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【寝前小説】見えない騒音

イヤホンをつける
お気に入りのプレイリストかけながら駅まで進んで行く
電車に乗り込む
イヤホンの音量を上げる
電車を降りて帰路に着く

高校に入学してもう1年が経った
五月蝿い
別にみんなのことが嫌いな訳ではないし
嫌われているという訳でもないと思う
みんなと遊びにも行くし雑談だってする
でもどこまで行っても友達は他人な訳であって私は私で私の本質じゃなくて
言うならば社会に位置する比較的「私」として会話する
それを悪いだなんて思わないしそういうもんだと思う
でも、煩わしい
どうにも煩わしい

ギィーッ!!
大きく視界が揺れた
珍しく電車が急ブレーキをかけたようだ
気にすることはない
少し気になる
いや、気にしていいのだ
自分が乗っている電車を気にしてはいけない道理がどこにある
私が人類に属し「私」として生きていくのだ
私は人類に起こる事象全てに興味だけで向き合ってもいいようだ
暇つぶし程度に

電車は急ブレーキなんてなかったように走り続ける
イヤホンを外す
風を切る音と電車が揺れる音と
聞いたことのなかった電車の音が聞こえる
低い、響くような低音が鳴り続ける
なんの音かはわからない
それでいい
好きなように向き合えばいいのだ
座席にもたれかかり、ただ音を聴き続ける

風の音を聴く
人の話し声を聴く
自分の靴音を聴く
教室の喧騒を聴く
自分の心の声を聴く
大音量ともとれるくらい色んな音が聞こえる


それでいて心地良い

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