うろこ流! 小説の書き方講座 #4[キャラクターってそんなに大事?]
どもどもー! 「苗字読ませる気ゼロなんですか読めません」でお馴染み洞施(うろせ)うろこです。
いつもはボーイズやメンズがあーしてこーしてラヴィ! なWEB小説やそのキャライラストなんかを書(描)いてTwitter・投稿サイトをふらふらしています。
さてさて、小説書き歴が長い素人が初心者に送る我流小説講座。第四回目は『キャラクターってそんなに大事?』といった内容のお話になります。じょいなす!
第四回『キャラクターってそんなに大事?』
今回のテーマはキャラクターです。登場人物の個性ですね。
『キャラクター重視型』の創作者さんにはあまり需要のない記事かもしれません。書きたい中心がキャラクターなので、その練り方は独自に確立されていることでしょう。
なので、今回は『キャラクター重視型』創作者さんにはおさらい程度、『ストーリー重視型』創作者さんにはキャラクターの大切さをしっかりねっちょり(!?)語っていきたいと思います。
・キャラクターとは?
言うまでもなく登場人物のことです。
小説におけるキャラクターは、時に読者の視点となり、時に読者に嫌悪感を与える存在になります。感情移入ができるキャラクターがいればそれだけ物語に没頭してもらえるようになりますね。
ぜひとも魅力的なキャラクターを生み出して、小説の世界に読者を誘いたい! 書き手の夢でもあります。
では、いいキャラクターを生み出すってどういうことなのでしょう。ここからは私の主観なんかも交えつつ、考えてみたいと思います。
・共感してもらえるキャラクターを目指す。
現実でもよくあるパターンですね。怖いと思って避けていた先輩と話さなきゃならなくなり共通の話題を探していたら、なんと、音楽の趣味が自分と丸被りだった! 結果その話題で盛り上がって気付けば仲良しに……なんて感じです。
創作小説のキャラクターと音楽の趣味が被るのはそうそうないですが、日々のちょっとした主張(砂糖の入ってないコーヒーなんか飲めるか! とか)やコンプレックス、変な趣味などなど。自分と似通った点を見つけるとちょっと親近感が湧きますよね。
少女マンガだったりスポ根ものだったり、そういった主人公によく使われる手法だと思います。
一見これといった特徴もない普通の女の子が主人公の恋愛小説……なんてよくありますよね。
最近では陰キャで誰とも話せないけど、ネトゲではチート級なんてキャラクターも増えてきましたが、これもどちらかと言えば共感を狙ったキャラクターでしょうか。ちょっと分かるのが悔しい。
さて、読者と似通ったキャラクターで共感を得るところまではよしとして、問題はここからです。
本当に、自分と全く同じようなキャラクターは魅力的に映るでしょうか?
残念ながらこれはNOだったりします。
みなさん、自分大好きですか? とか聞いておいてなんですけど、いくら自分が好きな人だって創作物の中でまで自分(とよく似た人)の人生を応援したいとはならないと思います。
そうなると、キャラクターには共感プラスαの魅力が必要ですよね。そう。追いかけたいと思わせるくらいの魅力が。
その魅力を足す方法の一つとして、『努力』があります。必死に頑張っている姿……それも、自分と似た部分があるキャラクターが積む努力には、応援したいと思わせる魅力が表れるのではないでしょうか。
『隠れた才能』や『選ばれた血筋』なんかもある種の魅力ですが、共感型のキャラクターには逆効果になる場合もあるので、使いどころは慎重に。
・コイツはそういう奴だと思えるキャラクター。
現実にもいるかもしれない、『あー、〇〇だもんな』と言っちゃいそうなキャラクター。
これは、良くも悪くも言動に納得してしまうというキャラクター像です。
こういったタイプのキャラクターは、以前は主人公の友人といった立ち位置が多かったような気がしますが、近年では主人公にも適用されていますね。
このキャラクター像の利点は、ストーリーをぐいぐい引っ張ってくれるペースメーカーになりうる点です。
少年マンガの主人公なんかに多い印象があります。強引だけど、コイツだから仕方ない。そんな理由で周囲を巻き込みつつ強敵に挑んだり。
ストーリー重視で小説を書く方には扱いやすいキャラクターになると思います。
このタイプは時折意外性を持たせたり、影を見せたりするとギャップに萌える可能性もあるので、そこら辺は使い勝手がいいかもしれない……なんて。
上手く扱うと非常に魅力的になりますね。
・スーパーチートキャラ・スパダリ・完璧ヒロインなどなど。
みなさん『俺TUEEEEEEE!』は好きですか? 私は苦手ながら、一定数の需要があるのも理解できるキャラクターです。
俺様最強! は爽快感を与えてくれるし、スパダリは痒いところに手が届く徹底ぶりにうっとりできますし、完璧ヒロインは主人公の目を通して自尊心を満足させてくれます。
そう、謂わばストーリーにおいてもチートなキャラクターです。
だって、現実じゃ届かないものが近くにある満足感って、ちょっと抜け出せそうにない沼ですよね。
全てを屈服させる最強の力が、絶世のイケメンが、慕ってくれる美少女がそこにいるわけですもの。
これは、キャラクターの魅力のみでも作品に引きずり込めるという利点があります。
カッコいい、可愛い、綺麗、素敵、そんなキャラクターが人を惹き付けないわけがない。
……ですが。
正直、素敵な部分だけでは飽きるのも早いです。「美人は三日で飽きる」という言葉もある通り、慣れてしまうと「あー、うん」となる危険も伴います。
この場合、何かしらの欠点だったり弱い部分を作るだけでもだいぶ読み手に寄り添えると思います。
何の欠点もなかったはずのチート能力に能力ゆえの弱点ができてしまい焦る主人公……ここからまた熱い展開が作れそうですし、今までなかった焦りに読み手の興味が惹かれる、なんてこともあり得ますよね。
スパダリなら欠点を補ってあげたり、完璧ヒロインなら守る理由ができたりと、主人公にリードを許す部分があったら萌えちゃいます。
・思い切った悪役。
読んで字の如く、悪事を働く役割のキャラクター。
これは何パターンかに別れるかと思います。
人気が高い悪役キャラクターは、自身の信念を曲げずに主人公と対立するタイプや、悪に染まるしかない悲惨な過去を持ったタイプですね。
自身を貫き通そうとするキャラクターは善悪の差はあれど輝きますし、悲惨な過去を背負ったキャラクターは同情からの共感が得られます。
しかしながら、悪役としてはなかなか扱いづらくなるかもしれません。
下手に魅力を持たせ過ぎたら、ポイっと使い捨てるような扱いはできなくなりますからね。
なので、主人公の正当性を保つための邪悪で醜い悪役というのも必要な存在です。
私利私欲に走る。強者に巻かれる。何を犠牲にしても自分の保身を第一とする。傲慢な態度でただ弱者を甚振るなどなど……
こんなヤツ生きてる価値なんかない! くらいの清々しいまでのクズ野郎を書いてしまいましょう。残念ながら使い捨てるために生むキャラクターなのです。
正直、こんな扱いをするのは酷い気もしますが、ストーリーを盛り上げるために必要不可欠なキャラクターとして、使い捨てられるキャラ生を全うしてもらいましょう。
・キャラクター作りは分かった。しかし重要性は?
このように、キャラクターの魅力と役割を考えながら一人一人舞台に生み出していきます。主人公、ヒロイン、友人枠、敵側の重要人物辺りは最低限。余力があればチョイ役で準レギュラーくらいのキャラクターにも細かい設定を付けてあげられるといいですね。
と、ここで恐らくキャラクター重視型の創作者さんは「うんうん」と頷き、ストーリー重視型の創作者さんは「面倒くさくないか?」と首を傾げているのではないでしょうか。
ここでストーリー重視型の創作者さんに、キャラクターの重要性をねっとり……じゃない、じっくりと説明しましょう!
『キャラクターとは?』の項でも言いましたが、感情移入できるキャラクターがいれば物語に没頭してもらえるようになります。小説(特にエンタメ小説やラノベなど)はストーリーに浸って楽しむものだからです。
だから、ストーリーに浸らせるなら物語に出す必要のない項目なんて練らなくていいし、何ならキャラクターには演じてもらうだけでいいんだからもっとストーリーに時間かけるべきだろう。
そう考える方もいらっしゃると思いますが、まあ聞いてください。
WEB小説でも商業作品でもいいんですけど、読んでいて(このキャラ、何か機械っぽい言動するな)なんて感じるキャラクターに出会ったこと、ありません? 確かに場面に沿ってはいるけど、動きがテンプレに見えていたり、キャラクター自身の意思が見えなかったり。
その違和感が『キャラクターに演じてもらうだけ』の弊害だと思います。
A君という男の子がいたとします。大好きなB美ちゃんと遊園地に行きます。でも高い所が苦手です。
さて、B美ちゃんが観覧車に乗ろうと言ったので勇気を振り絞って乗りました。
例1:
「見て見てA君! ここから学校が見えるよ!」
「そ……そうだね……」
B美ちゃんがそう言うけど、僕は外を見る勇気が湧かなかった。高い所が苦手だって彼女には伝えているはずなのに。
さて、ここにもっと詳細なキャラクター設定を加えましょう。
A君は普段は強気な男の子で、B美ちゃんにも俺様な態度で臨みます。でも好きの裏返しです。
B美ちゃんはそれも理解しているし、A君のことは憎からず思っています。でも強気でこられることにちょっとご立腹。これらの情報は例文には隠しておいた上で、例1のやり取りに加えられる情報を足していきましょう。
例2:
「見て見てA君! ここから学校が見えるよ!」
「そ……そうだね……」
B美ちゃんがそう言うけど、僕は外を見る勇気が湧かなかった。チラッと彼女を覗ってみれば、意地の悪い笑み。高い所が苦手だって彼女には伝えているはずなのに。いつもの意趣返しなんだろうか。
と、キャラクター設定を決めた途端に無邪気に見えたB美ちゃんが小悪魔に。更には怖がっていただけに見えたA君の内心面白くない様子が書き加えられました。
キャラクター設定が決まっただけで同じ台詞、シチュエーションのはずなのに雰囲気がガラッと一変。もちろん、例1の雰囲気をそのまま強化することもキャラクター設定によって可能です。
では、B美ちゃんを少しうっかりな天然さんに、A君を気弱な少年にして、ようやく誘えたデートの場面に臨んだと仮定しましょう。
例3:
「見て見てA君! ここから学校が見えるよ!」
「そ……そうだね……」
B美ちゃんがそう言うけど、僕は外を見る勇気が湧かなかった。手足が震えそうなのを押さえるのが精一杯だ。高い所が苦手だって彼女には伝えているはずなのに。でも、それを忘れちゃうくらいに、はしゃいでくれてるのかも。だとしたら、楽しい時間を壊したくないし……
ウジウジA君と、A君をうっかり忘れちゃうB美ちゃんの誕生です。
このように、キャラクター設定を細かくしていくと、心情や行動を無理なく付け加えていけるようになります。そうするとあら不思議。そこに存在しているかのような人間味が増してきますね。
キャラクターに深みが出れば単純に書ける情報量も増えますし、その分、読み手に伝わることも多くなりますよ。
・キャラクター重視型じゃないんだけど……
そうは言っても、ストーリー重視型の創作者さんは書きたいストーリーをキャラクターに邪魔されたくないですよね。
だから、キャラクターの方をストーリーに沿うように変えていくのも手だと思います。
ストーリーを考えて、その行動を取らざるを得ない性格・口調に改変。引っ掻き回される前に引っ掻き回せばいいのです。
その意味では、ストーリー重視型の創作者さんはキャラクターデザインをきっちり決めた後にプロットを整えた方がいいかもしれません。キャラクターをしっかり型にはめてから、書きたいストーリーを書いてください。
・つまり、キャラクターに深みが出ればいい。
キャラクターは読者を惹き込むための触手です(例えが……)
そう考えると、重要度が理解してもらえるかと。
キャラクターを考えるのが苦手なのであれば、ストーリーに必要な性能を乗せる演者を育てるつもりで考えていくのも一つの手。深み、人間味が出ればそれでいいんですから。
ただ、キャラクターなんてコマなんだから、と軽視はしないでくださいね。舞台に立つ演者を如何に魅力的に育てて読者に見せるのか、監督たる作者の腕の見せ所でもありますよ。
キャラクター重視型の創作者さんにはあまり有益な情報はなかったかもしれませんね。今回は得意分野のお話でしたので。おさらい程度の感覚で読んでもらえるとありがたいです。
いかがでしたか? ストーリー重視型でもキャラクターは練っておいた方がいいですよ、というお話でした。
書ける情報量が増えるというのはとても大きいですからね。これだけでも有益じゃないですか。
さて、次回は『○人称って何? 視点って?』というお話をしたいと思います。
ではではー、またお会いしましょう。洞施うろこでした。
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