『私の存在』3話
前回までのあらすじ
突然やってきた男 畑中 渉(はたなか わたる)に襲われた私 海谷 薫(うみや かおる)は、見知らぬ場所で目を覚ます。どうにか逃げ出せないかと少し話してみた私だったが⋯
「もし私が逃げたらどうしますか?」
そんなことは出来ないが、少し余裕ぶって出来そうな雰囲気で聞いてみた。すると畑中はとんでもないことを言ってのけた。
「その場合は、貴方の家族の誰かに身代わりとなってもらいます。その場合、実験という貴方より酷い扱いが待っていますが。」
そんなことを言われた後に、逃げようとは思えない。私にとって、家族はとても大切な存在なのだ。それこそ命より大切な⋯。
そして冒頭に戻る。
私が目を瞑った瞬間、胸に強烈な痛みを感じ、声にならない声が出た。
銃で撃たれたと理解し、なぜ私がこんな目にあっているのだと涙が出た。
意識が遠のいていくなか、「ああ、人間は簡単に死んでしまうんだな」と思った。
今までの慌ただしいながらも穏やかな日常が脳内を駆け巡っていく。
これが走馬灯というものかと悠長なことを考えながら、楽しかったことや悲しかったことを思い出していた。
しかし、途中で意識は途絶えたー
【続く⋯】