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日本におけるシニア人材活用と高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~【海外との比較を含む】

どうも、斉藤 史朗です!

日本の人材活用の今後のカギは、「女性・シニア・外国籍人材」の3本柱です!その中で今回シニア人材に焦点を当て、企業がどう向き合っていくのか、個人としてどう働くのか、生きていくのか、という点について示唆します。

女性の人材活躍
 先んじて女性分野に関しては、周知の通りですが「全体的な就業者に占める女性比率」は、"米国・英国・欧州などと比較して同等"です。

女性の社会進出という観点だと、働く女性が日本全体で多いという点で、思っている以上にポジティブなデータでした。

しかし、「管理的職業&役員に占める女性比率」は他国に比べて3倍~4倍の差があります・・・

つまり、日本における女性の社会進出は果たせているが、女性活躍や女性が"経営や組織の意思決定していく"は少数である。

政治における女性活躍もそうですが、民間企業の経営層の顔ぶれは男性社員が多く、これ自体が否定出来る訳ではないですが、ダイバーシティ=企業競争力の向上と考えると、管理職&役員に女性を登用させ、経営の議論に参画する機会を増やしていくという方向が今後増えると良いですね。

下記データが正社員だけの割合なのか、非正規社員の割合なのかで、見方が変わりますが、女性の正社員比率が仮に海外と同等で、管理職&役員比率で大きな差があるのであれば、改善の余地はあります。

なお、各社女性管理職比率を高める取り組みをしていますが、メンバーを管理職、役員に昇格させていくのに、3年~5年程度育成に時間がかかりますので、外部採用も取り組む必要がありますが、ここは長期的に数値を見ていく必要がありますね。

抜粋_経済産業省|ダイバーシティ2.0一歩先の競争戦略へ

話しをシニア人材に戻しまして、
最近日経新聞で、シニア人材の活用と高年齢者雇用安定法の改定についてはかなり話題になることが増えています。

超高齢化社会&急激な人口減少を進める日本では、シニア人材の活用が大きなカギになります。

日本の状況を語るコラムなどは多数ありますが、海外ではどういう状況になっているのでしょうか?

アメリカの場合

公共系の仕事を抜かすと、ジョブ型で専門性が高く、雇用先を変えながら個人のスキルを高める方が多いので、会社に依存するキャリアやスキルではなく、個人の意思を持った活動をされている方が多いです。

定年制を採用している企業はなく、法律上、定年制が許容されているのは、公共交通機関の業務や警察官、消防士などだけになります。

60歳、65歳だからという年齢で契約更新を判断する事に厳しくしているようです。(ここは日本と考え方の相違がありますね)

そのため、社員と会社が話し合って成果や今後のキャリアを見ながら判断していくようです。

随時契約を用いて、都度レイオフされたりもするので、日本のように有終の日をおえるような形にはならないかもしれません。

日本からみると自由がある分、厳しい就業環境だなと感じます。

ただ、法律上での縛りがあるので、明記せずにアメリカ企業でも日本を参考に実質定年に近い会社や長期雇用したい会社が存在するのかもしれませんね。

これは別テーマとして調査しておきます。

また、公的年金は60歳→実質67歳に徐々に引き上げをしており、アメリカも日本と同様に高齢化が問題になっているので、金銭面の観点からも働ける内は働いておこうと考えるアメリカ人が多いのかもしれません。

高齢者になると、医療費が増加する傾向があり、アメリカの社会保障費では医療分野の控除などは存在しないので、そこも考えると急な出費に対応できるお金を持っているのか?

70歳以降の暮らしが、日本の環境よりも気になるのではないでしょうか。

こちらの記事を見る限り、リタイヤ後の収入や貯蓄に心配がある方は、4分の3に該当しています。

「55歳以上で25万ドル以上の資産(固定資産・年金を除く)を有する者は、この層全体の4分の1に満たないと報告している。」ようです。かなり厳しい状況ですね。

労働者全体に占める55歳以上の労働者の比率は1994年の時点で10人中1人であったが、2024年までにこの比率が4人に1人になると予測されている。

抜粋【デロイトトーマツ】米国における高齢人材管理のトレンドから読み解く日本企業への示唆

同対象ではないですが、日本では65歳以上の労働者の割合が25.1%となり、4人に1人が65歳以上の労働者になります。

それに比べてアメリカは2024年までに55歳以上の労働者の割合が4人に1人なる想定なので、いかに日本が超高齢者社会になっているか分かります。

なお、高齢化の対策の違いとしてもアメリカは日本よりも移民を多く受入しているおり、(2021年データでは27.5万人)この点に関して日本も参考になります。

移民施策は賛否が分かれますが、ここもどう進めるのが日本に取ってよいのか、別途考えてみたいです。

高齢労働者の働き方

抜粋【デロイトトーマツ】米国における高齢人材管理のトレンドから読み解く日本企業への示唆

分類項目は日本も大いに参考になる所で、恐らく日本とアメリカで比率は大きく違いがありますが、リタイヤするまでに雇用されているのが、最大50%と高くないのが特徴かと見受けられます。

それだけ、ジョブ型での働き方によって専門性や生き方、働き方の多様性があることで、分散しているのではないかと推測します。

ここまでアメリカのシニア人材の働き方、定年事情について触れてきましたが、他国の状況(アジア・ヨーロッパなど)はこちらの記事で上手くまとまっています。

各国の数値を見てみると、いつまで働くのか=いつ年金受給できるのか?大いに関係がありそうですね

日本企業におけるシニア人材活用
 
日本企業での定年廃止や定年制度がない会社も増えています。以前存在していた終身雇用が成立しづらい状況にもなっています。

元々老舗中小企業などでは定年制度がないケースが多く、そもそも50代以上の社員がいない、割合が少ない。

また、人材確保の窓口を広げる・競争優位性を高める意味で制限を設けていないようです。

一方、大手企業では定年制度や役職定年などを設定しているケースが多いです。

一気に定年廃止に繋げられないのは、勤続15年~20年を超えたタイミング以降で急激に退職金が増えるという設計になっている大手企業が多いため、退職金や人事制度の調整も必要で、定年廃止した場合に、社員に取って不利益な制度にならないか慎重に確認する必要があります。

段階的に制度を更新していたYKKグループ

同社は、65歳を上限とする定年制を2021年度も廃止したようです。

「年齢や性別、学歴、国籍にとらわれない役割を軸とした真に公正な人事制度の実現をめざす」という想いを実現するための取り組みのようです。

廃止することで意欲的な60代以上の社員に取っては嬉しい話だと思いますし、役職定年などがあると給与面や決裁権がなくなり、優秀な社員でも急に意欲が落ちるという事は周囲の会社で良く聞きます。

段階的に行っている中でメリットがデメリットを上回ったのではないでしょうか。他にも、サイボウズでは定年制度がないようです。

同社には45歳以上の社員にいない訳ではなく、「会社以外に各人が居場所を持っている事」がポイントになっているようです。

シニア人材の働く価値観として、金銭的動機もありますが、60歳前後を迎えると多くの方が、仕事だけでの人生ではない。

そして定年終えてスパっと仕事を辞めるくらい嫌ではないが、生き方を考えたら、自分がやりたい仕事に従事に、自分のペースで時間を決めていく。という価値観がでてくるようです。

なので、定年を設けないと一般的な発想として、仕事をせずに成果をあげずに会社にしがみ付いてしまうのではないか?

という心配が出てきますが、恐らくシニア人材が体調面や健康面を考えてみて、フルに仕事にコミットする形ではなく、緩やかにリタイアしていく、居場所を移すような仕組みや風土を構築しているというのがサイボウズの考えなのかもしれません。

自律したシニア人材を育成、尊重できる会社になっているからこそ、定年という縛りなく会社が回っていると思われます。

ソニー社の50代以上の社員向け学び直し機会の提供
(キャリアカンバスプログラム)

人生100年時代とも言われるなかで、働くことと、それにまつわる人生の将来設計については、個人個人によってさまざまなニーズと価値観が存在し、多様化しています。こうした中、ベテラン社員がソニーグローバルソリューションズの中で活き活きと働きながら、将来のライフプランを主体的に考え、設計し、学び直しをしながら実行していくための支援制度です。50歳以上の社員を対象に、さらなるスキルアップやキャリア支援などを行っています。

抜粋_ソニー社人事制度

キャリアカンバスプログラムの施策目的は、
①「新しい分野への挑戦を促す」 
②「キャリア形成を支援する」

それぞれの施策が独立したものではなく、一貫した取り組みであることを社内浸透させる。

#具体的な取り組みは 、下記二点です#

①社内で越境体験
社内複業・社内プチ異動のように、業務時間の2割~3割ほどを使って、別の仕事を兼務できるという制度。

②社外でインターンシップ
中小企業や自治体に参画したり、地方創生などに携わる。

従来考えるような、社員のスキルアップやMBA留学のようにスキルとキャリア優先機会ではなく、将来のライフプランを考えるきっかけとしての学び直しとスキルアップ機会を提供しているようです。

②は大手企業の場合、携わる案件によっては技術流出や自社に不利益な行動が生まれてしまう場合がありますので、社外インターンシップも一定のルールを決めて運用するのは、一つポイントのようですね。

シニア人材とジョブ型の相性
役職定年後、定年後再雇用で一律の業務役割や給与を提示する形では、優秀なシニア人材のモチベーションを保つことはできません。

今までメンバーシップ型の人事制度を取ってきた会社で、55歳以降をきっかけにジョブ型に移行するという事例があります。

これは良い形だと思っていて、役職定年後業務が変わるし、給与も変わる中でも、シニア人材の成果によって評価を変える評価の差を出すことは、会社内の競争力を生み出すきっかけになります。

キャリア研修をきっかけに、各人のキャリア方向性を整理し、やりたい事、進む方向を示した上で、業務遂行いただき、それをどう評価していくのか。ここを連動するのがよいと感じています。

役職や肩書を外した際に、個人としてどういう貢献が会社に出来ますか?その問いの答えを見出し、評価する、まさにジョブ型人事制度との相性は良いはずです。

全社的にジョブ型を導入検討するよりも、まずスポットでシニア人材にジョブ型を導入していく方向はどうでしょうか!?

抜粋_三菱UFJリサーチ&コンサルティング_シニア人材向けジョブ型人材マネジメント導入事例

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斉藤 史朗
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