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愛することは弱くなること
C. S. ルイス「The Four Loves」より(神田訳)
何につけても愛するということは、弱くなるということです。どんなものでも愛するならば、あなたの心は引き裂かれ、そして壊れてしまう可能性をもつことになります。
もし、心を無傷で保ちたいのなら、誰にも、たとえ動物にでもあなたの愛を渡してはなりません。趣味やちょっとした贅沢で丁寧に包み込み、あらゆる関わり合いを避けましょう。自分中心という棺桶の中に、あなたの心を安全に閉じ込めなさい。しかし、その棺の中で――安全で、暗くて、動かず、空気もない棺の中で、あなたの心は変化していくでしょう。決して壊れることはありません。しかし、あなたの心はもはや壊すこともできず、貫かれることもない、救いようの無いものになるでしょう。
愛することは、弱くなることです。
To love at all is to be vulnerable. Love anything and your heart will be wrung and possibly broken. If you want to make sure of keeping it intact you must give it to no one, not even an animal. Wrap it carefully round with hobbies and little luxuries; avoid all entanglements. Lock it up safe in the casket or coffin of your selfishness. But in that casket, safe, dark, motionless, airless, it will change. It will not be broken; it will become unbreakable, impenetrable, irredeemable. To love is to be vulnerable.
― C.S. Lewis, "The Four Loves"
vulnerableは弱い、脆弱な、傷つきやすい、攻撃を受ける、不安定な、流されやすいくらいの意味の形容詞。防御されていないというところだろう。weak(弱々しい、虚弱な)ではない。
C.S.ルイスは「ナルニア国物語」の原作者だ。
大切な人がいない方が、傷つかなくて安定していて頑丈な心で過ごせるようにも思える。実際にそうかもしれない。
誰かを大切にして生きるというのは、やはり不安定になり傷つけられる可能性を引き受けるということでもある。誰かを愛している自分は、どこか愚かで、無防備で、ふざけていて、無邪気で、不用意で、弱い。そんな状態で攻撃されたらひどくダメージを受ける。
だから、心の安売りはしない。不用意に愛を注ぐこともしない。
でも、弱くなるリスクを知ったうえで、愛することを選びたい。自分で選んで、自分でその結果も引き受ける。そういう生き方を選ぶということは、多分変わらないと思う。
ところで、愛することは弱くなる(傷つきやすくなる)ことだという事実は、愛することにおいてどれくらい重要な要素なのだろう。デメリットでもありながらメリットも含まれているのだろうか。傷つかず、傷つけないように愛すればいい、と工夫することは正しい努力なのだろうか。
無駄に争うのは愚かだけども、争いを避けるばかりが愛でもないだろう。自分も変わるし相手も変わる。変わりゆくお互いを、傷つけ傷つきながらも大切にする。大切に思うからこそ傷つけあうこともある。
それくらい、弱くなる(無防備になる)ことと愛することは本質的に近いところにあるような気がする。