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「習字はデザイン」嬉野さんの言葉の切れはし#359

桜の花や菜の花の咲く土手の道を姉と歩いてね、通ったことと、教室の中に漂っていた墨の匂いなんかを妙に覚えていますね。お習字は楽しい。
ーー嬉野雅道

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年始となりますと、自宅で書初めをすることがあります。
もちろん、筆ペンでですよ奥さん。
あたりまえです、書道の技術があるわけじゃない。
年末に文具屋で買っておくんですわ。
ただね、
「ばか、やろう」とかね、
「しった、ことか」とかね、
こう荒々しく、かすれたような筆遣いでね、ぐっと「とめ」たりね、わっと「はらい」したりね、びやっと「はね」るとかさ、そういうことを、こう気きにしながら書いてると、何か楽しいんですね。
お習字は楽しい。
いっそ書道でも習おうかと思いましたよ。
あれはデザインみたいなものですね。
なんかへたくそでも全体のバランスとかを気にして書いてると、
書いてるうちにそれなりに見えるようになるから、面白くなっちゃって年明けからずいぶん筆ペンを書きつぶしましたね。
小学校の1年生の時にね、4歳上の姉貴と一緒にね、習字道具持ってね、そう言えばお習字に通ったことがありましたね。
母親が行かしたんですね。
母親の女学校の時の同級のおばさんが書道塾をやってたんですね。きっと同窓会の時とかに久しぶりに会って、
「あら、そうなの。書道塾やってんの、通わそうかしら」
なーんつって、思いついて、その気になったんだと思いますよ。
半年くらいで挫折しましたね。
それでもね、桜の花や菜の花の咲く土手の道を姉と歩いてね、
通ったことと、
教室の中に漂っていた墨の匂いなんかを妙に覚えていますね。
しとしと降る春雨の中、傘を差してね、歩きながら、立ちのぼる土の匂いを嗅いだり、いろいろのことを思い出しますが、どうも思い出に残る季節が夏まで行ってないところをみると、半年までは続かなかったかな。真相としては。
三月と、もたんかったなこれは。
とにかく、筆でうまい字が書けると気分が好くなるような気がするから、今年は筆使いを習おうかと思っております。
ーー嬉野雅道(水曜どうでしょうディレクター)