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「勤勉にならないように」嬉野さんの言葉の切れはし#324

ややもすれば勤勉になりがちなところを、折に触れて、勤勉にならないように、勤勉にならないようにと、方々で人が念押しをしながら長いこと頑張って監視して、呑気な世間を守って来たというような感じが、どーもするのでございますよ。
ーー嬉野雅道

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30年ほど前にね、95歳で往生いたしましたうちのバァサンもね、昔は盆暮れ正月に働いてる人がいると、近所の人から、「あのうちは正月までも働いてぇ」みたいな嫌味を言われたものだと申しておったのを思い出しますね。
昔の日本人のみなさんは、どうやらそんなに勤勉には働いておられなかった。
といいますかね、ややもすれば勤勉になりがちなところを、折に触れて、勤勉にならないように、勤勉にならないようにと、方々で人が念押しをしながら長いこと頑張って監視して、呑気な世間を守って来たというような感じが、どーもするのでございますよ。
その念押しをね、するのをすっかり忘れちゃった時代が、きっとどっかで来てたんでしょうね。
そん時ゃ全員、必死こいて働かないとやってけないほどのね、時代を迎えちゃっててね、日本人全員、頑張らざるを得なかった。
そっから呑気のタガがどんどん外れてね、ずんずん勤勉になっちゃった。そうして気が付いたら走り続けることになっちゃってた。
それでまぁ現在に至る、ということなんでしょうね。
でも、一度走ってみたらね、走れば走るほど、暮らしが贅沢になるもんだからね、どっかでやっぱり「走るのは好いことジャン」みたいな刷り込みがね、出来あがって、「こら呑気はだめだそ、貧乏になるぞ」ということでね、「貧乏になるくらいなら呑気はいらない」ということになってね、気が付いたら呑気にしてると生きていけない社会になっちゃってたというね、ことでしょうね。
もったいないことをしました。日本人。
まぁ、そろそろ、ぼちぼち、みんなでね、呑気な社会に戻してみたほうが好いと思いますがねぇ。
なかなか難しい。
ある朝、起きてみたら呑気な社会に戻ってた、みたいなことは、ないもんでしょうかねぇ。棚からぼた餅みたいなね。
呑気すぎますね。
はいはい、すんません。
ということで、また明日。
解散!
ーー嬉野雅道(水曜どうでしょうディレクター)