"離島だからこそ" ICT教育で拡がる地域活性の可能性 (前編)
こんにちは、現地スタッフの西貝です。
私はうるま市の島しょ地域に暮らしながら、島の課題解決(ファンづくり)に取り組む仕事をしています。その中で2021年度はネット授業の現場スタッフとして携わらせていただくことになりました。
約1年間授業に携わったことで見えてきた、ICT教育の取り組みが担う地域の未来の可能性について、主に参画校である津堅中学校にフォーカスをあててまとめてみました。
前編・後編に分けていますが、ぜひ最後までご覧いただけると嬉しいです。
この事業は、うるま市にある島しょ地域における ICT活用島しょ地域 児童生徒交流実証事業です。沖縄県うるま市伊計島に本校をもつN高等学校を運営する角川ドワンゴ学園と、うるま市教育委員会と連携し、授業作り/実施などを行っています。
地域にいながら、地域内外と連携して課題解決や価値創造に取り組める人材の育成を図ることにより、島しょ地域の特色ある学校づくりに役立つことを目的として2020年度にスタート。唯一有人離島の津堅中学校、本島と橋でつながる4つ島の中学校が合併してできた彩橋中学校、そして人口減少がとまらない与勝第二中学校において「ネット部活」と「総合的な学習」の2つの枠で授業を実施しています。
まずこちらの前編では、島しょ地域の基本情報や津堅島について触れ、津堅小中学校と今回のネット授業の内容をご紹介します。
そもそも島しょ地域って?
沖縄県うるま市は、沖縄本島中部の東海岸に位置する、2市2町が合併してできた「サンゴの島」という意味のまちです。その中に「島しょ地域」と呼ばれる5つの島(平安座島、宮城島、伊計島、浜比嘉島、津堅島)からなるエリアがあります。
(画像提供:うるま市)
沖縄の原風景と、飾り気のない魅力的な人々のありのままの暮らしが残る島しょ地域は、元々は離島だったからこそ育まれたそれぞれの島独自の豊かな文化があります。
こちらは伊計島。いつもこの樹の下のベンチに島の方々が集い、ゆんたくされています。
津堅島はうるまの島しょ地域で唯一の有人離島
津堅島以外の4島は海中道路で本島とつながっているため、陸路で移動できますが、津堅島はフェリーで片道約30分(高速船で15分)の有人離島です。
(画像提供:民宿神谷荘)
「キャロットアイランド」の愛称で親しまれるように、にんじん畑が多くあり、「津堅にんじん」ブランドとして直売所やホテル等に出荷されています。
離島ならではの美しく青い海と天然のビーチに囲まれており、夏は多くの人が訪れています。
(画像提供:民宿神谷荘)
私自身、プライベートでも仕事でも何度も訪れていますが、海の綺麗さにいつも癒されています。夜は真っ暗なので星も綺麗です。
コンパクトな集落をのんびり散策して、売店に立ち寄って島のひとたちとゆんたくしたり、何か特別なことがなくても津堅島の空気を感じるたびに島の魅力を体感しています。
島しょ地域が抱えている深刻な課題
一方で、人口が増加しているうるま市全体と傾向が異なり、島しょ地域は著しい人口減少が進んでいます。働き口も限られていることから、仕事や生活環境の利便性を求めて若い世代は島しょ地域を出てしまい、人口流出やそれに伴う出生数の減少、少子高齢化による地域の衰退、空き家の増加など、全国的に課題として挙がっているような深刻な課題を抱えている状況です。
中でも津堅島は本島との往来が船便に限られてしまうため、他の4島よりも利便性において不利になります。また、島には高校がないので、ほとんどの場合に中学校を卒業すると島外へ出てしまうそうです。
津堅小中学校の全校生徒数は2021年度時点で13名。
廃校になる未来もすぐ近くまで見えています。
自治会はもちろん島民も、子育て世代のU・Iターンをとても望んでいます。
移住を考えている若い子育て世代からすると、移住先の教育環境の充実度はかなり気にされる方が多いので、地域の教育で面白い仕掛けがあるかどうかはとても重要なポイントですね。
“最小の最高を追求する”津堅小中学校に潜入!
津堅島は小学校と中学校が併置されています。
オーシャンビューでとにかく横に長い校舎!(画像提供:民宿神谷荘)
島の豊かな環境を生かした学校内外での様々な学習・行事「追い込み漁」「人参栽培」「サバニで島まわり」等の取り組みなどが保護者・地域の協力で展開されています。
小・中学校、学年の区切りなく全員で活動することも多く、一島一校ならではの教育が行われています。 総合学習でのネット授業以外にも様々な授業でICTが活用されています。
生徒数は多くありませんが、その分一人ひとりに丁寧に向き合ってくださる、とても手厚い教育が行われています。
別の機会で校長先生を訪ねた際に、校内全体をご案内いただきながら学校の魅力についてお話を伺ったのですが、主に以下の3つの要素が魅力だと話されていました。
・島の環境が良いこと
・少人数だからこその手厚さ
・ICTを活用している
ここでもやはりICTの強みは出てきていますね!
なんでもパパッとPCでこなせてしまうということで、パワーポイントなんかも使い慣れているということでした。
こちらは移住検討社向けの動画ですが、校内案内のシーンや田場校長先生の熱いお話がありますので、よろしければぜひ併せてご覧ください。
「最小の最高を追求する津堅島教育の創造」を掲げて、少人数だからこそ小回りをきかせて様々なことにチャレンジできる、素晴らしい学校なのが伺えました。
ネット授業ではどんなことをしていたのか
今回の3校合同の総合学習でのネット授業は、各自zoomから参加し、学校間を超えた少人数グループになって意見や自分の感じていることを伝え合うなど、ワークの時間がたくさんありました。
▼ 2021年度ネット授業の流れ
1Q:インターネットに触れて、楽しさを味わおう
2Q:自分を理解し、他者と共に創造活動に取り組む力を高めよう!
3Q:シチズンシップ教育・スマホから世界と私たちの生活のつながりを考えよう
4Q:地域と繋がり、社会に参画する
5Q:みんなクリエイター! 創作を楽しもう
彩橋中と与勝第二中の2校は中学校1年生が対象ですが、津堅中は3学年全員で参加します。
既に経験して慣れている2・3年生がいるのもあって、みんなzoomやgoogleスライドなどに慣れはじめるが早かった印象です。
4Qでは自分たちの足元の地域を知るために、地域のキーマンによるフィールドワークを実施。
津堅中は「民宿 神谷荘」の神谷恭平さんにお話・フィールドワークをしていただきました。
暮らしていると当たり前すぎて気づいていない魅力や課題などを改めて知れるきっかけになっていました。
何より、まだ20代と若い神谷さん自身が孫ターンで神谷荘の後継ぎとなり、民宿・食堂の既存事業に留まらない新しい取り組みにチャレンジしているからこそ、これからの津堅島の可能性にも触れられ、生徒たちにとって、とても良い刺激になっていた印象です。
最後はアウトプットとして、フィールドワークを通して感じたことを各々noteで表現しました。
その前段階の振り返りとして、フィールドワークで感じたことを「感情カード」を用いて自分の感情を選び、その理由も書き出すワークをしました。そこで「希望を感じた」というのを選んだ子が多かったのがとても印象に残っています。
高校もないのでほとんどの人が大学や就職をきっかけに完全に島を出てしまうのですが、これからも津堅島に居続けたり、いつか戻ってきて自分も何か島で挑戦できるかもしれないといった、とてもポジティブな新たな可能性を神谷さんを通して感じられるとても良い機会だったんだと実感しました。
リモートワークやオンライン会議も当たり前のように浸透しつつあるので、ICTのスキルを兼ね備えられれば島でのびのびと暮らし、ここでしかできないチャレンジをしながら、島外・世界とつながっていけるんだなと。
生徒たちを見ていて、私自身も島しょ地域の新たな可能性に気づくことができました。
こどもたちが実際に書いたnoteはこちらからご覧いただけます。
授業を通しての生徒たちの学びについては前回の記事をご覧くださいね。
後編では、担当の先生のインタビューや今回の授業を通してのわたしが感じたことをまとめています!