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#112 花魁考

 花魁と書いて「おいらん」と読む。花魁(おいらん)と言えば、江戸時代の吉原遊郭の高位の遊女であり、NHK大河ドラマ「べらぼう」でも話題となっている。遊女には位があり、「吉原細見」にも格付けが載っている。遊女たちは位によって揚げ代が決まっており、花魁(おいらん)と呼ばれるのは、見世(みせ)の格子戸で眺める遊女ではなく、引手茶屋から呼び出しを受ける高位の遊女に限られている。京・大阪などの上方では、太夫(たゆう)・傾城(けいせい)と呼ばれるが、吉原遊郭の太夫は18世紀初頭には姿を消しており、18世紀以降は花魁(おいらん)と呼ばれるのが一般的であった。なお、京都・島原の芸妓は今でも太夫を称している。
 ところで、花魁は普通に読めば「かかい」であり、そもそも花の魁(さきがけ)としての梅の異称である。正月早々、雪の消えない冬に咲くことから花魁と呼ばれるようになった。宋代の支那では、慶事・吉祥の画題として松・竹・梅を「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」として重んじており、清廉潔白を標榜する文人の理想とされた。松や竹は寒中でも緑が色褪せず、梅も寒中に咲くためである。我が国にも伝わり、松竹梅として息づいている。
 なぜ「おいらん」に花魁の字を当てたかは定かでないが、妹分である禿や新造を引き連れる「花魁道中」は、花魁(おいらん)を先頭に練り歩くためともいい、花(遊女)の魁(さきがけ)の意味も込められているという。あるいは寒中に咲く花魁(梅)になぞらえたのかもしれない。美しさと儚さには、常に悲哀が隠されている。ちなみに、「おいらん」とは、禿や新造たちが「おいらの姉御」と呼んだことに由来しているようで、禿や新造の中から次なる花魁(おいらん)が生まれていくのである。

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