記事一覧
くらましさがし/Hide and Seek
愛情は較べるものではない。これはあまりにも明らかなことなので誰かに話したり書いたりすることでない。だから、こういう秘められた事柄は自分で覚えておかないと忘れてしまう。油断しているうちにみんな忘れてしまう。忘れてしまうということはしかし、思い出せるということ。覚えているあいだ、人は思い出すことはできない、なぜなら常にそのことを思っているのだから。思い出せるのは忘れた人だけ。忘れるから思い出せる。思い
もっとみるIn the Corner of Gate F4 at ATL Hartfield International Airport
I’m leaving.
For Japan.
Damn.
Damn, the black boy's voice
His phone's battery was out and I lend him power charger
He didn't say anything that I expected to hear, Thank you or something.
I am a Damn J
The Window in the Library
Cool. No noise.
Each footsteps sink in the carpet.
Someone’s index finger walk through the index of a book.
But most of people in the library do their homework.
A bunch of homework.
As though they p
どっち / Which
山林の入り口に到着しなだらかな
坂を登りはじめた私の肩にかかった
リュックサックのなかの
サンドイッチが二、三度傾く感覚を
たえず持ちながら
山道に差し掛かったとき
ふいに背後に振動を感じた
私は振り返ることすらできず
道端に咲いていた土筆と共に立ち尽くしたそのとき
遺言を書いてこなかったことが頭をよぎった
筆をとるには遅すぎた
狙いはサンドイッチだろうかいや私かどっちだ
パンの間に挟んでいるハム
はるのにおい
ただどうしようもなくむせかえるようなはるのにおい
いちばんにかけのぼってきたのは切れ目のない
上へ下へ土をつきやぶり
朝ベッドで目を覚ますわたしのように
寝そべったまま足をのばし拳をつきあげ
鼻から息を吸い込めば
ただもうはるのにおいがする
遠くの方にも近くの方でも
いくつものはるのにおいがする
いつかいなくなってしまうものたちへ
転んで擦りむけた手のひら
聞こえていた鬼の唸り声
いつまで経っても来ないバス
いつかの悪夢で見たおんな
障子の穴
日韓ワールドカップの目覚まし時計
小学校の先生が持っていた赤鉛筆
プールで冷え切った身体のさみしさ
友人をいじめる声
家の庭の土にメッセージを刻んで帰った友人
2階から落ちた雀
・
・
・
ただいまがとぎれないように
1
アルミの水筒の底に氷がぶつかるたびに、冷たい音が部屋の中に響いた。
「お兄ちゃん。いま氷何個?」
「知らない。五つくらい入れたかな」
「もっと入れて。」
「もうないよ。昨日食べ過ぎたんだよ、きっと。」
「はやく」とシゲルは玄関のドアを開けたり閉めたりしながら兄に訴える。
コウタはそれを聞きながらペットボトルのお茶をつかみ、水筒の中へ注いだ。とここという音を立てて、氷が