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はじめて自分で選んだ部屋で

先週、新居を決めた。
2020年、久しぶりに始まった一人暮らしにも慣れてきたけど、1人には贅沢なこの部屋に如何せん収入が追いつかない。

それなのに、まったく部屋を探していないという状況。
部屋を探し出す前の「捨てる」という作業がしんどくて現実逃避で見て見ぬふりをしているのかもしれない。
写真を捨てないと、大きすぎるベッドもソファーも捨てないと、多すぎる食器を捨てないと、2人を思い出すものは捨てて、自分で選んだものだけを手元に残そうと思った。

幸い、コロナの自粛期間は部屋探しにうってつけだった。部屋の片付けもせず、ただただ賃貸サイトを見ていた。
そういえば今まで、大学の試験を受けたその日に急いで決めた部屋だったり、会社の寮だったり、相手が決めた部屋だったり、一人で部屋を選んだことがなかった。

初めての一人暮らしは大学生で木造の1K、隣の部屋の話し声がきこえた。家具はIKEAの1番安いものばかりだった。
就職で引っ越して、会社の寮だったそこは新築だけどワンルームで風呂トイレが同じだった。
初めて2人で暮らした部屋は、部屋の広さは充分だけど昼間でも電気をつける陽当たりの悪さだった。
そこから川沿いに引っ越して、隣の部屋の声も聞こえない、独立洗面所も宅配ボックスもある、陽当たりのいい部屋だった。
ずっとここに住むと思っていたんだけどなぁ。

かなしいので、次に住む部屋は妥協しないと決めた。
駅から徒歩10分内で、築浅で、オートロックで、2階以上で、独立洗面所で、収納が大きくて、2口コンロで、宅配ボックスがあって、スーパーが近くて、陽当たり良好な部屋。
年々、条件は増えていく。
なにかを選ぶときに無意識になにかは妥協しないといけないと思っていたけど、妥協しなくてもいいのだ。
わたしはわたしを、幸せにしないといけないのだから。
なんで今までこういう風に考えられなかったんだろう。諦めるのが前提になっていた。

あたらしい部屋を決めた日、セブンイレブンでスイーツを買って帰った。
シュークリームのような見た目のもこというそれは、皮が薄いのにもっちりしててブルーベリーのクリームが甘酸っぱくてすごく美味しかった。ちょっと感動しちゃうくらいだったけど、数年後にはきっともうない。
でもそれで良い気がする。

子供の頃に食べられなかったブロッコリーを美味しく感じるように、好きだと思っていたものを食べてもこんなもんだったっけ?と拍子抜けすることもある。

おいしいも変わるし、すきも変わるし、
きらいも変わるし、たのしいも変わる。
じぶんの変化に素直に接してあげたい。

あの部屋でまた生まれ変わったんだと思って生きていきたいな。

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