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「笑う犬」嬉野さんの言葉の切れはし#358

あぁ、犬と居たい。
ーー嬉野雅道

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昨日、知り合いのうちで飼われてる犬の写真を見せてもらった。
柴犬だ。
「大きくなると思ってキングサイズの犬小屋用意したんだけど、大きくならなかったのよ」
確かに、写真のそいつには、えらく立派な犬小屋があてがわれていた。
「でも結局、小屋の中が広すぎて落ち着かないらしくてね、いつも小屋の床下の隙間に潜りこんでいるのよ」
確かに、写真のそいつは、せっかくの広い空間を無駄に背負うようにして、わざわざ床下にもぐりこみ、その狭い隙間から顔だけ出してカメラ目線で笑っているのだった。
バカだと思った。
犬ってなぁ、とんだ貧乏性だと思った。
飼い主は、高い金出して買ってきたのにと、歯噛みしていることだろう。
それでも、その辺の価値が分からない犬は、床下の隙間で落ち着いているのだ。
「バカ犬!」
飼い主は、そう思っているかもしれない。
でも、やつは笑っているのだ。
床下の隙間で幸せそうに笑っているのだ。
きっとやつは満足なのだろう。
自分の身の丈にあった居場所が見つかって。
あの笑いは、そういう笑いなのだろうと思った。
あぁ、犬と居たい。
ーー嬉野雅道(水曜どうでしょうディレクター)