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『Secret Mirage』と《二重密室の崩壊》

・はじめに 以下の文章は、『アイドルマスター シンデレラガールズ』の楽曲のひとつRêve  Pur『Secret Mirage』を取り扱った考察記事です。 内容自体はなんとなく二部構成になっていて、第一部はフランス文学、なかでもボードレールやマラルメが Rêve Pur という言葉をどのように扱ったかーーという実例から『Secret Mirage』の秘密に迫ろうと試みました。 流れとしては、この追跡行の中で「彼らがポオから受けた影響のうち、もっとも目につく仕掛けのひと

    • 水本ゆかりと《エルドラドの蝶》

      今回の考察は、モバゲー版シンデレラガールズにおける水本ゆかりの到達点ーーもっと徹底的な言い方をするなら、水本ゆかりの最長不倒距離としてのSR[サプライズ・テンポ]+について、あれこれ述べてみたいと思います。 本来ならRêve Pur『Secret Mirage』考察における注のひとつに収めるつもりの内容だったのですが、「ちょっと話が膨らみすぎた……」というアレな理由から、単独記事として公開することにしました。 この考察はそこそこ長文なわりに結論は驚くほど単純でして、要約す

      • デレマス公演世界についての一試論

        この考察メモは、シンデレラガールズのアイドルたちがチャレンジしたお仕事のうち、もっぱら演劇というジャンルに注目するものです。 具体的には「最初の幻想公演から最新の綺羅公演まで、試しに全部つないでみたら、舞台の全体像はどういうことになるの?」みたいな内容を扱っています。 確実なところから「本気で言ってたらヤバい人ですよ」というところまで、こまごまと書いてみました。「それはそうね」と「ヤバババ」の境目を見極める間違い探しゲームみたいな感じで、お楽しみいただければ幸いです。 *

        • プリティ・グールズと《おてんば姫の戴冠》

          「いつか語りたいな」と思いつつ、実際に書きはじめると何度も没が続いてしまうーーそういうことって結構あると思うんです。中でも私が手を焼いていたもののひとつが、プリティ・グールズでした。 プリティ・グールズは、モバゲー版シンデレラガールズの御伽公演『おてんば姫とまぢヤバな魔法のランプ』に登場したライバルユニットです。 「終盤に登場するけどラスボスではなくて、5戦して台詞をコンプリートできたらそれでオッケー」みたいなポジションにあたります。 ところが、ですよ。このユニットには終

          水本ゆかりが師事するその人について

          1、はじめに 「鎖の頑丈さは、そのもっとも弱い環によって測られる」という言葉があります。この発想を推し進めるならば、水本ゆかりの魅力やコミュの面白さは、そのもっとも不可解なものによっても紹介しうるかもしれません。 無神経にネガティブな話題を持ち出すようで恐縮ですが、よく考えてみると、もっとも不可解な水本ゆかりのコミュとはどんなものでしょうか。 記憶の引き出しをあちこちひっくり返してみた末、私自身が喜びよりも先に幾分の動揺を感じたケースとして、ふたつの場面を思い浮かべること

          水本ゆかりが師事するその人について

          《黄色い犬》の冒険

          私たちは たくさんの真実に似た虚偽を話すことができます けれども 私たちは その気になれば 真実を宣べることもできるのです                 ――ヘシオドス『神統記』  ある日、水本ゆかりが目を覚ますと、そこは事務所――ではなく古代ギリシアの神殿でした。  より正確にお伝えするなら、アテナとアルテミスの宴が開かれた翌日の、エレクテイオン神殿です。女像柱(カリアティード)の支える玄関口から少し入ったところに設えられた簡易寝台で、水本ゆかりは目をぱちくりとさせてお

          《黄色い犬》の冒険

          八神マキノ、青森四姉妹を調査する(後)

          4、宗像三女神  八戸(名久井)工藤は、犬房丸の血筋であるという。  彼らは津軽黒石に進出することを望まず、八戸・名久井方面に引き返して、一族存続の道を捜した。  たとえば、八戸の蕪嶋神社は、犬房丸と関わりがあり、弁才天(=宗像三女神)を祀っている。  蕪嶋のあたりは八戸藩唯一の港だったというから、航海を守護する女神を祀るのは、当然のことともいえる。  ただ、この神社の創建は1296(永仁4)年と伝わっていて、まだ幕藩体制における八戸藩・南部藩が成立する以前から存在して

          八神マキノ、青森四姉妹を調査する(後)

          八神マキノ、青森四姉妹を調査する(前)

          序、あるいは但書  あらかじめ注記。この文書は情報の種別として「情報提供者・Pが花見の酔いに任せてまくしたてた話」etc. を私自身が随時録音、あるいはメモしたものに過ぎない。  しかしその中には、アイドルグループ『青森四姉妹』所属メンバーに関する独自の内容を含んでいる。  これがファタ・モルガーナの浅利七海を知る手がかりになれば、とは思うのだけれど……。同じくユニットメンバーの大石泉に関しても、その置かれた状況など、面と向かって問い質しにくい事項は少なくない。  ひとま

          八神マキノ、青森四姉妹を調査する(前)

          高垣楓と《葦そよぐ新天地》

          1,はじめに モバゲー版シンデレラガールズのSR[新緑の淑女]高垣楓+は、豊かに葦の茂る風景の中に、白い鳥の群れを従えた女神のような姿をみせてくれます。 このロケ地がどうも、スパルタ近郊のエウロタス河畔だったのではないか。少なくともその地をイメージしていたのでは? ……というのがこの考察の出発点であり、終着点です。 スパルタというと、我々にはどうしてもレオニダス王や「スパルタ教育」という言葉によって代表される(つまり紀元前480年頃の)軍国主義イメージが強いものと思われま

          高垣楓と《葦そよぐ新天地》

          水本ゆかりと《賢者の石》

          「なんだろうこのタイトル。ハリーポッターのパロディかな?」……そんな風に感じてこの記事に飛んできた方もいらっしゃるかもしれないので、念のため、冒頭から注意書きを掲げておこうと思います。 これは二次創作SSではなく考察です。具体的にはシンデレラガールズが誇るKawaiiアイドル・水本ゆかりを、グラブルのイベント『Astray Alchemist』の文脈で徹底分析してしまおう! というものです。 もっとわかりやすく言うと、この考察はグラブルのカリおっさんを特別講師にお迎えして

          水本ゆかりと《賢者の石》

          水彩のハルモニアと《彼岸の楽園》

          シンデレラガールズには、それはもう数知れず、たくさんのユニットがあります。そんな中でも記憶に残りやすいのは、やはり文章量の多いイベントに登場したユニットである――ということになりがちかとも思うのですが、かといって我々は台詞の長い短いだけで「むっ、これは…!」と目を瞠るわけではないというのも、また確かなことではないかと思われます。 たとえば、水彩のハルモニアなどは、2014年春のドリームフェスティバルにたった一度だけ登場したユニットであり、台詞も5つしかありません。にもかかわ

          水彩のハルモニアと《彼岸の楽園》

          水本ゆかりと《情熱の赤》

          最近、[純粋奏者]水本ゆかりに声がついたり、SSR[ビターエレガンス]東郷あいが登場したりといったことが続いたので、ゆかりとあいさんの関係について私個人がとりとめもなく考えていたことなどを、整理しなおしています。 それで、ゆかりとあいさんの関係の出発点になっているのは、[純粋奏者]なわけですけれども。 ゆかりは結構、有言実行の人というか……誰とユニットを組みたいか、どんな仕事をしたいかをはっきりPに伝える性分なんですね。そしてPは基本的に、それを実現させる方向性でやってきて

          水本ゆかりと《情熱の赤》

          一ノ瀬志希と《水鏡の迷宮》

          一ノ瀬志希の魅力のひとつとして、「また志希にゃんがPくんのシャツをハスハスしてる……」というような光景を(原作準拠にせよ二次創作を含めるにせよ)簡単に想像できる点が挙げられると思います。 ところでこの「Pのシャツを勝手に拝借する」という行為は、もしかすると「天女の羽衣を奪う」行為に比すことができるのではないか――そんな思いつきを『秘密のトワレ』の歌詞とつなげてみたのが、今回の考察です。 羽衣伝説(あるいは天人女房説)に関連するものとして、白鳥処女説話と呼ばれるジャンルがあ

          一ノ瀬志希と《水鏡の迷宮》

          水本ゆかりとギリシア神話 #4(完)

          前回#3で言及した女神ハルモニアは、英単語"harmony"の語源となったことでも知られています。そして水本ゆかりもまた、「ハーモニー」という言葉とともに歩み続けてきたアイドルです。 そこで今回はまず、私の気付いた限りのゆかりハーモニー語録(?)を挙げておきたいと思います。テキスト整形しにくかったので表にしてみました。 2014年に空白期間がありますが、これは[ヴォヤージュ・ヒーラー]登場の後、 [自然なテンポ]までおよそ11か月の空白があった時期と重なっています。 その

          水本ゆかりとギリシア神話 #4(完)

          水本ゆかりとギリシア神話 #3

          水本ゆかりは、ウェディング関係の仕事を二度経験しています。 今回はその点に着目して、水本ゆかりとギリシア神話の女神ハルモニアの接点を探ってみようと思います。 さて、ギリシア神話でウェディングといえば、普通なら婚礼の女神ヘラの名前が真っ先に挙がるはずです。 にもかかわらず、私は調和の女神ハルモニアの名前だけを持ち出しました。 これがなぜかというと、ヘラは一度しか結婚していないからです。 ハルモニアは二つの点で、特別な結婚式を挙げた女神といえます。 まずひとつ、彼女は人と結婚

          水本ゆかりとギリシア神話 #3

          ノーブルセレブリティとギリシア神話

          現時点で、「水本ゆかりとギリシア神話」をその2までお届けいたしました。 前回の考察では[素顔のお嬢様]水本ゆかり+とイピゲネイアの関連性について詳しく述べたつもりですが、その一方で私には、[お嬢様の一幕]涼宮星花+に言及する余裕が、全くありませんでした。 しかしお揃いの衣装デザインまでいただいている仲ですから、やはり彼女についても是非ふれておきたいものです。 そこで今回はまず、共通する衣装を備えた星花・ゆかりのユニゾンデュエットが古代ギリシアの姫君たちをモチーフとすること

          ノーブルセレブリティとギリシア神話