[#TRPG]#エモクロアTRPG を遊んでみた
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界隈では有名な人が作った(らしい)新作TRPG「エモクロアTRPG」。最近TRPGからは離れていましたが、面白そうだったので遊んでみました。せっかくなので早めの感想を残しておこうと思います。
プレイシナリオ:「新訳・きさらぎ駅」
プレイ人数:PL1人 ディーラー(GM)にて参加
システム面
現代日本をベースにしながらも、超常の存在《怪異》が存在する世界が舞台。世界観が身近で連想しやすく、複雑な設定もないため初見の負担は少なめ。全体的な印象としてはクトゥルフ神話TRPGに近く、良いところを残しつつも不便な部分は残さない、良いシステムだと感じました。
システム-判定
個人的に一番好印象だったのが判定システムです。エモクロアTRPGでは殆どの判定を以下のように行います。
技能レベル個の10面ダイスを振り、判定値以下のダイス(=成功ダイス)の個数(=成功数)を数える。成功数が1以上なら成功し成功数が2,3......と増えていくにしたがって、より劇的な成功になる。また各ダイスの1と0にはクリティカルとエラーが割り振られており、それぞれ成功数が追加で+1,-1となる。
まず、判定方法が統一されていて分かりやすいのがすごく良い。いちいち振る内容を考えなくてよいのはプレイしていて非常に楽です。
また成功ダイスの個数を数えるという方法はどんな判定であっても極端に成功しにくい/しやすいということがなく、PLは常にダイスに賭けることができます。一方クリティカルとエラーの存在によってダイス目が平気でぶれるため、ドラマティックな展開も発生します。振れるダイス少なくても劇的な結果を生むこともあれば、ダイスが多くても多量の0で普通に失敗します。ストレスは少ないながら、ダイスが暴れ得る素晴らしいデザインだと思います。
システム-技能
技能名は一般名詞なため、詳しく知らなくても何の技能か感覚的に理解できました。技能は大きく分けて初めから全員が所持しているベース技能と自分で選択する技能に分けられます。ベース技能の存在によりクトゥルフでありがちだった「とりあえず**にはふらないと」「**がないからシナリオが進まない」といったことがないのは嬉しいですね。
技能はレベル制になっており、各技能について0~3のレベルが存在します。多数ある技能に30の技能ポイントを割り振ることで取得していく仕組みです。レベルは判定でダイスが触れる回数なので高めに設定したくなりますが、それぞれに必要なポイントが1/5/15となっているため、高レベルの技能だけで固めることは不可能です。このポイント配分が絶妙で、幅広く技能を取りながらもキャラクターの個性を出すには十分なポイントになっています。
ただ、技能のなかには単なる判定以上の能力を持っているものがあることに始め気づきませんでした。戦闘のダメージ判定など重要な情報も含まれるので、しっかりキャラ作成をするなら技能一覧は把握しないといけないでしょう。
また、技能は調査系、知覚系などで分類されているが、戦闘技能など判定以外に使える技能を参照する手段が一覧しかないのは不便に感じます。キャラシートに反映するか、どこかにまとめておいていただけると便利かもしれません。
システム-∞共鳴
本作独自要素〈∞共鳴〉は怪異からどの程度影響を受けているかを表す技能です。共鳴判定に成功するたびにレベルが上がり、レベル10を超えてしまうと、人の許容量をこえ逸脱(=キャラロスト)してしまいます。雑に言うとクトゥルフのSAN値みたいなものですね。
共鳴判定はシナリオではこう書かれます。
(例)共鳴判定(強度5/上昇1)∞共鳴感情:[憧憬(理想)
最初よくわかりませんでしたが、結局やることは他の判定と変わりません。書き方はユニークですが、結局公式ルルブPLセクションにあるように
〈∞共鳴〉技能レベル個のD10を振り、強度以下の出目が出れば成功。
の理解でよいでしょう。これに成功したら上昇値分〈∞共鳴〉技能の技能レベルを上げます。感情マッチングは少々複雑ですが、要はPLが同じ共鳴感情を持っていれば振るダイスが増える仕組みで
PLが「∞共鳴感情」と全く同じ「共鳴感情」を持っている。
→振るダイスの数を2倍にする。
PLが「∞共鳴感情」の属性と同じ属性を「共鳴感情(ルーツ)」に持っている。
→振るダイスの数を+1する。
前述した通り判定システムが優れているため、こちらも好感触でした。致命的に増えることも少ない一方、そこそこの頻度で成功するため程よい緊張感を味わうことができました。
ただし、感情共鳴は判定するときに使うから後述しないでもっと上に書いてもらえると見やすいかもです。この章は複数の表が並ぶため、最初「感情システム」が何を指しているのかわかりませんでした。。
システム-ラウンド
戦闘などの順番に行動する事象を扱うために「ラウンド」という仕組みが用意されています。ラウンドでは行動優先度を表す「イニシアチブ値」の順に行動します。戦闘時ならスピードを参照します。しかし他の状況なら別の値を参照することになります(例えば、ステージ上では魅力順に動くかもしれません)。これにより戦闘以外でも幅広い用途で臨場感ある場面を演出できます。
勿論、戦闘に必要な「回避」「防御」といったコマンドをしっかりと定義されています。その判定も「成功数を比較する」ことで行うため、何をすればいいのか、どのダイスを振ればいいのかが非常にわかりやすかったです。
必要なところをおさえつつ非常に拡張性のあるシステムだと思います。自分でシナリオを組むならぜひ戦闘以外のより特殊な状況で使ってみたいと思えました。
オンライン
当システムはすべてオンラインで完結しています。私もオンラインルルブ+オンラインキャラシート+CCFOLIA+Discordで行いました。
オンラインルルブに関しては大満足。無料であるため始めやすく、なにより情報の参照がしやすいのが助かります。TRPGのルルブにありがちな「どこに必要な情報があるかわからない」ことも殆どありませんでした。GMのためにしっかり読む必要がありましたが、それでも把握するのに一時間もかかりませんでした。気になった点はこれまで述べた通り多少ありましたが、それ以上によくできていて問題なくセッションを行うことができました。
キャラシートも表示されている通りに入力すればよく、スムーズに完成できました。プレイヤールルブを参照するまでもなく、キャラシート画面だけで十分なほどわかりやすいデザインでした。CCFOLIAのチャットパレット用の出力もワンクリックでできるため、面倒な作業は全くと言っていいほどありませんでした。強いてほしい機能を挙げるなら、画像のトリミングがしたかったです。
総括
遊びやすく、それでいて面白く深いシステムだと感じました。
とにかくわかりやすく、特にPLとして遊ぶだけならかなり容易にゲームを遊ぶことができるでしょう。DLをするにしても分厚いルールブックを読み込む手間がなく、他のシステムほどの難易度はありません。オンラインにも対応しており昨今の情勢で遊びやすいのもポイントです。
勿論、これから流行るには界隈が盛り上がってより多くの面白いシナリオが供給されることが必要でしょうが、そのあたりの権利は二次創作者にやさしいみたいですね。ぜひこれからも盛り上がっていただけると1ユーザーとして嬉しい限りです。
CCFOLIA
今回初めて使ったのでこちらにも感想を。
これまでオフかdiscordのセッションがメインだったのでこうしたツールを使った経験自体がほとんどありませんでした。いざ使ってみるとデータを一括で管理できるのはかなり便利。特にDL視点だとHPなどの変数管理とキャラシへのアクセスが容易なのが非常にありがたいです。PL側もチャットパレットを用いることで容易に判定ができて進行がスムーズに進みました。
今回は初めてだったのですべての機能を使いこなすことはありませんでしたが、配信などに役立ちそうな数々のツールがあるようです。いろいろなことができそうなツールなので、チュートリアルがあれば(そしてルルブの公式サイトから飛べれば)便利だなとは思います。
ただ残念ながら画像回りは不満が多いです。マスでサイズ管理してるのに元画像によってサイズが違います。トリミングもさせてほしいですし、それよりもう少し直観的に操作させてほしい。なんならパネルではアス比が変わりました。さすがに意味が分からない。
シナリオ:新約・きさらぎ駅
大きなネタバレはしないように心がけますが気になる方、これからプレイ予定の方は見ないほうが無難です。
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まず全体的に満足度が高かったです。短く終わりつつも、しっかりと「エモクロアTRPG」がどんな雰囲気なのかはしっかり伝わりました。システム上の要所をすべてカバーしており、回しながらどういうときに何をすればよいのかが明確でした。
シナリオはよくも悪くも「TRPGプレイヤーが好きそうなシナリオ(偏見)」で、ロールプレイとアドリブが好きな人はすごく楽しめる印象を受けました。とはいえ今回はDL,PLともにそこまでロールプレイは得意なほうではありませんでしたが、それでもシステムの雰囲気が十分に伝わりましたし、楽しめました。
DL視点でいうとシナリオが読みやすく、必要な情報の参照をわかりやすいため、短い時間で読むことができました。回す上では中盤まではそれほど苦労せず回すことができましたが、ラストシーンは明確な正解ルートがないため、やや判断に困りました。回すには多少のアドリブが必要でこれが初GMだった場合上手く回せる自信はあまりないですね。
また、初セッションから独自システムを用いるのはちょっと大変でした。最初のセッションということでルール確認と判定にリソースを割きたく、追加のギミックまで十分に遊びつくせたかといわれると微妙。まだ他のシナリオを読んでいないためわかりませんが、もしこれ以降のシナリオも完成度が高かったら、以降のイントロダクションではそちらのシナリオを優先しそうです。
とはいえセッション全体としては成功だったので、面白いシナリオをありがとうという気持ちのほうが強いです。残りのシナリオも公開を楽しみにしています。
(ところでエモクロアTRPGのロゴって自由に使っていいんですか?)