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うろこ流! 小説の書き方講座 #10[設定は出し切るべき?]
どもどもー! 流石に十回を迎えたので苗字いじりから解放されたい洞施(うろせ)うろこです。読み方覚えていただけました? まだの人はぜひ覚えていってね!
普段はボーイミーツボーイでラヴィ! なWEB小説やそんなボーイズのイラストを書(描)きながらTwitter、投稿サイト界隈をうろうろしています。
そんな小説書き歴の長い素人が初心者向けに送る小説の書き方講座。第十回は『書くことと書かないこと』についてお話しましょう。れっつどぅでぃす!
第十回『設定は出し切るべき?』
小説を書くにあたって、プロットから世界観、キャラクター設定、独自のメカニズムや能力、トリックなどなど……それはたくさんの事柄を定めました。 その設定を元にいざ! と書いていくわけですが……あれ、書いても書いても書ききれないよ……? まだまだ設定の半分も説明できてないのに!
と、ここでひとまず手を止めて、お茶でもどうぞ。落ち着いたら、改めて書き上がった部分を読んでみましょう。
どうです? 何故かやたらにクドく感じませんか?
設定を練り込むのは大事。それを伝えるために言葉を尽くすのも大事。それなのに、どうしてしっかり書き込むとクドく見えてしまうのでしょうか。
思い付く点を挙げながら、考察していきましょう。
・ストーリーに必要な情報なのかどうか。
例えば、舞台は閉鎖的な村。ちょっとしたトラブルにより土地神さまに付きまとわれてしまった少年の、ドタバタコメディを書くとしましょう。
ストーリーはそうですねぇ……土地神さまのせいで好きな娘とラッキースケベ的な展開が起こってしまい、彼女が口を聞いてくれなくなってしまいます。その後すったもんだがあり、うふふな事件が土地神さまによって引き起こされたと知った彼女が謝ってくれたのですが、また土地神によるちょっとえっちな出来事があって再び怒られてしまう……というありがちなものにしましょうか。
さて、このストーリーを書くにあたって、まず世界観を決めます。閉鎖的な村……土地神さまがいるくらいなので、祠のようなものはあるでしょう。そういう土地なら夏か秋にお祭りがあると予測されます。閉鎖的であるというなら、お祭りはさぞかし盛り上がることでしょうね。
山と海に囲まれていて、過疎化が進んでいる。学校は分校かもしれません。それだけ過疎化しているのなら、きっと駄菓子屋さんやコンビニは一軒ずつ。スーパーもそんなにはなさそう。デパート? おそらく車で一時間以上かかる場所にあるに違いありません。特産品……そうですね、果物のびわとかどうでしょう。
と、出来上がった村の背景ですが、この内、ストーリーに必要な部分はどの辺りだと思いますか?
土地神さまに付きまとわれるという件があるので、祠の描写は必要になるでしょう。背景として過疎化が進んだ閉鎖的な村である点。海と山に囲まれている。好きな娘が出てくるならば学校が分校だという情報は要りますね。あとは……駄菓子屋とかコンビニはストーリーの舞台に使われるかもしれません。
と、大体はこれくらいで……って、あれ? 使わない設定があるんだけど……?
そうです。細かい設定があれば物語に深みが出るとは言っても、それが全てストーリーに繋がるわけではないんです。
・考えた設定がもったいないんだけど……
せっかく細かいところまで考えたのに、使わないんじゃもったいない。それぐらいなら考える必要なかったのに!
そう思ってしまうのも分かります。けど設定が細かければ、キャラクターの行動を描く際に作者側での理屈付けができますし、ブレることがなくなりますね。
舞台背景も然りです。例に出した過疎化した村も細かく設定しておかないと、うっかりデパートが建ったりするかもしれません。
ストーリー上で出すことのない設定でも、あるのとないのでは説得力が変わってきてしまうんです。
出せないなら無駄、などと考えずに、物語を支える骨組みなんだと思って設定してくださいね。
・本当に出さなくていいの?
私はキャラクター重視型の創作者なんですが、練ったキャラクターの設定は相当な長編でもない限りは三割程度しか出してません。
それでも何の問題もなくストーリーは成り立ってしまうものなんですよね。ちょっと寂しい。
プロットについての講座(第二回)の時に自作『灰色の山羊は深淵に沈む』のキャラクター設定をチラッとお見せしました。
設定を貼り付けるとこんな感じです(下にもうちょっと続く)
主人公その一の葉月ですが『交通事故で亡くした母の死に際に冷淡な事を考えてしまい、その所為で無自覚の自己嫌悪に陥っている。』という、要素としてはかなり大きい設定がありますが、実際に本編に書かれた部分は『母は三年前に他界し』という言葉だけ。
敢えて言うならば、彼は何かと『自分には関係ない』と逃げの姿勢をみせるのですが、設定にある自己嫌悪がその思考の元になっているくらいです。
主人公その二のクロに至っては、『シュブ=ニグラスの仔』で『何代目になるか分からない』ということすら本編に書かれません。
一応、クロが自分を説明する際に『黒い仔山羊』という単語を出すのでクトゥルフ神話を知る方なら理解できますが、他の読者は分からない書き方をしています。クロがシュブ=ニグラスを呼ぶ時は『 』と葉月には聞き取れない表現をしますし、更には概ね『偉大なる母』と呼んでいますので。
これだけの大きな要素を書かなくても、悲しいかな、ストーリーの進行に問題はないのです。
本当に問題はないの? と思った方は下のリンクからどうぞ♪(あからさまに誘導)↓↓
【灰色の山羊は深淵に沈む】
ゴア表現あり、女性の陵辱表現ありの人外による強制仔作りBL(ボーイズとは……?)という『エログロナンセンス』な小説なのでかなり人は選びますが……
あ、セルフレーティングでR18にしてあるので、きちんと規約は守ってくださいね!!(大声)
とはいっても、書かなくてもいい、なんてことを言われただけじゃ納得できないですよね。というわけで、『書かないこと』による利点を考えていきましょう。
・『書かないこと』の利点。
結論から言うと『ストーリーがスッキリとして見せたい部分が際立つ』点です。
粉の中から飴玉を探すゲーム、ありますよね。顔が粉だらけになるアレです。
飴玉を見せたい部分と仮定して、粉を諸々の設定とします。
さて、飴玉を探しやすい粉の量はどれくらいでしょう。多い方がいいですか? 残念ながら、そうではないですよね。
なら粉なんかない方がいいのか、というとそうでもない。だって、粉がないとゲームは成立しないし、見ている側が面白くないからです。
いざという時に足せるように手元には粉(設定)をストックしておいて、ゲームに最適な量を出すのがベター。見ている側が面白くなるような配分を計りつつゲームを盛り上げるのが最善です。
『書かない』という決断はなかなか難しいですが、これもストーリーを盛り上げるためですので涙を呑んで隠しておきましょう。
・『書かない』……からの『書く!』手法。
ここからは『書くこと』を前提にして『書かない』というお話です。
何を言っているのかって? とある手法の話です。
みなさま、叙述トリックは好きですか? 私は殊能将之氏の『ハサミ男』で衝撃を受けました。メフィスト賞受賞作はやはり凄い……
映画化されていますが、原作を読む予定がある方は映画のあらすじも見ない方がいいかも? 重大なネタバレが含まれてしまうので。
映画も観ましたが、個人的な評価は微妙なところ。原作を映像化する時の問題点を上手く乗り越えた意欲作ではあるのですが、如何せん終盤の展開が改悪としか感じられなくてモヤモヤしたんですよね――というのは閑話休題。
『書くこと』を前提にして『書かない』というのが、いわゆる伏線であり叙述的に潜ませるトリックです。
作者の知っている設定を敢えて『書かないこと』で隠し、ここぞというところで『書くこと』で読者に提示する。これが伏線・トリックの基本です。
伏線の回収については実は読者の受け取り方によるところもあるので(これ、本当にそうなんですよ……読者側としての自戒も含め)議論が難しいですが、上手く回収できれば読者にいいインパクトを与えることができます。
叙述トリックもそうです。クライマックスまでミスリードされていた『思い込み』が崩れる瞬間。読者側に与えるであろう衝撃を思うとワクワクしますよね。
このインパクトを呼び込むために、終盤の『書くこと』を想定した上で『書かないこと』を決め、それに徹底する。ある意味、読者との頭脳戦です。どうです? 書き手としてはなかなかに興を引く話じゃありませんか?
ぜひとも『書くこと』を意識して、上手に『書かないこと』を選んでくださいね。
いかがでしたか? 今回は意外に重要な『書かないこと』についてお話しました。
書くことはよく意識しますが、その逆はなかなか思い至らないですよね。ここを意識できるようになると、出すべき情報がどんどんブラッシュアップされますよ。
次回は物語と言えばこれ! 『比喩表現とオノマトペ』についてお話しようとおもいます。
ではではー、またお会いしましょう。洞施うろこでした。
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