見出し画像

『ヘヴン』読了

川上未映子先生の『ヘヴン』読了。

最近良いことが本当に本当になくて,唯一の心の拠り所である本を読み漁る毎日。
母に川上先生の小説を勧められて,ぼんやりした頭で読み始めた一冊。
こんなにも心が揺らぐ小説はあまり出会ったことがなく,この文章を書きながらもまだ余韻に浸っています。

コジマ。「汚くて貧乏だから」,虐げられている少女。
「僕」。「目が気持ち悪いから」虐めを受けている,少年。

二人の共通点は,「虐められている」ことだけ。

〈私たちは仲間です〉
コジマが「僕」に書いた一通の手紙から,「僕」とコジマの距離は縮まっていく。
コジマとの文通をしていくにつれ,「僕」はコジマが虐められていると耳にするたび,見るたびに苦しくなる。
コジマは「僕」にとって,たった一人の,『友達』だった。

「ヘヴン」というタイトルは作中では一枚の絵として登場していますが,「僕」がコジマと過ごしたその時間こそまさに「ヘヴン」だったのではないかと思いました。
14歳。最も繊細で,最も野蛮な時期。

運悪く,目を付けられてしまった二人の心がどんどん,ジワジワと殺されていくのがリアルに目に浮かび,時折背筋がゾッとしつつもページをめくる手が止まりませんでした。
コジマは一体その後,どうなってしまったのか。
そして,奇妙な終わり方をしているこの小説は,そんな終わり方だからこそ,日常的に起こってもおかしくない,そんな真実味とそのリアルさのあまりの強さに恐怖をも強く感じました。


素敵な小説を執筆してくださった川上未映子先生,並びに出版してくださった出版社の方々に多大なる感謝。


いいなと思ったら応援しよう!