人生を変えた一杯のジントニック(前編)
初めまして。うりぼうと申します。
Xにてコミュニケーションスキルや会話術に関する発信をしています。
記念すべきnoteでの初投稿は自己紹介!!
…ではなく
僕の人生を変えるきっかけとなった、ある女性との出会いについて書きます。
彼女と出会わなければ僕はきっと、ただなんとなく日々を消費するだけのつまらない人間になっていた。
薄っぺらい人間性、軽い言葉、誰かのためにと言いつつ結局は自分のことばかり。
会話術に関する発信なんてできなかったと思います。
そんな僕が変わることができた話。
長くなりますが、よければ最後までご覧ください。
高校を卒業したての18歳の春。
洋服の専門学校に通う事になり、都内で一人暮らしを始めた。
慣れない土地での生活。引っ越ししたてで収入はなかった。
貯金が心許なくなってきたので、少しでも時給の良いアルバイト先を探していた。
そんな時、求人情報誌で「高時給、未経験者歓迎、楽しく話しながら稼げる(だいたいこんな感じ)」という求人を見つける。
「なんか簡単そうだし受けてみようか」
そう思い、担当者に電話をした。
履歴書の提出はなく、面接のみで合否が決まる。
今回募集しているのは飲食店スタッフとのこと。
面接当日、初めて足を踏み入れた夜の繁華街。
面接場所は小さなビルの地下にあるお店。
地図を頼りに進む。「あれ、ここって…」
ナイトクラブのようなギラギラした店だった。
恐る恐るドアを開け「すみません、18時からの面接で来ました」と声を上げると、「はいはい、奥どうぞー」と奥から男性の声が聞こえてきた。
バックルームから出てきたのは、某ダンスボーカルユニットのリーダーの様な雰囲気。黒髪で長髪、浅黒い肌で185cmくらいの男性だった。
「〇〇くんだよね。よろしく」
「何歳だっけ?」
「あーそっかOKOK」
「しゃべるの好き?」
「接客の経験ある?」
時折業務に関係ないような質問も混じっていたが、一通り質問に答えると
「OK,ありがとう。来週から来てほしいんだけどどう?」
「時給は1,400円で、歩合も出すよ」
業務内容の説明もなく、一方的に条件を提示された。
でも当時時給1,400円の求人なんてほとんどなくて(都内でも1,100円くらいが平均だった)
「働かせてください」と即答してしまった。
実態はサパークラブだった。
お店も面接した場所じゃなくて別のビルにある系列店。
お客様は女性が8割で、アフターで利用する方も多かった。
僕はバーテンダーとして働くことに。
カウンター越しにお酒を提供し、接客をする。
ホストではないのでお客様の隣に座ったりはしない。
だがお店のコンセプトは限りなくホストに近かった。
店にはパフォーマンスを行う方もいたが、カウンターは基本的にはラウンジのような雰囲気。複数名で接客を行う風習はなく、指名制度もあった。
「お客様を姫様のように接しなさい」と叩き込まれた。
お酒も知らない未成年の若造に夜職のハードルはとても高かった。
従業員同士の喧嘩やお客様トラブルも珍しくない。
癖のあるお客様や、意地悪な先輩による嫌がらせなんかもありメンタルは疲弊していった。
でも生活のために辞められなかった。
そこで2か月ほど働いた頃、出会いが訪れる。
ふらっと入店してきた20代後半くらいの女性。
「いらっしゃいませ」
アイコンタクトをすると
「ジントニックもらえる?」と一言。
さっぱりしていて、落ち着いた雰囲気のある女性だった。
暗めの茶髪のロングヘア。身長は155㎝ほどで、可愛いというより美人顔。
うちのお客様には珍しいタイプだった。
ジントニックを提供し、接客につく
「あなたいくつ?」
お店からは20歳と答えろと言われていた。
「20です」
「ふーん。本当はいくつ?」と悪戯な表情で聞かれた。
最初のイメージとは違って、くしゃっと笑う笑顔が印象的だった。
近くに誰もいなかったので「18歳です」とひっそり答える。
「やっぱりね。明らかに若いじゃん。なんでこんなところで働いてるの?」
「えっと…条件が良いので」苦笑しながら小声で答える。
「時給はぶっちゃけいくらなの?」
「1,400円です」
「たかっ!そうなんだ。お金そんな困ってるの?」
「そういうわけではないんですけど…」
少し考える素振りを見せた後、彼女がこう告げる。
「時給1,200円でうちのバーに来ない?女の子しかいなくて、ちょうど男の子のバーテンダーが欲しいのよ」
「えっ急ですね」
「だって微妙じゃないこの店」
「後ろで腕組んでる人いるし、顔つきも怖いし、てかかっこよくないし(笑)」
「雰囲気は楽しいしごはんも美味しいけど、お客さんつれてきたいとは思わないな」
「お兄さんだけ浮いてるよ。それにジントニック、とても美味しかった。これってグラスのふちにライムつけてるよね?」
「ありがとうございます。最初にライムの風味を感じて欲しくて、絞ったライムをグラスに擦りつけています」
「この店3回目だけど今までで一番美味しいよ。それにお兄さんはカクテルを作ってるときも顔を上げて私の事見てくれるでしょ」
初めてみるお客様だったので、次回は指名してもらえるように普段より丁寧に提供した。
また照明に照らされる彼女の横顔がとても綺麗で、気になってチラチラとみてしまったのもある。
「才能あるよ絶対に。普通のバーでもっと腕を磨いてみない?興味あればだけど」
自分のちょっとした工夫に気付いて褒めてくれる人はいなかった。
指名を受けたら他従業員から悪態をつかれるだけ。
ギスギスしたお店はとても居心地が悪かった。
正直すぐにでも出ていきたかったが、さすがに急に辞めるわけにはいかない。
揺らぐ気持ちを落ち着かせようと、あえて淡白な返事をする。
「そうですね、考えてみます」
「今日上がったら、何時でもいいからここに電話頂戴。お店見て考えて欲しい」と名刺を渡された。
その日は23時に退勤したので、早速電話をしてみた。
「さきほどお店でお話させていただいた、うりぼうと申しますが…」
「あーうりぼうさんね!本当にすぐに電話くれたんだ。うれしい!」
「今ドンキの近くにいるからさ、そこで待ち合せましょう!店まで案内しますね」
お待たせするのも悪いと思い、急ぎ足で向かう。
「すみません、お待たせしました」
「いえいえ、電話ありがとう。なんかおしゃれだね(笑)」
「ありがとうございます。こうみえて専門学生なんです。洋服の」
「いや、どうみても学生だもんね」
「あっすみません。。」
「いじわる言っちゃったね。ごめんね(笑) お店まで案内するね」
お店の外での彼女はとても気さくでよく笑う方だった。
案内されたお店は小さなshot Barだった。
なかなか目立たない場所にあり、今まで近くを通ったことがあったにも関わらずお店の存在に気付けなかった。
彼女がドアを開けて、僕をボックス席に案内する。
「ちょっと待っててね。着替えてくる」
店内にはお客様は誰もおらず、カウンターには20代前半の女性が一人立っていて、軽く会釈をした。
数分後、バーテンダーらしいシックな制服に身を包んだ彼女が戻ってきた。
髪もまとめており、最初の印象よりさらに大人びた雰囲気だった。
「すみません、お待たせしました」
「改めまして、A子と言います。このお店のオーナーをしています」
「A子さん、よろしくお願いします。うりぼうと申します」
「急に誘ってごめんね、びっくりしたよね。なんかナンパみたい(笑)」
「確かにびっくりしました。でも嬉しかったんです。ジントニック」
「あれ本当に美味しかったのよ。お店の人に教わったの?」
「いえ、僕は常連さんもいなくてお客様を呼ぶ力がなかったんです。なので誰よりも美味しいお酒を提供できれば、と思ってネットで調べて試したところ、アフターでいらした方に好評だったので。他の方とは作り方が違うんです」
「なるほどねー。他にも結構作れるの?」
「いえ、実はシェイカーは振ったことがないんです。ステアしかまだ許可出てなくて」
「わかりました。(この)お店、どう?」
女性のみと聞いていたので、ガールズバーのようなイメージをしていたが、実際はかなりシックで落ち着いた雰囲気のお店だった。
壁面にずらっと並んだウイスキーに圧倒された記憶がある。
「とてもかっこいいですね。あのお店と全然違う…」
「それはそうだよ(笑)あそこはサパーでしょ。ここはちゃんとしたバーだから。ね、B美ちゃん!」
B美と呼ばれた女性は微笑みながら頷く。
「うち女の子4人で回しているんだけど、その中の一人が今月辞めちゃうんだ。だからちょうど従業員を探してるところだったの」
「そんな時に子犬みたいな可愛い男の子見つけて、お酒も出せるっていうんだから、ここだ!って(笑)」
「時給はあそこほど良くないけど、お酒の事もっとしっかり教えてあげる。シフトも週2からで大丈夫。もしよかったら一緒に働いてくれないかな」
この時点で迷いなんてなかった。
(まだお店も辞めていないのに)
「わかりました。僕で良ければ、ここで働かせてください」と答えた。
「よかったーー!ありがとうございます。私が31歳で最年長なのね。他の子たちはうりぼうくんとほぼ同年代だから仲良くできると思うよ」
A子が31歳(自分より一回り以上年上)だということに衝撃を受けた。
(女性は本当に見た目じゃわからないものですね)
その日は挨拶と、軽く業務内容の説明を受けた。
お店を後にしようとすると
「待って!電車あるの?」と聞かれてハッとする
終電は0時20分頃。時すでに遅し。
「最寄り駅はどこ?」
「〇〇です」
「あーちょっと距離あるね。待ってて」
バックヤードに向かい、程なくして戻ってきた。
「今日時間取らせてもらったから。はいこれ、タクシー代」
渡された封筒には2万円が入っていた。
「えっ…こんな大金もらえませんよ!!」
「いいのいいの。余ったら好きに使って。私が無理言って連れてきたんだから」
「でも…」
「若者!遠慮なんかするんじゃない。こういう時は『ありがとうございます』でいいんだよ!」
「わかりました…ありがとうございます」
「よろしい!落ち着いたころまた連絡してね」
靖国通りでタクシーを捕まえて無事に帰宅。
一日がとても長く感じた。
翌日、勤めていたお店に電話したら、とりあえずシフトに入っている分だけ出てくれればいいとのことだった。
そこから2週間後、これまでの御礼をして退職した。
そうしてサパークラブでのアルバイト生活は終わりを迎え、A子さんのお店でバーテンダーとして働く日々がスタートした。
後編に続く。。。。
後編は明日更新予定です。
前編ではA子さんとの出会いまで紹介させていただきました。
後編ではA子さんのお店での出来事など僕の人生を変えるきっかけについてより深掘りしていきます。
良ければ後編も読んでいただけますと幸いです。
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