ラッパの話
https://www.mod.go.jp/gsdf/fan/sound/index.html
自分が空自に在籍していた当時の特技は警備職であり、その職務の一つにラッパの吹奏があった。
海自のシステムはわからないが、陸自の場合、各部隊からラッパ教育を受けに行った者がラッパMOS※を取得して吹奏を行う。
(MOSとは米陸軍や陸自の部内資格の事。陸上自衛官の殆どはMOSという概念が海空にも有ると思ってるので、その辺分かってない海空自衛官は「MOSってなにさ」となる)
で、このラッパであるが、航空自衛隊においては警備職種のみの職務であり、ラッパ教育に関しても新兵は隙間時間を活用してひたすら吹くという物であった。
トランペット等の他の金管楽器はピストンを使用して音を変えるが、ラッパにピストンは無い。息の流入量、スピード、唇のマウスピースの当て方を調整して音を変える。これをラッパの構造を知らない人に話すと皆驚愕する。
基本的にはソ(低)ドミソ(高)の4つの音で曲を吹くが、海上自衛隊の君が代に関しては更に低い音を吹奏する。⇩
全然君が代に聴こえないでしょう?
ちなみに陸空自衛隊はコレ⇩
自分が在籍していた基地は、まだ自分が空士だった当時、ラッパが盛んな部隊で、日課号音の全てとは言わないが、国旗掲揚降下時は録音ではない生のラッパ、定期的に日課号音全てをラッパ吹奏で行った
『ただいまの吹奏は■■3曹と■■2士で実施しました』と吹奏後にマイクで入れるため、音が出なかった、音を外した等のミスを犯した後に警備に帰るとそれはそれはもう悲惨であった。
ラッパには日課号音以外に、儀仗、正門を高官、大臣、皇族が通過する際や、葬儀を行う際に吹く事もある。警備は基地の顔であると共に儀礼にも密接に関わる。
故に失敗など許されない。
自分は当時の総理大臣、航空幕僚長、天皇皇后両陛下に対しても吹奏を行った事がある。総理大臣から直接労いの言葉を掛けられた時は「コレがこの人の素の声か。テレビの印象と全く違う」等と思った。
ちなみに自分はラッパの覚えが非常に悪く、士長辺りまで「毎日2時間練習しないと外出させない」等の手痛い指導を受けたが、2時間嫌々吹くよりも、毎日10分、5分で良いから目的意識を持った練習をした方が遥かに上達するのは間違いない。
一つの音を安定して出し続けるロングトーン→音を一つ一つ区切るタンギング→音を途絶えること無く自在に変えるスラー→コレをマウスピースのみでこなせる様になれば、中継管を着けて同じ事を行い、最終的にはラッパを着けて吹く。
マウスピース9割、ラッパ1割の比率で練習しろと教わった。
ちなみに高練度者はスーパーマリオブラザーズのテーマソングや競馬のファンファーレ、ミッキーマウスマーチを吹けたりする。