が均一に抜けずに腐敗の原因になる。
チーズの表面に塩水とPenicillium roquefortiを溶かした水溶液を朝晩毎日吹きかける。塩水とPenicillium roquefortiはそれぞれ霧吹きを用意する。
Penicillium roquefortiが耐塩性があるか怪しいので霧吹きは二つ用意して分ける。
Penicillium roquefortiは乳酸発酵時に入れたが、それだけで量が足りるかわからないので毎日霧吹き経由でカビ菌を与える。
Penicillium roquefortiは耳かき半分を水400mLくらいに溶かした。濃度は適当。
上下反転させた際にチーズ表面に塩を振る。とにかく脱水させる。
ロックフォールチーズは最低でも二ヶ月は熟成させるのでこれを二ヶ月は続ける。
なお、ロックフォールチーズはフランスのロックフォールの洞窟で熟成したものだけにその名を許されているので、今作っているチーズはロックフォールチーズではない。
ロックフォールチーズは羊のミルクから作るので、今作っているのはスティルトンやゴルゴンゾーラの方が近い(こちらは牛乳から作る)。
まとめ
チーズ作りは結構手間がかかる。
労力を考えたら買った方が安い気がしてきた。
手作りはそんなもんだ。
業務用のスターターを買ったので工場みたいに大量生産すれば一応元は取れそう。
70kgのチーズを作れるくらいのスターターを買った。
日本人一人当たりのチーズの年間消費量が3kg程度なのでむこう20年分のチーズを作れる。
ちなみにパルミジャーノ・レジャーのホールが約38kgなので、パルミジャーノ・レジャーノのホール二個分相当のチーズが作れる。
不法移民を匿っている人なら鮮度が落ちる前に消費できそう。
コンタミ対策でマメにアルコール消毒をするので手が荒れた。
潔癖症の人みたいにずっと除菌していた。
何度手を洗っても汚れが落ちないの……
何度手を洗っても綺麗にならないの……
青カビを発生できたらまた続きを書く。
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