わたしの好きな小説:ミステリ編 | 初心者おすすめミステリ
こんにちは。胡乱布団です。
前に、自己紹介の補遺ということで、好きな本とおすすめ本について語ったのですが、小説について語るには余白が足りなかった(フェルマーばり)ので、今回は自己紹介の補遺の補遺となります(それ結局自己紹介の補遺じゃん)。
いちおう、自己紹介の補遺の記事を貼っておきます。
タイトルにあるとおり、今回はミステリに限定して語りたいと思います。
直近読んだ3冊と簡単な感想
とりあえず、直近読んだミステリ3冊を紹介します。
夕木春央『方舟』
この本は、単行本が出た頃に、単行本でも読んでいたのですが、先日、文庫化したので、今度は文庫で読みました。
再読ではありますが、この『方舟』は再読してこそ味が出る作品でもあります。
帯にも「この衝撃は一生もの」と書かれていますが、まったくその通りで、
もし、まだ読まれていない方がいれば、いますぐ書店に駆け込んで読んでください。
まだ文庫化されていないですが、これの姉妹作『十戒』もおすすめです。
『方舟』はまじでやばいので、個別記事にしようとも思ってます。
芦沢央『魂婚心中』
こちらはミステリの中でもSFミステリと呼ばれるタイプの、短編集です。
どの短編も斬新奇抜な設定で、『この世界には間違いが七つある』には度肝を抜かれました(笑)
六篇入っていますが、わたしは後半の四篇が好きです。これについても個別記事にしようと考えています(あと、芦沢央作品を語りたい)。
浅倉秋成『フラッガーの方程式』
浅倉秋成さんといえば『六人の嘘つきな大学生』で有名ですが、緊張感ある会話劇が特徴的な『六嘘』と違って、本作はかなりというかめちゃくちゃコミカルに進みます。
浅倉秋成先生が原作を務めている漫画『ショーハショーテン』と同じくらいにコミカルです。
あと、題名からまったく想像のつかない話なので、簡単に設定をお話しますと、
「フラッガーシステム」という誰でもラノベや漫画の「ラブコメ主人公」になれるご都合主義装置(名の通り、怒濤の勢いでフラグを立てる装置)がありまして、そのテスターに選ばれた、どこにでもいるような冴えない(ただしツッコミが峻烈)男子高校生のお話です。
*「方程式」とありますが、「方程式」は出てこないです。
好きなミステリのジャンル
まあ、ミステリだったらなんでも好きな節がありますが、まず二択問題に答えておきましょう。
これを踏まえて、わたしの好きなジャンルを紹介します。
クローズドサークル
叙述トリック、どんでん返し
日常の謎
倒叙
です! 逆にアリバイ崩しとか社会派は得意じゃないです。
あと、レイヤーが違ったので入れませんでしたが、イヤミスも結構好きだったりします。
初心者にもおすすめなミステリ
ここでは、わたしが好きで、かつ、初心者のうちに読んでおくといい作品を列挙しておきます。
クローズドサークル
まず外せないのは、この作品。
綾辻行人『十角館の殺人』
帯に書かれているとおり、ある一行によって世界はひっくり返ります。
あなたの読んできた400ページの世界は、音を立てて崩れさります。
こちらは漫画版も最近発売されまして、読んでみたのですがとてもクオリティが高く、わたしは実は漫画版のほうが好きだったりします。
第一回メフィスト賞受賞作である次の作品も外せない。
森博嗣『すべてがFになる』
これは某国立大学の工学部の元助教、森博嗣先生の処女作であり、<S&Mシリーズ>第一作でもあります。
この作品は、ミステリとしても非常に秀逸なのですが、なによりこの作品に出てくる三人の天才、真賀田四季、犀川創平、西之園萌絵の会話がキレキレで、ページを捲るたびににアフォリズムを生み出してきます。
ひゃー! かっこよいいいい!!! わたしもすらっとこんな科白言えるようになりたいものです。
こんな感じの科白がそこかしこに出てきます。
また、この小説が執筆されたのが、1996年であるということにも注目してほしいです。本作では、いまでは割と当たり前になっている技術が、当時ではこれから発展する技術と予想された形で出現します。
森先生の先見の明と言いますか、常人とは世界に見え方の解像度が違うんだなぁってことがわかります。
周木律『眼球堂の殺人』
これも『すべてがFになる』と同じく理系ミステリに属す作品で、おなじくメフィスト賞受賞作であります。
『すべてがFになる』は主人公は工学者の犀川創平でしたが、こちらは十和田只人という数学者です。
(ちょっと、終始、彼のひとりごとは感性がぶっ飛んでいて意味がよくわからないのですが)
この作品の最も注目すべきポイントは、そのトリックの大胆さです。
「そんなんアリかよ!」って叫びたくなるくらいには、読者の度肝を抜いてくるトリックが登場します。
裏を返すと、この眼球堂でしか出会えないトリックがあるということでもあります。
叙述トリック、どんでん返し
ここでは安全のため、帯や説明文に「叙述トリック」とか「どんでん返し」と明記されていて、なおかつおもしろいものを紹介しておきます。
*初心者のみなさまに注意されたいのは、「どんでん返し」「叙述トリック」があるというだけでもネタバレに感じてしまう人もいるということです。
わたしもここには細心の注意を払って生活しております。
叙述トリック
似鳥鶏『叙述トリック短編集』
いや、題名にも書いてある! 書いてあるって!
普通、叙述トリックというものは作品の最後に明かされるものなので、初っ端から開示されることはないのですが、この作品は題名からして開示されている挑戦的な作品です。
わたしも数多の叙述トリック作品を見破りたくもないのに見破ってきましたが、この短編集には何度も騙されました(笑)
この本はぜひ、紙で読んでほしいですね。なにとは言いませんが(笑)
どんでん返し
米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』
大好きすぎる!!
これはどんでん返しの短編集となっているのですが、普通のどんでん返しとはまた意趣が違う感じがあります。
ちょっとだけ話すと、どんでん返しはふつう後頭部をバールでガツン! と殴ってくるようなものが多いのですが、本作はどんでん返しであるのに、ストンと落ちてくる向きがあります。
――これが本当のカタルシス(浄化)なのだと、これを読んで悟りました。
まあ、その点では、初心者向きではないかもしれませんが、それでもおすすめしたいほど卓越した作品です。
日常の謎
わたしがミステリに立ち入るきっかけとなったのは実はこの日常の謎というジャンルです。
日常の謎とは、読んで字の如く、日常生活などで現れるふとした謎を取り扱うミステリです。
京アニ作品の『氷菓』を観たことがある人ならピンと来やすいと思います。
米澤穂信『さよなら妖精』
『さよなら妖精』、さきほど挙げた『氷菓』(古典部シリーズ)の幻の最終回とも呼ばれる名高い作品です。
これを読むと、古典部シリーズでは明かされていない裏設定がわかります(笑)
とはいえ、この作品は古典部シリーズとは独立した作品なので、古典部シリーズを知らない人でも充分に楽しめます。
この『さよなら妖精』は日常の謎短編集となりながら、青春の切なさと儚さが最後に心を痛切に射抜いてきます。
この心を溺れさせるような余韻に作者からの「ただでは返さないよ」という意志が伝わってくるような感じもします(笑)
(できるだけ違う作者の作品を挙げたかったのですが、わたしの中で日常の謎といえば米澤穂信という向きがあったので、どうしても外せませんでした)
青崎有吾『地雷グリコ』
これは最新の第171回直木三十五賞の候補作にもノミネートされましたから、知っている人も多いのではないでしょうか。
この作品は『さよなら妖精』とはまた違うタイプの日常の謎で、いうなれば「学園頭脳バトル」ものです。
一般に、学園頭脳バトルものは、往々にして、主人公の特殊能力と言ってもいいくらいの知能とか、肝心なルールが読者には曖昧なまま、演出で魅せてくるとか、ちょっとご都合主義的なものが多い印象があるのですが、
本作は読者にもフェアに、すべてが開示された形で話が進みます。
初版の単行本の帯に「青崎有吾ガチで勝ちに来てる」と書かれていましたが、まったくその通りで、ガチで勝ちに来てます。
水鏡月聖『僕らは「読み」を間違える』
こちらは学園ミステリで、かつ、ビブリオミステリとなっている作品です。
ビブリオミステリというのは、ほかの本(特に古典)を題材にしたミステリのことを指します。
この作品の特筆すべきポイントは、その水が上から下へ流れていくような鮮やかなストーリーラインです。
題名にある通り、登場人物たちは『読み』を間違えて、たがいにすれ違い合っているのですが、そのすれ違い方がわざとらしくないというか、こんなにも自然に、ここまでも潰滅的にすれ違うことがあるのか……、とストーリーの構造が非常におもしろいです。
2巻が出てからしばらく3巻が出ていなくて心配なのですが、スニ文にはほんとうにお願いだから続編を出してくれ! 後生だから!!!! ねぇ! スニちゃん!!!!
倒叙
倒叙は、最初に犯人が誰か明かされるタイプのミステリです。
今季のアニメ『小市民シリーズ』を見ている人なら、ちょうど6話『シャルロットは僕だけのもの』がちょうど倒叙になります。
倒叙は少し特殊ではあるので、あまり初心者向きではないかもしれませんが、いちおう載せておきます。
石持浅海『扉は閉ざされたまま』
最初に犯人はわかっているので、ここでも話しちゃいます。
それは主人公です(それはそう)。
同窓会の集まりがあり、主人公はそこでひとりの友人をその友人の部屋で殺害します。
証拠も一切残さず、完璧に自殺に偽装ができた。あとはできるだけ発見を遅らせるだけ。
まさか誰もあいつが死んだとは考えない。部屋で寝ているだけだ……と。
それなのに、どうして!
……といった感じです。
主人公の視点で書かれているので、探偵役の碓氷優佳に追い詰められていく感覚を直に味わえます。ゾクゾクします。
相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』
注意! 前作『medium』を読んでいな人はさきに『medium』を読んでください!
<城塚翡翠シリーズ>の第二作『invert』です。
霊媒探偵と名の通り主人公は「霊視」を使って推理を繰り広げます。あまり多くは語れないのですが、『medium』を読んだ人向けに一言。
「だいじょうぶです。しっかり、あります」
『medium』であれだけ暴れておいて、『invert』でもこれだけ暴れられるって、まじでどうなってるんだ……。
今回は、好きなミステリについてと、初心者のおすすめ作品を挙げました。
次は、純文学とSFについて紹介したいと思っています。
(同じ記事にするつもりが、分かれてしまいました)
ほかの本紹介はこちら↓↓↓
では、またどこかでお逢いしましょう。
胡乱布団
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