「夫婦のケンカ」嬉野さんの言葉の切れはし#353
立派な思想信条でもって、ぶつかりあって離婚する夫婦はいないんじゃないのか。
だって、そんな大きな問題を抱えてる男女なら、初めから結婚したりするはずがない。
ーー嬉野雅道
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夫婦になりますと、どなたも御夫婦でケンカをなさいますね。
それも案外、大したことが原因ではなかったりする。
「返事をしない」とか、「した」だとか。
「スプーンが歯に当たった音がした」とか、「しない」とか。
「洗剤を使う量が多い」とか、「多くない」とか。
やっぱり好き合って一緒になった夫婦といいましても、二人とも好い年をした大人ですから、二十年以上の時間をかけて、それぞれの家庭のそれぞれの流儀を自然と身につけて成長した他人なわけです。
それが、いまや、ひとつ屋根の下で共同生活を始めるわけですから、気がついてみるとおたがい、いろんなことが気に掛かる。
でもって、取るに足らないようなことを、意外と人という者は深刻に気にするものだと言う事実に、あらためて直面する。それが結婚の現実ですな。
つまり、人には、
とくに意味もなく許せることと、許せないことがあったりするということです。
「好いじゃないか、そんなのどっちでも」
というよなことが、当人にとっては案外と深刻で、譲れなかったりする。
だからきっと、その一見どうでもいいようなぶつかり合いが、積もり積もって離婚の原因になっていくのかもしれないと、私は思ったりするわけです。
立派な思想信条でもって、ぶつかりあって離婚する夫婦はいないんじゃないのか。
だって、そんな大きな問題を抱えてる男女なら、初めから結婚したりするはずがない。
ーー嬉野雅道(水曜どうでしょうディレクター)