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漆草子 ‐心しずまるもの‐

漆とは

『心しずまるもの』


と友人が言った。

「結局、心しずまるものに落ち着いたのよね」

ワクワクするもの、心ふるえるものも良いけれど
最後には心しずまるものに帰ってくると。

漆器を手のなかにおさめると、ほっとする。
まるで人肌に触れたように、
固いのに柔らかく、
乾いているのにしっとりと吸いつく質感。

いまはいろいろ便利でコスパの良いものも多いから、多くの家庭で日常の暮らしから漆器が遠のいているけれど、時間に追われ、ときに殺伐とした空気が流れる現代こそ、漆器を両手に包んでふと心を落ち着ける瞬間が大切で、とても幸福だと思う。

よく「いつもニコニコしてて良いね」と言われる。
自分としては、イライラすることだってあるし、心がササクれることだってある。失敗して凹むことだってしょっちゅうだ。
それでもそう言ってもらえるのは、漆器を手にして気持ちをメンテナンスすることを知っているからかもしれない。

心がカサカサしたとき、やってみてほしい。
お気に入りの漆器を両手のなかに包んで撫で撫でして息を吐く。

漆とは

心しずまるもの。
心をしずめてくれるもの。

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