人生を変えた一杯のジントニック(後編)
こんばんは。うりぼうです。
昨日の記事はもうご覧いただけましたか?
僕の人生を変えるきっかけとなったA子との出会いの話。
まだ見ていない方はぜひ、ひとつ前の記事をご覧ください。
さて、本日はその続きを書きます。
A子のお店でバーテンダーとして働くことになってからのお話。
A子のお店での初勤務
早番で19時~23時までの4時間
初日は開店業務、洗い物と接客のみでお酒を提供するのはA子が担当した。
「まずは、うちの客層と雰囲気を感じてほしい。お酒は私が作るから、うりぼうはお客様のお話を愛想よく聞くこと。いい?」
「わかりました。よろしくお願いします」
20時を回った頃、一人の男性客が来店した。
「A子ちゃんお疲れ~!」
大柄な男性客はどうやらA子と親しいようだ。
「あら、Yさん!お久しぶり」
「ビールください!A子ちゃんも一緒に、、、あれ?」
僕の存在に気付いたようで
「この子は?新しい子?」
「そうなんです、今日が初日で。うりぼうといって、彼はまだ未成年なんですよ」
「あーそうなの!よろしくね、うりぼうくん」
「はい、よろしくお願いします」
「うりぼうくんはお酒は、、、やめとくか(笑)ジンジャーエールにしとこう」
「いいんですか?初対面なのに…」
「いいんだよ、そんなこと。A子ちゃんジンジャーエール出してあげてよ」
いただいたジンジャーエールを飲みながらA子とYと1時間近く話した。
「そろそろ帰るわ。またくるよ!うりぼうもまたな!」
ご機嫌な様子でYは店を後にした。
ここで気付いたことがある。
A子はずっとYに身体を向けて笑顔で接客をしていた。
Yがギャグを言えば、A子は口元を隠すも大きな声で良く笑う。
会話はすごく盛り上がっているが、A子はほとんど話していないのだ。
「Yさん、ずっと喋ってましたね。お話しするのが好きなんでしょうか」
僕が彼女に尋ねる。
「んーそうだね。うりぼうはさ、どんな人と話すのが楽しい?」
「えっそうですね、自分の好きな人と話しているときですかね(当時の自分が馬鹿すぎて恥ずかしいです)」
「あはは、それはそうだね。私はね、『自分の話を楽しそうに聞いてくれる人』だと思うの」
「うりぼうもそうなんじゃない?」
「確かに、、A子さんすごく笑顔でお話聞いてましたよね。しかも相手がツッコんでほしいだろうなってところで、タイミングよく『それで?どうなったの』って聞いてました」
「おーよく聞いてたね。そう。バーテンダーってね、ただお酒を出すだけじゃないの。だって家で一人で飲んだほうが安いんだから」
「お酒は手段・道具に過ぎない。わざわざお店に来ていただけるということに感謝の気持ちを持って、そのお客様に気持ちよく過ごしていただく”空間”を提供するの」
この言葉の意味を全部は理解できなかったが、『目の前にいるお客様に感謝の気持ちを込めて接客を行う』という意識付けはこの時にできたと思う。
それから1週間が過ぎ、業務にも慣れてきた頃
閉店業務にかかる前に彼女が僕に告げる。
「そろそろカクテルも出してみようか」
よし来た!!と思った。
期待に応えたくて実はずっと動画やレシピを見て勉強していたのだ。
いいところを見せて褒めてもらおうと張り切っていた。
「ジントニックを作ってみて」
言われたようにジントニックを作り、A子に渡す。
「うん、普通だね」
「えっ」
「うりぼうさ、なんか勘違いしていない?私はそんなにカッコつけてお酒を出せなんて言っていないんだけど。作っているときも顔怖いし」
「…すみません。お味はどうでしょうか。前に美味しいって言ってもらった時と全く同じレシピですよ」
「あのね、確かにあの時のジントニックは美味しかった。これは本当だよ。でもそれは味が素晴らしかったんじゃない。あなたの私に対するおもてなしの心がドリンクにも態度にも表れていた。だから私はあなたに目を付けた。あの時今みたいな感じでジントニックを出されていたら、もう会うことはなかったでしょうね」
初めて彼女からこのような言葉をもらい、思わず絶句した。
正直にいうと僕は天狗になっていた。
ここで過去の自分を振り返る。
小学生の頃から、クラスの中心にいて友達も大勢いた。
リーダーシップがある方だったので輪の中心にいる自覚もあった。
中学生の頃には、同級生の中で誰よりも早く彼女ができた。
自分という存在が周囲より優れているのではないかと錯覚したこともある。
周りからチヤホヤされて、そのころには完全に天狗になっていた。
だが高校生になって周囲の対応が一変する。
勉強が得意だったので、地元の友達がいる学校ではなく少し離れた進学校に進んだ。
知り合いがいなくても、誰とでもすぐに打ち解けられると思っていたし、自分なら今まで通りうまくやっていけると思っていた。
第一印象は割と良かったと思う。
ところが半年くらい経ったころ「なんか鼻につく」「ナルシスト」「優しいフリした自己中」なんて陰口が言われるようになった。
偶然その事実を知って僕は周りに心を開かなくなり、学校を休むことが増えた。
家でネットをしたり、学校に行くフリをしてウィンドウショッピングをすることもあった。
いつの間にか学力もどんどん落ちて、高2の秋には学年順位が下から数えたほうが早いまでになっていた。
そんな自分から目を背けるように趣味に没頭し、洋服に夢中になった。
自分の生きる道はここだ。そう言い聞かせていたのだ。
結果として学年唯一、大学進学をしないで専門学校に進路を決めた。
そんな自信を失っていた頃、自分を認めてくれる存在と出会って僕はまた調子に乗ってしまったのだ。
『この人は僕を好きでいてくれる』なんて甘えがでてしまった。
その気持ちがドリンクを作る態度にも表れたのだ。
「ドリンクは目の前のお客様の事を想って作るの。自分の為じゃない。最初に私に出してくれた時は『喜んでもらおう』という想いがあったはずだよ。今は私に対する甘えみたいなのも感じる。どうすれば喜んでもらえるか、よく考えて頂戴ね」
その言葉が深く刺さった。
これまでの人生、どれだけ取り繕っても結局自分の為だった。
周りの言っていることは正しかった。
「あなたは本当は優しい子。でも人から嫌われるのをとても怖がっているように見える。だから周囲の機嫌をとろうとするんだよね」
「そうですね、嫌われたくはない、です」
「大丈夫。嫌われたっていいんだよ(笑)あなた本来の姿を見せてよ。あなたが私を裏切らないうちは、私はあなたを絶対に裏切らない。離れないから」
これまでの事を話したことはない。彼女は僕の過去を知らないにも関わらず見透かされているようだった。
ありがとうございます、と小さく返事をしながら、思わず涙が流れた。
5分ぐらいだろうか、時折泣いている僕の背中をポンポンと叩いてくれた。
「落ち着いた?」
「はい、すみません、ありがとうございます。あのもう少しお時間いいですか?」
「大丈夫だけどどうした?」
「ジントニックを作ります」
彼女は一瞬驚いた後、微笑みながら頷いてカウンターに座った。
自分の気持ちを受け止めて、しっかり向き合ってくれた彼女への想いを込めてもう一度ジントニックを作る。
「お待たせいたしました、どうぞ」
ふふっと笑った後、彼女がグラスに口を付ける。
どうかな、、、とドキドキしながらじっと見つめていた。
「とても美味しいよ。ありがとう」
彼女のくしゃっと笑った顔が眩しくて、気持ちが伝わった嬉しさもあって、なぜかまた涙目になってしまった。
「こらこら泣かないの。あなた本当は泣き虫?」
「いや、人前では泣かないです。だけど、、」
「そっか。でも泣いたっていいんじゃない?感情があふれて涙になるんだから、泣くほど動かされた感情を自ら止めることはないよ。私はそういう涙を流せる人が好き」
「ありがとうございます」
こうして、ジントニックのテストに無事に合格し、晴れて正式にバーテンダーとして働くことになった。
就職をする20歳まで、およそ1年半もの間A子の店に務めた。
それまでに様々なエピソードがあり
一つの記事ではどれも書ききれないほど濃密だった。
近所のお店同士での仮装ボウリング大会。
お店の周年記念イベント。
従業員全員で行った軽井沢旅行。
誕生日イベント。
記事を書く中で走馬灯のようによみがえってくる、それらの思い出はどれもかけがえのない物だった。
お酒の事だけじゃない、彼女は人生における様々なことを僕に教えてくれた。
礼儀作法、話し方、人とのかかわり方、人間関係の秘訣、時には恋愛相談にも乗ってくれた。
「手のかかる弟のように思っている」と言って、僕の事を心から信じて、いつでも手を差し伸べてくれた。
時には酔っぱらった彼女を家まで担いで運んだり、家の掃除を手伝ったり、ごはんを作ったり、恋人と喧嘩別れをした彼女を慰めるためにサプライズでお店を予約してプレゼントを贈ったりもした。
僕も実の姉のように慕っていた。
学校を卒業し就職をしてからも、時折お店に顔を出した。
たまにお店を手伝うこともあった。
彼女は現在結婚し、子供も産まれてお店を畳んだ。
もうあの店はない。
でも、あのお店での経験はかけがえのない宝物だった。
今、自分はコミュニケーションスキルや会話術について発信をしている。
こんな僕の姿をみたら彼女はなんて言うんだろう。
「あんたもえらくなったねー」なんて言われるのだろう。
『コミュニケーションスキルを学ぼう』
『会話術を身に付けよう』『心理学を学ぼう』
そのために本を読んだり、セミナーに参加する。
これは良いことです。
でも一番重要なのはスキルを磨くことではなくて、相手と心から向き合うことです。
スキルは道具にすぎません。
テクニックだけでは相手の心を動かせません。
人から好かれる方は、人を愛し尊敬できる方です。
自分の為じゃなく、相手の為に行動できること。
常に”与える側”であること。
人間関係に悩んでいる方
もっと会話力を身に付けたいと思っている方
人との出会いを増やしたい、チャンスを掴みたいと思う方
そんな方々はぜひ私のXやnoteでの発信をご覧ください。
個別メッセージももちろん受け付けております。
僕が彼女から人間関係について教えてもらったように
僕も皆様のお役に立てるように、全力で対応させていただきます。
長くなりましたが、最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
拙い文章だったかもしれませんが、僕の想いが届くと嬉しいです。
今後noteでは、このようなエピソードについて記事を書いたり
Xでの発信内容をまとめたものを記事として投稿する予定です。
この記事で少しでも「良いな」と思っていただけたら
フォローしていただけますと、とても嬉しいです。
きっかけは一杯のジントニック。
そこから僕の人生は大きく変わった。
皆様にもそういった転機はありますか?
よければコメントや個別メッセージでも聞かせてくださいね。
それでは皆様
次回の投稿もお楽しみに♪
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